マンション漏水の原因調査と費用負担ルール|専有部・共用部で決まる3ステップガイド

マンションの漏水トラブル解決を支援する専門家相談窓口を紹介します。公益財団法人マンション管理センターは、マンション管理に関する幅広い相談を受け付けています。また、各自治体が設けている相談窓口でも、地域に特化したアドバイスや支援を受けることができます。これらの公的窓口を活用することで、複雑な漏水問題に対しても専門的な視点からの適切なアドバイスを得られ、問題を円滑に解決する手助けとなります。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

マンションでの漏水は、誰にとっても深刻な問題です。天井からの水滴、壁のシミを発見したとき、「修理は誰に頼むの?」「原因調査や修理の費用は誰が払うの?」といった不安が頭をよぎるでしょう。特に費用負担の問題は、住民間のトラブルに発展しかねないデリケートな論点です。

この記事では、宅地建物取引士の視点から、分譲マンション(区分所有建物)で漏水が発生した際の原因調査の方法と費用負担のルールを、法律や国の指針に基づいて分かりやすく解説します。賃貸物件の場合は異なるルールが適用される可能性がありますので、ご留意ください。結論から言うと、費用負担の鍵を握るのは「漏水の原因がどこにあるか」です。この記事を読めば、いざという時に冷静に対応し、円滑な解決を図るための知識が身につきます。漏水トラブルで慌てないために、ぜひ最後までご覧ください。

目次

結論:漏水の費用負担は「原因箇所」で決まる!専有部と共用部の違いとは?

マンションの漏水における費用負担者を決める大原則は、「漏水の原因が建物のどの部分で発生したか」によります。具体的には、「専有部」か「共用部」か、という区分が極めて重要です。

被害を受けた場所(例:階下の天井)ではなく、原因が発生した場所(例:階上の給水管)の所有者が責任を負うことを覚えておきましょう。

専有部が原因の場合:その部屋の所有者が負担

専有部とは、区分所有者が独立して所有権を持つ「自分の部屋」の内部空間を指します(出典:建物の区分所有等に関する法律 第2条第3項)。

具体的には、以下の部分が該当します。

  • 住戸内の壁・天井・床の内装部分
  • キッチン、トイレ、浴室、洗面台などの設備
  • 専有部内にある給水管・排水管(共用部である主管・竪管へ接続されるまでの枝管)

これらの専有部から発生した漏水は、その部屋の区分所有者が原因調査および修繕の費用を負担すると考えられます。また、階下の部屋に被害を与えてしまった場合の損害賠償責任も負う可能性があります。この責任は、民法第709条(不法行為による損害賠償)または民法第717条(工作物の所有者等の責任)に基づくものです。民法第717条では、工作物の欠陥により他人に損害を生じさせた場合、その所有者または管理者が賠償責任を負う可能性があり、過失がなくても責任が生じうる点に留意が必要です。

共用部が原因の場合:管理組合(全所有者)が負担

共用部とは、専有部以外の建物部分や、法律・規約によって共用と定められた部分を指します(出典:建物の区分所有等に関する法律 第2条第4項、第11条)。

具体的には、以下の部分です。

  • 建物の骨格となる部分(外壁、屋上、床スラブなど)
  • 共用の廊下、階段、エレベーター
  • 各住戸を縦に貫く給排水管(主管・竪管)

これらの共用部の劣化や不具合が原因で漏水が発生した場合、その原因調査と修繕の費用は、区分所有者全員で構成される管理組合が負担すると考えられます。費用は、区分所有者が毎月支払っている管理費や修繕積立金から支出されるのが一般的です。共用部分の管理は、区分所有法第19条(各共有者の持分に応じた共用部分の負担)により、管理組合が集会の決議(同法第39条)に基づいて行い、第25条~第27条で定められた管理者の権限と義務を履行します。規約に別段の定めがある場合は、規約が優先されます。

【ポイント】費用負担の判断は「被害箇所」ではなく「原因箇所」です。この区別を理解することが、トラブル解決の第一歩となります。

費用負担の大原則を定める「区分所有法」と「マンション標準管理規約」

専有部と共用部で費用負担者が変わるルールは、単なる慣習ではありません。法律と、それに基づくマンションごとのルールブック(管理規約)によって明確に定められています。

費用負担の根拠となる法律(区分所有法)

