特別決議4分の3攻略法:5ステップで成功&2026年改正準備

現行法と2026年4月1日施行予定の改正法における特別決議の要件を比較した表。改正法では、決議の前提として区分所有者および議決権の各過半数の出席が必要となり、分母が「出席した区分所有者」に変わることを示しています。これにより所在不明者への対応が緩和されるメリットを強調し、規約改正の重要性も示唆します。

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マンションの規約変更や大規模修繕など、重要な意思決定の際に立ちはだかる「特別決議」。総会で必要な賛成数が思うように集まらず、計画が頓挫してしまった経験を持つ管理組合の役員様も多いのではないでしょうか。特に、所在不明者や無関心層が多いマンションでは、「区分所有者数および議決権の各4分の3以上」という高いハードルを越えるのは至難の業です。しかし、諦める必要はありません。

この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、現行法のもとで特別決議を成功に導くための具体的な攻略法を5つのステップで解説します。さらに、2026年4月1日に施行が予定されている区分所有法改正によって、この「4分の3」の要件がどのように変わるのか、そして今から何を準備すべきかまでを詳しくご紹介します。戦略的な準備と正しい知識で、マンション管理の最大の壁を乗り越えましょう。

目次

【基本の確認】そもそも特別決議とは?普通決議との違い

まず、特別決議の基本的なルールと、普通決議との違いを正確に理解することが攻略の第一歩です。決議の種類を誤ると、総会そのものが無効になるリスクもあります。

決議要件:「区分所有者数」と「議決権」の両方で4分の3以上

特別決議が成立するためには、区分所有法で定められた以下の2つの要件を両方とも満たす必要があります。

  • 区分所有者数の4分の3以上の賛成
  • 議決権(通常は専有部分の床面積割合)の4分の3以上の賛成

議決権の割合だけで4分の3を超えても、賛成した人数が4分の3に満たなければ決議は否決されます。これが特別決議の厳格たる所以です。(出典:建物の区分所有等に関する法律 第31条)

「人数」と「広さ(議決権)」の両方で4分の3の賛成が必要。これが特別決議の鉄則です。

特別決議が必要な8つの重要事項

法律上、特別決議が求められるのは、区分所有者の権利や財産に大きな影響を及ぼす、特に重要な事項です。代表的なものは以下の通りです。

決議事項根拠条文(区分所有法)
管理規約の設定・変更・廃止第31条
共用部分の重大な変更第17条
建物の大規模滅실(価格の2分の1超)の場合の復旧第61条
建物の建替え(区分所有権の処分を伴うため、4分の3ではなく5分の4以上の賛成が必要)第62条第1項
団地内の建物の一括建替え第69条、第70条
管理組合法人の設立・解散第47条、第55条
義務違反者に対する使用禁止等の請求第58条、第59条
区分所有権の競売請求第59条
※上記は主な例であり、規約によって別途定めがある場合があります。

【特に注意】建替え決議は「5分の4」の特別要件
なお、上表の中でも特に注意が必要なのが「建物の建替え」です。これは区分所有者の財産権に重大な影響を及ぼすため、通常の特別決議(4分の3)ではなく、さらに厳しい「5分の4以上」の賛成が求められます(区分所有法第62条第1項)。

普通決議(過半数)との違いを明確に理解する

一方、日常的な管理運営に関する事項は普通決議で決定されます。原則として、区分所有者数および議決権の各過半数の賛成で可決されます。ただし、管理規約で別段の定めをすることも可能です。(出典:建物の区分所有等に関する法律 第39条)

  • 普通決議の対象例:
    • 管理者(理事長など)の選任・解任
    • 収支予算の決定・決算の承認
    • 管理委託契約の締結・更新
    • 小規模な修繕工事の実施

【用語の区別】特別決議 vs 普通決議

  • 定義: 特別決議は「4分の3以上」、普通決議は「過半数」の賛成が必要な決议手続きです。
  • 区別: マンションの根本ルール(規約)や建物の形を変えるような重大な変更が「特別決議」、日常の運営に関する決定が「普通決議」と区別されます。
  • メリット: この区別を理解することで、議題ごとに必要な賛成数を正確に把握し、無駄のない総会準備ができます。

