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マンションの清掃業者を変更するための正しい手順とポイント
マンションの清掃品質に不満はあるものの、業者変更の手続きが複雑そうでためらっていませんか?「管理会社との関係が悪化しないか」「どんなトラブルが考えられるのか」といった不安から、行動に移せない管理組合の理事の方も多いでしょう。しかし、適切な手順とポイントさえ押さえれば、清掃業者の変更は決して難しいことではありません。むしろ、マンションの資産価値を維持・向上させるために不可欠な管理業務の見直しです。
この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、マンションの清掃業者を変更するための具体的な方法を5つのステップで解説します。管理会社との契約関係に基づいた正しい手続きのパターン分けから、失敗しない業者選びのポイント、そしてトラブルを未然に防ぐための注意点まで、網羅的にご紹介します。ただし、各マンションの管理規約や契約内容が優先されますので、必ずご自身の状況を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。この記事を読めば、清掃業者変更に関する疑問や不安が解消され、自信を持って行動できるようになるはずです。
背景知識:清掃業者変更の前に知るべき2つのパターン
マンションの清掃業者を変更する場合、まず現在の管理会社との契約形態によって進め方が大きく2つに分かれることを理解する必要があります。この区別を誤ると、不要な手続きで時間を浪費したり、管理組合内で混乱を招いたりする原因となります。ただし、自マンションの管理規約を最優先に確認し、必要に応じてマンション管理士や弁護士などの専門家に相談してください。
パターン1:清掃業者「のみ」を変更する場合(理事会決議が原則)
現在契約している管理会社との「管理委託契約」は維持したまま、その契約下で業務を行っている清掃業者だけを入れ替えるケースです。多くのマンションでは、清掃業務は管理会社から専門業者へ再委託されています。
この場合、管理組合の意思決定は、原則として理事会での決議で進めることが可能です。区分所有法第39条およびマンション標準管理規約第48条・第49条(理事会の業務監督事項)に基づき、日常的な管理業務の執行は理事会に委ねられており、清掃業者の選定・変更もこれに含まれると解釈されるのが一般的です。ただし、各マンションの管理規約が優先されるため、規約で異なる定めがある場合はそれに従ってください。
管理会社との良好な関係を維持しつつ、コストや品質といった個別の問題だけを解決したい場合に最適な方法と言えます。
パターン2:管理会社「ごと」変更する場合(総会決議が必須)
清掃品質だけでなく、管理会社の対応全般に不満があり、管理会社そのものを変更するケースです。この場合、新しい管理会社が提携する清掃業者が業務を行うことになります。
管理会社の変更は、管理組合の運営に関する重要事項と見なされるため、区分所有者全員で構成される「総会」での決議が必要です。区分所有法第39条に基づき、区分所有者および議決権の各過半数による「普通決議」で可決されます。ただし、管理規約で特別な定めがある場合はそれが優先されます。理事会だけで決定することはできません。
【ポイント】まずは自組合の「管理委託契約書」を確認し、清掃業務がどのように位置づけられているか、また業者変更の権限が誰にあるのかを把握することが、業者変更を成功させるための第一歩です。
手続・対応ステップ:【5ステップ】で進める清掃業者変更
ここでは、前述の「パターン1:清掃業者のみを変更する場合」を想定し、具体的な手続きを5つのステップで解説します。管理組合は管理会社に対する監督権を有します(区分所有法第1条およびマンション管理適正化法に基づく)。
Step 1:現状の契約内容と問題点の整理
まず、現状を客観的に把握することから始めます。以下の点を理事会で整理・共有しましょう。
