近年、深刻化する「人手不足」と「人件費の高騰」。
実は、こうした社会的な変化は、マンションの管理現場にも大きな影響を及ぼし始めています。
管理員や清掃員といった日常を支える人材、建物全体を見守るフロント担当者(物件担当者)など――。これまで当たり前に存在していた人材が、「当たり前に確保できない」時代が訪れようとしています。
今回は、マンション管理の現場で今、何が起きているのか。
そして、管理組合としてどのような備えができるのかを考えていきます。
管理業務には多くの人材が関わっている
マンション管理というと、管理会社や理事会の存在が真っ先に思い浮かびますが、実際には以下のようにさまざまな人たちの協力で成り立っています。
- 管理員(日常の見回りや受付など)
- 清掃員(共用部の清掃・衛生維持)
- 点検業者(法令に基づく設備点検)
- フロント担当者(物件担当者)(理事会との連絡調整、全体管理のサポート)
💡 補足
特に「フロント担当者」は、管理組合との橋渡し役として重要なポジション。トラブル対応や工事の段取り、理事会支援など、非常に多岐にわたる業務を担っています。
今、深刻化する「フロント人材不足」の現実
現在、多くの管理会社が「フロント担当者の人材確保」に苦慮しています。
長時間労働・複雑な調整業務・クレーム対応などの負荷が大きく、業界内でも離職率が高い職種です。
💬 現場の声
👨💼 管理会社スタッフ:「採用しても定着しない。1人で13棟以上を担当しているケースもあります……」
この結果、以下のような状況が発生しています。
- 担当変更が頻繁に起きる
- 理事会対応が遅れる
- 理解不足によるトラブルリスクの増加
管理員・清掃員も「人手不足」+「人件費高騰」
現場の要ともいえる管理員や清掃員も、高齢化や人材流出の波に直面しています。
- 最低賃金の上昇
- 他業種との人材競争(介護・物流など)
- 若年層の応募が少ない
結果として、同じ内容の業務を依頼するにも、数年前よりコストが大きく上昇しています。
✅ ポイント
小規模マンションでは、限られた管理費の中でやりくりする必要があり、これらの影響がよりダイレクトに現れます。
管理組合にどんな影響があるのか?
人手不足と人件費の高騰が、管理組合に与える影響は多岐にわたります。
主な影響
- 管理費の見直しや改定の検討が必要になる
- フロント担当の質や対応スピードにばらつきが出る
- 管理員・清掃業務の頻度や時間が短縮されることも
- 点検・修繕の調整遅れ、理事会資料の準備遅延など
⚠️ 注意点
見えにくい変化ほど、マンションの資産価値や住環境にじわじわと影響を及ぼします。
管理組合として今できる備え
こうした状況の中、管理組合としてどのような視点を持つべきか。
以下のような意識・行動が、今後の安定的な管理体制につながります。
① 適正なコスト感覚を持つ
過度なコストカットは、サービスの質を下げ、人材離れを招く要因になります。
✅ 選ぶ基準は「安さ」より「持続可能なサービス」
→ コストカットは必要ですが、価格だけにとらわれるとサービスの質が下がり、人材が離れてしまう可能性もあります。長期的な安心を得るためには“適正価格での継続”を意識することが大切です。
② 理事会と管理会社で情報を共有する
管理会社にすべてを任せきりにするのではなく、現状を正しく把握しながら、「どこまで任せるか」「どこは理事会として関与するか」を整理し、協力体制で管理を進めていくことが大切です。
💬 理事長の声
👤 理事長:「管理会社と一緒に考えるようになってから、課題がスムーズに進むようになりました。」
③ 必要に応じて外部の力を活用する
理事会役員のなり手不足や業務過多に対応するため、
- 第三者管理方式の導入検討
- 理事長・役員・監事等の外部専門家への委任(外部役員制度)
なども、柔軟な選択肢として視野に入れておくことも有効です。
おわりに
人材確保や人件費の課題は、すぐに解決できるものではありません。
だからこそ、管理組合と管理会社が「現実を共有し、協力しながら運営する姿勢」がより求められています。
弊社では、小規模マンション・自主管理組合様向けに、状況に応じた柔軟な管理支援サービスをご提供しています。
「最近、管理がうまく回っていない気がする」
「担当者が何度も変わって、少し不安……」
そんなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。