見落としがちな緩和規定:共用部分の変更

現行法でも、特別決議の要件が一部緩和されるケースがあります。それは「共用部分の変更」に関する決议です。
建物の外観や構造に大きな影響を与えない、いわゆる「重大でない変更」を除き、共用部分の変更(例:エントランスのバリアフリー化など)は区分所有法第17条で特別決議事項です。ただし、その決議要件は、規約で定めることにより、『区分所有者数』の要件を過半数まで緩和できます。(議決権の4分の3以上は維持されます)

もし、ご自身のマンションの規約にこの定めがない場合、将来の改修に備えて規約を変更しておくことも有効な戦略です。(出典:建物の区分所有等に関する法律 第17条)

なぜ特別決議は難しいのか?「4分の3の壁」を生む2つの原因

理論上は4分の3の賛成を集めればよいのですが、なぜ多くの管理組合が苦戦するのでしょうか。その背景には、大きく分けて2つの構造的な原因があります。

原因1:所在不明・無関心層の存在(分母から除外できない問題)

現行法における最大の課題が、決議要件を計算する際の「分母」の扱いです。
特別決議の分母は「全区分所有者数」および「全議決権」です。つまり、連絡が取れない所在不明者や、総会に全く関心を示さない区分所有者も分母に含まれてしまいます。

例えば、100戸のマンションで10戸が所在不明の場合、賛成票を集めるべき対象は実質90戸ですが、可決には75戸(100戸の4分の3)の賛成が必要です。これは、活動に参加している区分所有者のうち、実に83%以上(75戸/90戸)の賛成を得なければならない計算となり、極めて高いハードルとなります。

原因2:決議内容の重要性・複雑さに対する理解不足

特別決議で扱う案件は、規約変更や大規模修繕など、専門的で複雑な内容が多くなります。特に、管理費や修繕積立金の値上げを伴う場合は、その必要性や金額の根拠を全区分所有者に納得してもらう必要があります。

  • なぜ今、値上げが必要なのか?
  • 他の選択肢は検討したのか?
  • 工事の見積もりは妥当なのか?

これらの疑問に対して、理事会が十分な説明責任を果たせないと、区分所有者は不安や不信感を抱き、賛成票を投じることをためらってしまいます。単に賛成を呼びかけるだけでなく、丁寧な情報提供と合意形成のプロセスそのものが、攻略の鍵を握っているのです。

【現行法】特別決議4分の3をクリアする5つの攻略ステップ

では、現行法のもとで高い壁を乗り越えるには、具体的にどうすればよいのでしょうか。総会当日に向けた、戦略的な5つのステップをご紹介します。

ステップ1:準備期(総会90日前〜)|決議事項の精査と名簿の整備

総会の成功は準備で9割決まります。まず、決議事項が本当に特別決議に該当するのか、前述のリストや管理規約を再確認しましょう。同時に、区分所有者名簿を最新の状態に更新し、所在不明者の洗い出しを始めます。

ステップ2:周知期(総会60日前〜)|納得感を生む「事前説明会」の開催

反対意見や無関心を減らす最も有効な手段が「事前説明会」です。総会前に複数回開催することが推奨されます(例:平日夜と週末昼など)。組合の規模に応じて、多くの区分所有者が参加できる機会を設けましょう。
【ポイント】

  • 目的を明確に: 「なぜこの決議が必要か」を背景から丁寧に説明する。
  • 資料を事前に配布: 検討時間が取れるよう、議案の要旨や費用根拠資料を早めに配布する。
  • 質疑応答の時間を確保: 出てきた質問や懸念には誠実に回答し、議事録として全戸に共有する。

