自主管理マンションとは、管理会社を使わずに管理組合が主体となって建物の維持管理や会計業務、総会運営などを行う形態です。
管理コストを抑えられる、意思決定が早いなどのメリットがある一方で、運営の負担やノウハウ不足からトラブルに発展するケースも少なくありません。
ここでは、自主管理を選択している、あるいは検討中の管理組合向けに、「失敗しないための6つのポイント」をご紹介します。
✅【1】役割と分担:誰が何をやるかを明確に
自主管理における最大の課題は、「業務の属人化」と「役員間の情報格差」です。役員の誰が何を担当し、どのようなフローで進めるのかを明確にしないと、引き継ぎがうまくいかず、毎年のように“振り出しに戻る”状況になってしまいます。
対策:
- 年度初めに「役員業務一覧表」や「年間スケジュール」を作成
- 書類・データはクラウドで共有(例:Googleドライブ、Dropbox、サイボウズなど)
- 引き継ぎマニュアルを残す
✅【2】会計管理:お金の扱いは特に慎重に
自主管理では会計処理を管理組合が直接行うことになります。収支報告や決算書類の整合性が取れていないと、信頼性を損ねるだけでなく、将来的な修繕や借入に支障が出る可能性もあります。
対策:
- 会計ソフトを導入して記録・仕分けを自動化
- 毎月の通帳残高と帳簿の照合を徹底
- 外部の専門家に「年次監査」や「会計チェック」だけ依頼するのも有効
✅【3】外注の活用:全部を自力でやろうとしない
完全な「フル自主管理」は理想的に見えても、実際には相当な負担と専門知識が必要です。清掃、設備点検、長期修繕計画の策定など、専門性の高い分野は適切な業者に委託することが、自主管理の成功には不可欠です。
対策:
- 「部分委託」を前提とした業者選定(相見積もりを活用)
- 総会や理事会の議事録作成や進行支援など、スポット業務もプロに依頼可能
- 自主管理を支援する管理会社との連携を検討
✅【4】合意形成:住民間のコミュニケーションを大切に
小規模マンションでは住民同士の距離が近い分、意見の違いや不満が表面化しやすい一方、日頃のコミュニケーション次第でスムーズな合意形成が可能です。
対策:
- 外国人居住者向けの多言語対応なども検討
- 年1回の総会だけでなく、定期的な「理事会」や「住民アンケート」の実施
- 外部所有者(賃貸オーナー)にも丁寧な情報提供を
✅【5】いざという時の備え:トラブル・災害対応の体制をつくる
漏水事故や設備不具合、災害時の対応など、緊急時に「誰が、どう動くか」が決まっていないと、大きな混乱につながります。
対策:
- 「緊急連絡網」「管理業務フロー図」を常備
- 近隣業者・修繕会社と事前に連絡体制を構築
- 防災備蓄・安否確認体制も最低限は準備
✅【6】ルールの順守:総会決議・通知手続きは丁寧に
自主管理では、管理規約や細則の改正、大規模修繕工事の発注、重要設備の更新など、重要事項についての意思決定もすべて管理組合が担うことになります。しかし実際には、「議決を取らずに発注してしまった」「総会通知が適正に出されていなかった」といった運用ミスが散見されます。
これらは小さな見落としでも、のちに“無効”とされるリスクをはらんでおり、特にトラブルが起きた際には管理組合全体の信頼問題に発展する可能性もあります。
対策:
- 総会開催は原則1~2週間前までに書面通知を出す(規約に基づく)
- 議案書・議事録の形式は過去の正規事例を参考に
- 予算案を超える工事の発注など重要事項は理事会だけで決めず、必ず総会決議
- 管理規約や標準管理規約(国交省版)を随時チェックする
- 必要に応じて、総会運営の支援を管理会社や外部専門家に依頼する
🌟まとめ:無理のない範囲で“プロの力”を借りることも大切
自主管理は、うまく運用すれば住民の自主性が高まり、コスト削減や信頼感の向上にもつながります。しかし、すべてを抱え込んでしまうと、役員の負担が過大になり、結果的に管理の質が低下してしまうリスクも。
適切なタイミングで外部の専門家の力を借りることも、健全な管理体制を維持するうえで重要です。
私たちの管理会社では、自主管理の方針を尊重しながらも、「会計だけ」「総会支援だけ」「規約改正のアドバイス」など必要な部分を柔軟にサポートするサービスをご用意しています。
「今のやり方で本当に大丈夫か不安」「将来に備えて一部だけでも外注したい」という方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。