- 契約内容の確認:現在の管理委託契約書や仕様書を確認し、清掃の範囲、頻度、作業時間、費用などを正確に把握します。
- 問題点の具体化:「清掃が行き届いていない」といった漠然な不満ではなく、「エントランスのガラスが週1回しか清かれていない」「廊下の隅にホコリが溜まっている」など、具体的な問題点を写真付きで記録します。
- 理事会での合意形成:これらの情報を基に、理事会として「清掃業者を変更する」という方針の一次合意を形成します。
Step 2:新規清掃業者の選定と比較検討
次に、新しい業者の候補を探し、比較検討します。管理会社に候補リストの提出を依頼するのが一般的ですが、組合独自で探すことも可能です。管理会社との調整が必要となる場合があります。
- 候補業者のリストアップ:2〜3社程度に絞って候補を挙げます。複数の見積もりを比較検討することは重要ですが、過度に多社(5社以上)を依頼すると、管理会社の負担が増大し、積極的な協力が得られにくくなる可能性があります。管理委託内容の精査、現地調査、外注先調整、理事会面談など労力がかかるため、現実的には2〜3社が適切です。
- 見積もりの取得:Step1で整理した業務仕様書を基に、各社から見積もりを取得します。この際、「一式」ではなく、作業項目ごとの詳細な内訳を必ず要求しましょう。
- 現地調査・ヒアリング:可能であれば、各社の担当者と面談し、実績や業務への姿勢を確認します。
Step 3:理事会での審議と決議
集まった見積もりや情報を基に、理事会で最終的な業者を審議・選定します。
- 比較検討表の作成:費用だけでなく、業務内容、実績、担当者の対応などを一覧できる比較表を作成すると、議論がスムーズに進みます。
- 決議:議論がまとまったら、理事会として正式に業者変更と新業者の選定を決議し、議事録に記録します。この議事録が、管理会社に対して組合の正式な意思を示す証拠となります。ただし、管理規約で決議要件が異なる場合はそれに従ってください。
Step 4:既存業者への解約通知
理事会での決議後、管理会社を通じて、または管理組合から直接、既存の清掃業者(またはその元請けである管理会社)へ解約を通知します。
- 解約通知期間の確認:最も重要なのが「解約通知期間」の確認です。多くの契約では「3ヶ月前」などと定められています(マンション標準管理委託契約書の参考例)。ただし、現行の管理委託契約書を確認し、標準契約書は参考例としてください。契約条項が優先されます。この期間を遵守しないと、トラブルや損害賠償に発展する可能性があります。
- 書面での通知:「言った言わない」のトラブルを防ぐため、必ず内容証明郵便など記録の残る書面で通知します。
Step 5:新旧業者間での引き継ぎ
契約終了日と新しい契約の開始日に向けて、円滑な引き継ぎを段取ります。ここでの不備は、清掃品質の低下に直結します。
- 引き継ぎリストの作成:鍵の受け渡し、保管場所、清掃マニュアル、居住者からの特記事項などをリスト化します。
- 立ち会い:可能であれば、新旧業者の担当者と理事、管理会社の担当者が立ち会い、現地で引き継ぎを行うのが理想です。重要書類と共用部分の鍵などの物品引き継ぎ、進行中の業務内容の共有が必須です。
実務ヒント:失敗しない業者選定とトラブル回避術
手続きの流れは理解できても、実務では様々な壁にぶつかります。ここでは、業者変更を成功に導くための実践的なヒントと、法改正などの最新情報をお伝えします(本日2026年3月30日時点の情報に基づく)。
ポイント1:業務範囲と仕様を明確にするコツ
新しい業者に見積もりを依頼する際は、「今の業者と同じ内容で」と伝えるだけでは不十分です。現状の不満点を解消できる、より具体的な「業務仕様書」を作成しましょう。
| (記載例)業務仕様書の項目 ・日常清掃:エントランス、廊下、階段、ゴミ置場など(頻度:週5回、月〜金) ・定期清掃:床面洗浄・ワックス塗布(頻度:年2回、6月・12月) ・特別清掃:窓ガラス、照明器具、外壁など(頻度:年1回) ・使用機材・薬剤:環境配慮型の洗剤を使用すること |