事前説明会は、反対意見を早期に把握し、総会前に議案を修正したり、補足説明を準備したりする絶好の機会です。

ステップ3:賛成票獲得期(総会30日前〜)|書面・電子投票による賛成の積み上げ

総会当日に出席できない区分所有者の賛成票をいかに積み上げるかが、勝敗を分けます。

  • 議決権行使書(書面投票): 賛成・反対の意思を表示してもらう。
  • 委任状: 議長などに議決権の行使を委任してもらう。

これらの書類を総会招集通知に同封し、返送を積極的に呼びかけます。IT化が進んでいる組合では、電子投票システムを導入することも賛成率向上に大きく貢献します。返信がない区分所有者には、期限前にリマインドを行うことも有効です。

ステップ4:交渉期|管理会社への依頼は「現実的な配慮」が鍵

大規模修繕工事などに伴う規約変更の場合、複数の管理会社や施工会社から相見積もりを取得することが一般的です。しかし、ここで注意が必要です。

5社も6社も相見積もりを依頼するのは、かえって協力的な会社を遠ざけるリスクがあります。

見積もりの作成には、現地調査、協力会社との調整、詳細な報告書作成など、管理会社側に多大な労力がかかります。特に中小規模のマンションで過剰な数の相見積もりを求めると、「手間がかかる割に受注できるか不透明」と判断され、真剣な提案を受けられなくなる可能性があります。管理会社側は、管理委託内容の精査および、会計状況、そして1棟全体の管理費等の見積もり作成をするには3-4回ほど現地に足を運び、また清掃会社、EV点検、消防、警備など多岐にわたって外注先会社との打ち合わせを行ったうえで理事会数名との面談も数回こなすため労力がかかります。結論として、2〜3社での相見積もりに対しては積極的に動く会社が多いため、そのくらいが管理会社としては参加しやすいです。見積もり依頼時には、評価項目・納期・資料形式を統一し、項目別の明細を要求するよう心がけましょう。

【用語の区別】理想 vs 現実

  • 誤解(理想): できるだけ多くの会社から見積もりを取り、徹底的に比較すべき。
  • 現実: 多数への依頼は管理会社の負担を増やし、敬遠される原因に。質の高い提案を引き出すには、信頼できそうな2〜3社に絞り込むのが現実的です。
  • メリット: 候補を絞ることで、各社と深くコミュニケーションが取れ、組合の実情に合った、より精度の高い提案が期待できます。

ステップ5:決議期(総会当日)|当日の運営と議事進行のポイント

総会当日は、それまでの準備の集大成です。

  • 受付の徹底: 出席者数(本人出席、委任状、議決権行使書)を正確にカウントし、決議の母数となる定足数を確定させます。
  • スムーズな議事進行: 事前説明会で出た質問と回答を改めて共有し、議論の蒸し返しを防ぎます。
  • 採決: 採決方法(拍手、挙手、投票など)を明確に宣言し、賛成・反対の数を正確に集計します。

集計結果はその場で発表し、議事録に正確に記録することで、決議の正当性を担保します。

【2026年法改正】特別決議はこう変わる!今から準備すべきこと

これまで述べてきた「4分の3の壁」ですが、この状況を大きく変える法改正が予定されています。2024年に国会で可決・成立し、2026年4月1日の施行が見込まれる新しい区分所有法です。

最大の変更点:分母が「全区分所有者」から「出席者」へ

改正法における最大のポイントは、特別決議の成立要件の変更です。所在不明者問題に対応するため、決議の分母が「全区分所有者」から「集会に出席した区分所有者」に変わります。(出典:国土交通省「区分所有法制の改正に関する要綱案」)

すなわち、改正法のもとでは『出席者の4分の3で成立』という状態を実現するためには、まず区分所有者および議決権各自の過半数が集会に出席(委任状・書面投票を含む)していることが大前提です。この定足数が充足されない場合、改正法による決議要件の緩和メリットは享受できず、当該決議は成立しません。

現行法改正法(2026年4月1日施行予定)
決議の前提特になし区分所有者・議決権の各過半数の出席が必要
決議要件の分母全区分所有者(所在不明者含む)出席した区分所有者
決議要件の分子4分の3以上4分の3以上(変更なし)