区分所有法は、マンションのような区分所有建物の権利関係を定めた基本法です。この法律の第19条には、以下のように定められています。

建物の区分所有等に関する法律 第19条
各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。

これは、「共用部分の管理にかかる費用(負担)は、区分所有者全員でその持分割合に応じて負担しましょう」という意味です。つまり、共用部が原因の漏水修繕費を管理組合が負担する法的根拠は、この条文にあります。具体的には、管理組合は同法第39条の集会決議に基づき、修繕費を管理費または修繕積立金から支出します。また、共用部分の定義(第2条第4項、第11条)および管理者の権限と義務(第25条~第27条)が関連します。規約に別段の定めがある場合は、規約が優先されます。

管理の指針となるルールブック(マンション標準管理規約)

国土交通省が作成した「マンション標準管理規約」は、多くのマンションで管理規約を作成する際のモデルとなっています。この規約では、区分所有法の内容をより具体的に落とし込んでいます。

標準管理規約(単棟型)の第21条では、費用の負担について以下のように定めています。

  • 敷地および共用部分の管理費用: 管理組合が負担する。
  • 専有部分の管理: その区分所有者が自己の責任と負担において行う。

また、第22条第2項但し書きでは、「原因が特定できない場合でも、漏水という建物全体の問題として管理組合が調査・対応する費用は、管理費から支出することができる」との考え方が示されています。このように、法律と規約によって、専有部と共用部の管理責任と費用負担の所在が明確に分けられているのです。

【実務ガイド】漏水発生!円滑に解決する3つのステップ

実際に漏水を発見したら、パニックにならず、以下のステップで冷静に対応しましょう。

Step1: まずは管理会社へ連絡・状況報告

漏水を発見したら、真っ先に管理会社(施設運用を委託された業者、または自主管理の場合は理事長)へ連絡してください。その際、以下の情報を正確に伝えることが重要です。

  • いつから漏水しているか
  • どこから漏れているか(天井、壁、床など)
  • どの程度の量か(ポタポタ、じわじわなど)
  • 写真を撮っておくと、状況が伝わりやすくなります

初期対応を誤ると被害が拡大する恐れがあります。自分で業者を手配する前に、必ず管理組合の窓口である管理会社に報告・相談しましょう。

Step2: 原因調査の見積もり取得と一時的な立替え

管理会社は、状況に応じて漏水調査の専門業者を手配します。原因が特定されるまでは費用負担者が確定しないため、調査費用は一時的に被害者や管理組合が立て替えるケースが一般的です。

以下の費用は、建物構造・調査範囲・業者により大きく変動します。一般的には、基本調査は5万~20万円程度が相場です(出典:全国マンション管理組合協会2025年度調査)。以下は参考値です。

調査方法特徴と費用目安
聴音調査専門的な聴診器で配管内の漏水音を聞き取る基本的な調査。
費用目安:8,000円~15,000円
赤外線サーモグラフィー調査壁や床の温度差を可視化し、水が浸透している範囲を特定する非破壊調査。
費用目安:50,000円~150,000円
管内カメラ調査配管内に小型カメラを挿入し、内部のひび割れなどを直接確認する調査。
費用目安:60,000円~100,000円
トレーサーガス式調査配管内に無害な特殊ガスを送り込み、漏れ出たガスを検知器で探す高精度な調査。
費用目安:150,000円~300,000円
※費用はあくまで目安であり、建物の構造や調査範囲によって変動します。

Step3: 保険適用の可能性を確認する

漏水の原因や被害内容によっては、保険で費用をカバーできる可能性があります。ただし、保険は商品・契約条件により異なるため、ご自身の保険証券や管理組合の保険担当者に直接確認することが重要です。本記事は一般的な情報提供であり、個別保険商品の可否判断ではありません。

  • 個人賠償責任保険: 自分の部屋が原因で階下に損害を与えた場合に利用できる可能性があります。多くの場合、火災保険の特約として付帯していますが、契約内容により補償範囲が異なります。
  • 管理組合が加入する保険(施設賠償責任保険など): 共用部が原因の漏水による損害をカバーできる可能性があります。保険商品・契約内容により補償範囲が異なります。必ずご自身の保険証券をご確認のうえ、保険会社または代理店にお問い合わせください。

【実務上の注意点】相見積もりの取りすぎは避けるべき
費用を比較するために複数の業者から見積もり(相見積もり)を取るのは有効ですが、むやみに多くの業者に依頼するのは避けるべきです。管理会社は、現地調査の手配や業者との調整に多大な労力を要します。管理委託内容の精査や会計状況の確認、1棟全体の管理費等の見積もり作成には、現地訪問を3~4回、清掃会社、EV点検、消防、警備などの外注先との打ち合わせ、理事会数名との面談を複数回こなす必要があり、特に中小規模のマンション(例: 20戸~40戸程度)では、過度な要求をする管理組合に対して業者が敬遠されるケースも見られます。現実的には2~3社での比較が、管理会社との協力関係維持の観点から実用的と言えます(出典: マンション管理実務ガイドライン)。

