自主管理と委託管理の比較シミュレーション:30戸マンションのコスト手間徹底比較

マンション管理会社からの見積書を比較する際に、特に注目すべき3つの詳細内訳を示した図。事務管理業務費、清掃業務費、建物・設備管理業務費(エレベーター、消防設備など)が挙げられ、これらを一括表示でなく、個別の項目として詳しく確認することの重要性が説かれています。この図は、読者が「一式〇〇円」といった大まかな記載に惑わされず、各業務の費用妥当性を冷静に判断するための具体的なチェックポイントを提供することで、適正な契約締結を支援します。

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マンション管理組合の役員に就任し、「管理コストを削減したいが、業務の負担も大きい…」とお悩みではありませんか。分譲マンションの管理組合向けとして、管理会社に任せる「委託管理」から、組合で直接運営する「自主管理」への変更を検討する際、多くの方が「結局、どちらが得なのか?」という疑問に突き当たります。

この記事では、宅地建物取引士の視点から、分譲マンションの「自主管理」と「委託管理」について、金銭的なコストと役員の「手間」という見えないコストの両面から徹底比較します。30戸のマンションをモデルケースとした具体的なシミュレーションを通じて、あなたのマンションにとって最適な管理方式はどちらか、判断するための明確な基準を提示します。コスト削減と運営効率化のどちらを優先すべきか、この記事を読めばきっと答えが見つかるはずです。

目次

【基本理解】自主管理と委託管理の違いとは?

分譲マンションの管理方法は、大きく「自主管理」と「委託管理」の2つに分けられます。どちらを選ぶかによって、コスト構造や役員の業務負担が大きく変わるため、まずはそれぞれの特徴を正確に理解することが重要です。

用語の整理:管理費と管理委託費の違い

比較を始める前に、混同されがちな費用について整理しておきましょう。

  • 管理費: 全ての区分所有者(住民)が、マンションの日常的な維持管理(共用部の清掃、光熱費、保険料など)のために管理組合へ支払う費用です。
  • 管理委託費: 委託管理を選んだ場合に、管理組合が業務の対価として管理会社へ支払う費用です。管理費の中から支出されます。

自主管理は、この「管理委託費」が発生しない管理方式です。

自主管理:住民が主役、コスト削減の可能性と運営の重責

自主管理とは、管理会社に頼らず、管理組合が主体となってマンションの維持管理を行う方式です。役員が中心となり、清掃や点検業者への発注、会計業務、住民対応などを直接担います。

  • メリット
    • 管理委託費がかからないため、コストを削減できる可能性がある。
    • 業者を自由に選定でき、中間マージンが発生しない。
    • 住民の管理への意識が高まり、コミュニティが活性化しやすい。
  • デメリット
    • 役員の業務負担(時間的・精神的)が非常に大きい。
    • 会計、法律、建築などの専門知識が必要になる場面が多い。
    • 業者手配やトラブル対応が後手に回り、管理品質が低下するリスクがある。

委託管理:専門家にお任せ、手間の削減と管理委託費

委託管理とは、管理組合が管理会社と管理委託契約を結び、専門的な業務を代行してもらう方式です。業務範囲は、会計や清掃・点検の手配などを行う「一部委託」から、理事会・総会運営の支援まで含む「全部委託」まで様々です。

  • メリット
    • 専門的な業務をプロに任せられるため、役員の負担が大幅に軽減される。
    • 法令改正への対応や、煩雑な会計処理を正確に行える。
    • 24時間対応のコールセンターなど、緊急時の対応力に安心感がある。
  • デメリット
    • 管理委託費が発生する。
    • 管理会社の選定や業務内容のチェックが必要。
    • 管理会社経由の工事は、紹介マージンが上乗せされ、割高になるケースがある。

【コスト比較】シミュレーションで見る費用構造の違い

「自主管理にすれば管理委託費が浮くから得」と考えるのは早計です。自主管理には、委託管理にはない「隠れたコスト」が存在します。ここでは、30戸・築15年の分譲マンションをモデルに、リアルな費用構造をシミュレーションしてみましょう。本シミュレーションは、国土交通省の調査や業界事例を参考とした推定値であり、実際の費用は物件の規模・設備・地域により変動します。詳細な内訳は管理会社からの見積もりで確認してください。

自主管理で発生する「隠れたコスト」の内訳

自主管理では管理委託費はゼロですが、以下の業務を自分たちで手配し、費用を支払う必要があります。

  • 清掃業者費: 日常清掃、定期清掃
  • 各種法定点検費: 消防設備点検、エレベーター保守点検など
  • 小修繕費: 電球交換、植栽の手入れ、軽微な補修
  • 事務管理費: 会計ソフト利用料、通信費、印刷費など
  • 役員報酬: 業務負担に対する手当(設定している場合)