ポイント2:複数の見積もりを正しく比較する(見積もり依頼時の注意点)
コスト削減は重要ですが、安さだけで選ぶのは失敗のもとです。特に見積もりを依頼する際には、管理会社側の事情も理解しておく必要があります。複数の見積もりを比較検討することは重要ですが、過度に多社を依頼すると負担が生じ、協力が得られにくくなるため、2〜3社を目安にバランスよく進めましょう。
- 「一式見積もり」はNG
なぜなら、作業内容や人件費の内訳が不明なため、価格の妥当性が判断できず、後から「この作業は含まれていない」といったトラブルになりやすいからです。必ず詳細な内訳を求めましょう。 - 多すぎる相見積もりの実情
5社も6社も見積もりを取ることは、一見すると熱心な活動に見えます。しかし、管理会社にとって、見積もりの作成は大きな負担です。現地調査、外注先との調整、理事会への説明資料作成など、多くの労力がかかります。特に20〜40戸規模のマンションでは、受注できる保証のない多数の相見積もりに、積極的に参加するメリットは小さいのです。結果として、意欲の低い業者ばかりが集まることにもなりかねません。 - 現実的な見積もり依頼は「2〜3社」が目安
意欲のある優良な業者にしっかりと検討してもらうためには、候補を2〜3社に絞って依頼するのが現実的です。株式会社MIJの場合も、2〜3社での比較検討であれば、積極的に対応し、質の高い提案を行うことが可能です。
ポイント3:契約解除と引き継ぎのトラブル回避策
業者変更で最もトラブルが多いのが、契約解除と引き継ぎのフェーズです。以下のチェックリストを活用し、抜け漏れを防ぎましょう。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 解約通知期間 | 契約書で「〇ヶ月前」か確認したか? |
| 解約通知方法 | 書面(内容証明郵便など)で通知したか? |
| 鍵・備品の返却 | 共用部の鍵、清掃用具保管庫の鍵など、すべての返却を確認したか? |
| 清掃マニュアル | 旧業者から清掃マニュアルや作業手順書を回収し、新業者へ共有したか? |
| 情報共有 | 居住者からの特記事項や注意点を新業者に伝達したか? |
ポイント4:【2026年4月施行】法改正で清掃業務はどう変わる?
2026年4月1日に施行される改正区分所有法(法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(所有者不明土地関係)の概要」最終更新日:2025年12月時点)により、管理組合の権限が強化されます。これには清掃業務も関係します。
従来、排水管の清掃などで各住戸(専有部分)に立ち入るには、その都度所有者の同意が必要でした。しかし改正法では、共用部分の管理のために必要な場合、規約の定めと総会決議があれば、専有部分の保存行為(一体的な清掃を含む)を管理組合が主体となって実施できるようになります。この解釈は、区分所有法の条文および標準管理規約に基づく公的なものです。
これにより、例えば共用廊下の洗浄と同時に各戸のバルコニーを清掃するなど、効率的で質の高い清掃サービスが実現しやすくなる可能性があります。ただし、修繕積立金の充当は管理組合での意思決定が必要です。
ポイント5:清掃業者変更で活用できる補助金はある?
自治体によっては、マンションの管理適正化や環境改善を目的とした補助金・助成金制度を設けている場合があります。
- 注意点:これらの制度は、年度や自治体によって内容が大きく異なります。例えば、2026年度東京都〇〇区の制度のように、対象となる年度と地域が限定されています。制度の改定が頻繁に行われるため、申請を検討する際は、必ずお住まいの自治体の公式サイトで2026年3月30日時点の最新情報を確認してください。
- 申請サポートの重要性:補助金の申請は手続きが煩雑なため、通常の管理会社は提案を嫌がることがあります。株式会社MIJでは、活用できる制度がある場合、経験豊富なスタッフが積極的に申請サポートを行っています。
よくある質問(Q&A)