これにより、所在不明者や無関心層は事実上、決議の母数から除外されるため、活動に積極的に参加している区分所有者の意思がより反映されやすくなります。

改正法によるメリットと注意点

  • メリット: 所在不明者が多いマンションでも、特別決議が格段に成立しやすくなる。
  • 注意点: 改正法のルールを適用するには、管理規約にその旨を定めておくことが必須です。定めがない場合、原則として従来の要件が適用されてしまうため、法改正のメリットを享受するには規約の見直しが欠かせません。また、そもそも総会を成立させるための「過半数の出席」(委任状・書面投票を含む)という定足数は、引き続きクリアする必要があります。

施行までに管理組合が対応すべき規約の見直し

法改正はまだ先の話ですが、今から準備しておくことが重要です。まずは、ご自身のマンションの管理規約が、国土交通省の示す「マンション標準管理規約」に準拠しているかを確認しましょう。

現行の標準管理規約(令和7年10月改正版)は、すでにITを活用した総会(オンライン参加など)に対応しています。法改正を待たずとも、まずは改正標準管理規約を参考に規約を見直し、書面や電子投票を活用しやすい環境を整えておくことが、スムーズな法改正対応への第一歩となります。この規約改正がなければ、2026年4月1日の法改正施行後も、改正法のメリット(出席者多数決)は享受できず、原則として従来の要件(全区分所有者を分母とする4分の3)が適用されてしまいます。管理組合は2025年中に規約改正の検討を完了し、法改正が適用される前の2026年3月末までに改正を成立させることが強く推奨されます。

プロに聞く!特別決議で絶対やってはいけないNG行動

決議を成功させたい一心で、ついやってしまいがちなNG行動があります。これらは法的なリスクを伴ったり、組合内の信頼関係を損ねたりするため、絶対に避けなければなりません。

法的リスクを伴うNG行動

  • 不適切な議決権操作: 白紙委任状を理事会に都合よく使ったり、所在不明者の議決権を勝手にないものとして計算したりする行為。総会決議の無効原因となります。
  • 非弁行為: 弁護士以外の者が、特定の法律問題について有料で相談に乗ったり、代理交渉を行ったりすること。マンション管理士や管理会社は法律の専門家ですが、特定の決議の有効性について法的な判断を下すことはできません。

管理組合・管理会社との関係を悪化させるNG行動

  • 根拠のない反対意見の無視: 合理的な理由がある反対意見や懸念を無視して、強引に採決を進める行為。組合内に深刻な亀裂を生みます。
  • 管理会社への過度な要求: 前述の通り、過剰な相見積もり依頼や、契約範囲外の業務を無償で要求すること。信頼関係が損なわれ、協力が得られなくなります。

まとめ:戦略的な準備で「4분의3の壁」は乗り越えられる

マンションの特別決議「4分の3の壁」は非常に高いですが、決して乗り越えられないものではありません。現行法のもとでは、戦略的な準備と丁寧な合意形成が成功の鍵を握ります。

【実行ロードマップ】

フェーズタイミング主なアクション
準備期総会90日前〜名簿整備、決議事項の精査
周知期総会60日前〜事前説明会の開催、資料の事前配布
賛成票獲得期総会30日前〜議決権行使書・委任状の回収促進
決議期総会当日厳格な定足数確認と採決

そして、2026年4月1日に予定される法改正は、多くの管理組合にとって追い風となります。今のうちから法改正の動向を注視し、規約の見直しなどを検討しておくことで、将来のマンション運営をより円滑に進めることができるでしょう。

この記事が、特別決議に悩むすべての管理組合役員の皆様の一助となれば幸いです。

免責事項

本記事は、不動産取引に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、特定の個人または団体に対して、法的助言、税務助言、または投資助言を提供するものではありません。

記事内で言及されている法令や制度は、将来改正される可能性があります。実際の意思決定や契約にあたっては、必ず最新の法令原文や、公的機関が発表する一次情報をご確認ください。

個別の事案に関する具体的な法的判断や対応については、弁護士、マンション管理士等の専門家にご相談ください。本記事の情報に基づいて行われたいかなる行為の結果についても、執筆者および運営者は一切の責任を負いかねます。

参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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