特に小規模マンションの場合、個別に業者へ発注することで割高になる傾向があります。

委託管理の費用内訳と注意点

委託管理の費用は、主に「管理委託費」です。全部委託の場合、1戸あたりの月額費用の目安は、物件規模や地域により幅広く分布しており、一般的には月額15,000円〜20,000円の範囲が報告されています。詳細は貴マンションの実態に基づく複数社の相見積もりで確認してください。

注意すべきは、管理会社が手配する清掃や点検の費用です。管理会社が提携業者に発注する際、その費用に管理会社のマージンが上乗せされることがあります。これにより、組合が直接発注するより割高になるケースがあるため、見積もりの内訳をしっかり確認することが重要です。

モデルケース:30戸マンションでの費用比較シミュレーション

それでは、具体的な数字で比較してみましょう。※本シミュレーションは、業界事例などに基づくモデル例であり、実際の費用は個別物件の条件により異なります。正確な試算には、複数の管理会社からの詳細見積もりをご取得ください。

項目自主管理の場合(月額)委託管理の場合(月額)
管理委託費(事務管理業務費約40,000円、清掃業務費約60,000円、建物・設備管理業務費約50,000円の内訳例)0円約150,000円(5,000円/戸と仮定)
清掃・点検等の外注費約180,000円(個別発注で割高)(管理委託費に含まれる)
合計コスト約180,000円約150,000円
差額自主管理の方が月額約30,000円のコスト増

※上記はあくまで一例です。建物の設備や状況により費用は変動します。視覚支援ツール非対応の場合、以下のテキストリストで代替:項目「管理委託費」自主管理: 0円 / 委託管理: 約150,000円(内訳例: 事務40,000円+清掃60,000円+設備50,000円);項目「清掃・点検等の外注費」自主管理: 約180,000円 / 委託管理: 含まれる;合計自主管理: 約180,000円 / 委託管理: 約150,000円;差額: 自主管理の方が月額約30,000円のコスト増。

このシミュレーションが示すのは、衝撃的な事実です。自主管理にしても、個別発注する外注費が、委託管理費の削減額を上回り、結果的にコスト増となる可能性があるのです。これは、管理会社が多くの物件をまとめて発注することによる「規模の経済」が働くため、個別の発注単価よりも安くなることがあるからです。

【要注意】小規模マンションの自主管理は、必ずしもコスト削減につながるとは限らない。

【手間比較】見えないコスト「役員の労力」を可視化する

コスト比較と並行して考えなければならないのが、役員の「手間=時間」という見えないコストです。お金は節約できても、役員のプライベートが犠牲になっては元も子もありません。

自主管理で役員が担う具体的な業務と時間

自主管理の場合、役員は以下のような多岐にわたる業務を担うことになります。

  • 会計業務: 管理費等の徴収、支払い、月次・年次報告書の作成
  • 業者対応: 清掃・点検業者の選定、見積取得、契約、作業監督
  • 住民対応: クレーム処理、未納者への督促、問い合わせ対応
  • 理事会・総会運営: 開催通知、資料作成、議事録作成
  • 緊急時対応: 漏水、設備故障などの一次対応(24時間)

これらの業務をこなすには、月に10時間以上の時間を要することも珍しくありません。特に、夜間の緊急対応や住民間のトラブル仲介は、大きな精神的負担となります。

委託管理による「時間価値」はいくら?

委託管理は、これらの業務の大部分を代行してくれます。役員は、管理会社からの報告を受け、重要な意思決定に専念できます。この削減できる「手間」を、金銭的な価値に換算してみましょう。

(時間価値の計算例)
仮に役員の時間を時給2,000円と仮定します。この数値は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(事務職の全国平均給与を参考とした仮定値)に基づきます。ご自身の状況に応じて適宜置き換えてください。
自主管理で月10時間の業務が発生していた場合、その手間コストは
2,000円 × 10時間 = 20,000円/月
となります。これは、管理委託費と比較検討する際の重要な判断材料です。

月額15万円の管理委託費も、役員の時間的・精神的負担の軽減、専門知識の提供、緊急時対応の安心感といった価値を含んでいると考えれば、その妥当性を多角的に評価できます。

よくある質問(FAQ)

自主管理と委託管理を検討する際によく寄せられる質問にお答えします。

Q質問A
Q1自主管理にすれば、費用は必ず安くなりますか?A1: いいえ、必ずしも安くなるとは限りません。本記事のシミュレーションのように、小規模マンションでは清掃や点検の個別発注が割高になり、結果的に委託管理よりコストがかかるケースがあります。
Q220戸程度の小規模マンションですが、委託管理を受けてくれる会社はありますか?A2: はい、あります。ただし、大規模マンションに比べて利益が少ないため、積極的に営業している会社は限られます。小規模マンション専門の管理会社や、柔軟に対応してくれる地元の会社を探すのが有効です。
Q3管理方式を変更するには、どのような手続きが必要ですか?A3: 管理規約を変更する必要があるため、原則として管理組合の総会で「区分所有者及び議決権の各過半数」による決議が必要です。ただし、管理規約に別の定めがある場合はそちらが優先されます(区分所有法第39条)。確認の結果、規約に定めがない場合は、区分所有法第39条により過半数決議が適用されます。詳しくは、ご自身のマンションの管理規約を確認してください。【重要】管理方式変更時の決議要件について:区分所有法第39条は「過半数決議」を原則としますが、貴マンションの管理規約に「管理方式の変更には3分の2以上の賛成が必要」など、別段の定めがある場合はそちらが優先されます(同法第39条後段)。必ず管理規約を最初に確認し、不明な場合はマンション管理士等の専門家に相談してください。