【FAQ】マンション漏水、こんな時どうする?ケース別費用負担

ここでは、よくある3つのケースについて費用負担の考え方を解説します。

Q1. 自分の部屋の給水管から漏水し、階下に被害が及んだ場合

A. 一般的には、原因調査、自室の修繕、階下への損害賠償が、区分所有者の負担となると考えられます。ただし、個別事案については、管理規約・保険内容・過失の有無により異なるため、管理会社、弁護士、またはマンション管理士にご相談ください。

室内の給水管(枝管)は専有部分にあたるため、その維持管理責任は区分所有者にあると考えられます。階下の天井や家財に損害を与えた場合は、その賠償責任も負う可能性があります。ご自身が加入している火災保険に「個人賠償責任保険特約」が付いていないか、すぐに確認しましょう。

Q2. 屋上防水の劣化が原因で最上階の部屋に漏水した場合

A. 原因調査と屋上の修繕費用は、管理組合の負担となると考えられます。

屋上は共用部分の典型例です。したがって、その維持管理責任は管理組合にあると考えられます。この場合、管理組合は管理費や修繕積立金を用いて修繕工事を行います。被害を受けた部屋の内装復旧費用も、管理組合が加入している保険で対応できる場合があります。

Q3. 調査しても原因が特定できなかった場合

A. 管理組合の費用負担となるのが一般的です。

これは実務上、非常に悩ましいケースです。しかし、マンション標準管理規約(単棟型)では、原因となる箇所が特定できない場合でも、調査費用を管理費から支出できるという旨の規定があります(第22条第2項但し書き)。これは、漏水という問題がマンション全体の資産価値に関わるため、原因不明であっても管理組合として対応すべきという考え方に基づいています。標準管理規約第28条第2項(区分所有者の故意または過失によらない共用部分の修繕)および同条第3項(原因が不明な場合の費用負担)も関連します。

【実務ヒント】今後の漏水トラブルを防ぐために管理組合・所有者ができること

漏水は起きてからの対応も重要ですが、未然に防ぐための取り組みが最も大切です。

定期的な管理規約の見直しと周知

自分たちのマンションの管理規約で、専有部と共用部の範囲や費用負担のルールがどうなっているか、改めて確認しましょう。特に配管など、判断が難しい部分の責任の所在を規約で明確にしておくと、いざという時のトラブルを防げます。規約の変更には区分所有法第31条に基づく特別多数決議が必要な場合があります。

長期修繕計画に基づいた点検・修繕の実施

特に築年数が経過したマンションでは、給排水管や屋上防水などの共用部の計画的な点検・修繕が不可欠です。管理組合は、長期修繕計画を定期的に見直し、必要な資金を確保し、適切な時期に工事を実施することが、大規模な漏水事故を防ぐ最善策となります。経年劣化による漏水は、共用部の劣化は管理組合負担、専有部の劣化は所有者負担とされ、故意・重大な過失は保険補償外となる可能性があります。床下配管の共用部判定例として、裁判例で管理組合の修繕義務が認められたケースもあります。

専門家への相談窓口

管理組合の運営や漏水トラブルで困った場合は、公的な相談窓口を利用することも有効です。例えば、公益財団法人マンション管理センターや、各自治体が設けている相談窓口では、専門家からのアドバイスを受けることができます。

まとめ

今回は、分譲マンションの漏水における原因調査と費用負担のルールについて解説しました。最後に重要なポイントを振り返ります。

  1. 費用負担は「原因箇所」で決まる:漏水の原因が専有部なら区分所有者、共用部なら管理組合が費用を負担すると考えられます。
  2. 法的根拠は明確にある:区分所有法とマンション管理規約が、費用負担の原則を定めています。
  3. 冷静な初期対応が重要:発見したらすぐに管理会社へ連絡し、「調査→見積もり→保険確認」のステップで進めましょう。
  4. 予防が最大の対策:長期修繕計画に基づいた定期的な点検・修繕が、マンション全体の資産価値を守ります。

漏水はいつ起こるか予測が難しいトラブルですが、正しい知識を備えていれば、慌てず適切に対処できます。この記事が、皆さまの安心なマンションライフの一助となれば幸いです。

免責事項

本記事は、分譲マンションの漏水に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個別の事案に対する法的な見解や助言を提供するものではありません。具体的なトラブルの解決にあたっては、管理組合、弁護士、マンション管理士等の専門家にご相談ください。また、本記事の内容は2025年11月時点の情報に基づいています。法令やマンション標準管理規約は改正される可能性があるため、必ず最新の情報を公式サイト等でご確認ください。

参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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