1. 修繕積立金の保管方法の選定
修繕積立金は、将来の修繕工事に備えるための重要な資金です。そのため、安全性を最優先に考えた保管方法が求められます。
- 普通預金:利息はほとんど付きませんが、流動性が高いです。ただし、金融機関が破綻した場合、1,000万円までしか保護されない「ペイオフ」の対象となります。
- 決済性預金:利息は付きませんが、ペイオフの対象外となり、全額が保護されます。
- 定期預金:利息は普通預金より高いですが、途中解約時に利率が下がる可能性があります。
- すまい・る債:住宅金融支援機構が発行する債券で、利率は普通預金より高く、安全性も比較的高いとされています。
これらの方法を組み合わせて、リスクを分散しながら運用することが推奨されます。
2. 運用の合意形成と透明性の確保
修繕積立金の運用は、管理組合の共有財産を扱うため、全区分所有者の合意が必要です。運用方針や選定する金融商品については、総会での決議を経て決定することが一般的です。また、運用状況や成果については定期的に報告し、透明性を確保することが信頼関係の維持につながります。
3. 運用額とリスクのバランス
運用に回す資金は、将来の修繕工事に必要な額を確保した上で、余剰分を運用することが基本です。運用額が少ないと、複利効果が限定的となり、十分なリターンが得られない可能性があります。また、急な修繕費用が発生した場合に備えて、一定の流動性を持たせた資金を確保しておくことが重要です。
4. 長期修繕計画との整合性
修繕積立金の運用は、長期修繕計画と連動させることが必要です。計画的に修繕工事を実施するためには、必要な資金を適切に積み立てておくことが前提となります。長期修繕計画は、建物の劣化状況や市場動向を踏まえて定期的に見直し、修繕積立金の額や運用方針を調整することが求められます。
5. 実践的な運用方法の提案
管理費の削減:管理費を削減することによって余剰資金を修繕積立金へ繰り入れることができるようになります(管理規約の設定が必要)。
均等積立方式の採用:修繕積立金を均等に積み立てる方式を採用することで、将来の急激な増額を避け、住民の負担を平準化できます。一概に均等積立にしなくとも、適切なタイミングに値上げしていれば段階値上げでも大丈夫です。特に分譲時は分譲主が売れるように修繕積立金を低く設定しがちです。分譲時の長期修繕計画で5年毎に値上げする計画が組まれていることが多いので5年おきに値上げについて積立金等方式も視野に入れて検討するのが良いでしょう。
修繕の見直し:状態の良い部分等は修繕を後ろ倒しにする、修繕の際は緊急性の無いものはきちんと相見積もりを取る等、で適切な価格・時期に修繕を実施することで適切な運用ができるでしょう。
まとめ
小規模マンションの管理組合において、修繕積立金の適切な運用は、将来の大規模修繕工事に備えるために不可欠です。安全性を最優先に考えた保管方法の選定、運用方針の合意形成、長期修繕計画との整合性を確保することで、持続可能なマンション管理が実現できます。住民一人ひとりが理解し、協力し合うことで、より良いマンションライフを築いていきましょう。