※上記FAQはテキストリストで代替可能:Q1: 自主管理にすれば、費用は必ず安くなりますか? A1: …(上記と同様)。

【実践ガイド】管理方式の変更・選択で失敗しないための注意点

管理方式の見直しを決めたら、次は具体的なアクションです。しかし、焦りは禁物です。ここでは、失敗を避けるための実践的なポイントを解説します。

管理方式変更の第一歩:総会決議の法的根拠

管理方式の変更は、管理組合の運営における重要な決定事項です。そのため、法律に基づいた正式な手続きを踏む必要があります。

(集会の決議)
第三十九条 集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
(出典:建物の区分所有等に関する法律)

上記の通り、区分所有法では原則として総会での過半数決議が必要とされていますが、規約に別段の定めがある場合はそちらが優先されます。まずは、ご自身のマンションの管理規約で、決議要件について特別な定めがないかを確認しましょう。

相見積もり依頼の「賢い」方法とNG行動

委託管理を検討する場合、複数の管理会社から見積もりを取る「相見積もり」は必須です。しかし、やみくもに依頼するのは得策ではありません。管理会社側は、見積もり作成に現地調査(3〜4回程度)、協力会社(清掃、エレベーター、消防設備など)との調整、理事会面談を要し、多大な労力をかけます。特に小規模マンション(20〜40戸程度)では利益が薄く、過度な依頼(5社以上)は「手間がかかる組合」と敬遠され、質の高い提案を受けにくくなります。2〜3社に絞り、業務内容・実績を整理して依頼するのがおすすめです。

  • 賢い方法: 2〜3社に絞って、丁寧に見積もりを依頼する。
  • NG行動: 5社も6社も、手当たり次第に見積もりを依頼する。

管理会社側の本音:過度な見積もり依頼が敬遠される理由

管理会社が見積もりを作成するまでには、以下のようなプロセスがあり、相当な時間とコストをかけています。

  1. 現地調査: 建物の劣化状況、設備の種類・数を確認。
  2. 仕様の確認: 現在の清掃頻度や点検内容をヒアリング。
  3. 協力会社への見積依頼: 清掃会社、エレベーター会社などへ見積もりを依頼。
  4. 見積書作成: 上記をとりまとめ、組合向けの見積書を作成。
  5. 理事会でのプレゼン: 見積内容を説明。

数多くの組合へ同じ労力をかけることはできないため、管理会社も本気で検討している組合に注力したいのが本音です。

見積書は「詳細内訳」で比較する

管理会社から見積書が提出されたら、「一式 〇〇円」といった大まかな記載で比較してはいけません。必ず以下の項目が含まれているか、詳細な内訳を確認しましょう。

  • 事務管理業務費
  • 清掃業務費
  • 建物・設備管理業務費(エレベーター、消防設備など)

各項目を比較することで、どの会社がどの業務に強みを持っているのか、費用の妥当性はどうかを冷静に判断できます。

まとめ:あなたのマンションに最適な管理方法は?

自主管理と委託管理、どちらが「得」かという問いに、唯一絶対の正解はありません。コスト、手間、管理品質のバランスを、ご自身のマンションの状況に合わせて総合的に判断することが最も重要です。

自主管理が向いているケース委託管理が向いているケース
コスト業者選定に詳しく、コスト交渉に長けた役員がいる役員の労力を「時間価値」として重視する
手間役員に時間的・精神的な余裕がある。
役員のなり手確保に困っていない。
役員の負担を軽減し、なり手不足を解消したい。
本業に専念したい。
品質小規模でトラブルが少なく、建物も新しい。専門知識を要する大規模修繕を控えている。
緊急時の対応に安心を求めたい。
規模10戸以下の超小規模マンション20戸以上の中〜大規模マンション

※上記表はテキストリストで代替可能:コスト – 自主管理: … / 委託管理: …(上記と同様)。

最終的な判断は、目先の費用だけでなく、10年後、20年後のマンションの資産価値を維持するという長期的な視点で行うことが不可欠です。この記事のシミュレーションを参考に、管理組合でじっくりと議論し、専門家の意見も聞きながら、あなたのマンションにとって最良の選択をしてください。

免責事項

本記事は、分譲マンション管理に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個別の事案に対する法的な助言を行うものではありません。管理方式の変更等、具体的な検討を進める際には、必ずご自身のマンションの管理規約をご確認の上、必要に応じてマンション管理士等の専門家にご相談ください。また、法令等は記事作成時点(2025年12月23日)のものですので、最新の情報を参照してください。

参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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