清掃業者の変更に関して、よく寄せられる質問にお答えします。
Q. 清掃の質が悪い場合、すぐに変更できますか?
A. 契約内容によります。まず、管理委託契約書で定められた清掃の頻度や仕様が守られているかを確認し、守られていない場合は「契約不履行」として改善を要求します。客観的な証拠(写真、記録)が重要です。それでも改善されない場合は、契約解除の正当な理由となります。いきなり「変更」ではなく、証拠に基づく「改善要求」から始めるのが定石です。
Q. 管理会社に業者変更を反対されたらどうすればいい?
A. 管理会社が反対する理由を確認することが大切です。単に「手間がかかるから」という理由であれば、理事会としての方針を毅然と伝え、協力を求めます。もし「現在の業者との契約上、すぐに解約できない」など法的な理由であれば、その根拠となる契約条項を示してもらい、弁護士やマンション管理士などの専門家に相談することも有効です。
Q. 費用の目安はどのくらいですか?
A. 費用はマンションの規模、立地、要求する清掃レベル、頻度によって大きく異なるため、一概に「いくら」とは言えません。だからこそ、複数の業者から詳細な内訳の入った見積もりを取得し、サービス内容と価格のバランスを比較検討することが非常に重要になります。現在の費用が適正かを知るためにも、相見積もりは有効な手段です。
【管理事業からの撤退をお考えの企業様へ】株式会社MIJの解決策
本セクションは株式会社MIJのサービス紹介であり、広告目的の情報を含みます。独立した助言ではありません。管理組合の企業選定は組合の責任です。この記事は主に管理組合様向けですが、視点を変え、マンション管理事業からの撤退を検討されている企業様へのご案内です。後継者不足や採算性の問題から事業の継続が困難になった場合、株式会社MIJがその課題を解決します。
撤退時のトラブルを回避し、円滑な事業移行をサポート
事業撤退は、管理組合との契約解除交渉や従業員の処遇など、多くのトラブルを招く可能性があります。株式会社MIJは、貴社と管理組合の間に入り、円滑な事業譲渡や管理の引き継ぎをサポートします。長年築いてきた信頼関係を損なうことなく、円満な撤退を実現します。
既存の協力業者を継続利用できる柔軟な対応
貴社がこれまで付き合いのあった清掃業者や設備点検業者との関係を、可能な限り維持できるよう配慮します。これにより、管理品質の急激な変化を防ぎ、管理組合や居住者の不安を最小限に抑えることが可能です。
管理事業撤退費用面のサポート
事業撤退には、想定外の費用が発生することもあります。株式会社MIJでは、円滑な移行を支援するため、状況に応じて当面の人件費を補助するなど、撤退にかかる費用面のサポートも行っています。管理事業からの撤退は、ぜひ株式会社MIJにご相談ください。
まとめ:適切な手順でマンションの資産価値を守ろう
マンションの清掃業者変更は、面倒な手続きに思えるかもしれません。しかし、適切な知識を持って正しいステップを踏めば、管理組合主導で実現することが可能です。
- 現状分析:まずは契約書を確認し、現状の問題点を具体化する。
- 意思決定:清掃業者「のみ」の変更なら理事会決議が基本。ただし管理規約優先。
- 業者選定:2〜3社から詳細な見積もりを取り、価格と内容を比較する。
- 実行:解約通知期間を守り、新旧業者間の引き継ぎを確実に行う。
清掃は、マンションの美観と衛生環境を保ち、資産価値に直結する重要な業務です。現状に不満があるなら、諦めずに見直してみましょう。この記事が、あなたのマンションの価値をさらに高める一助となれば幸いです。
免責事項
本記事は、マンション管理に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言を行うものではありません。
業者変更の具体的な手続きを進めるにあたっては、必ずご自身のマンションの管理規約および管理会社との管理委託契約書の内容をご確認ください。
法改正や制度変更により、本記事の内容が最新の情報と異なる場合があります。重要な意思決定に際しては、弁護士やマンション管理士等の専門家にご相談されることをお勧めします。
参考資料
- [1] 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(所有者不明土地関係)の概要」
- [5] 国土交通省「マンション標準管理委託契約書」
- [6] e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」
- [7] 国土交通省「マンション標準管理規約」
島 洋祐
保有資格:(宅地建物取引士・管理業務主任者)不動産業界歴23年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

