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マンションの日常清掃と定期清掃の違いとは?役員が見るべきポイントを解説
マンション管理組合の役員に就任されたものの、管理会社から提示される見積書の「日常清掃」と「定期清掃」の項目を見て、その違いや費用の妥当性がわからずお困りではありませんか。これらは、マンションの美観と資産価値を維持するために不可欠な業務ですが、内容を正しく理解しないまま契約すると、コストが割高になったり、必要な清掃が行われなかったりするリスクがあります。
この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、日常清掃と定期清掃の根本的な違いから、法的根拠、見積書で確認すべき重要ポイントまでを徹底解説します。賢い相見積もりの進め方やコスト削減のヒントもご紹介しますので、最後までお読みいただくことで、管理会社と対等に話を進め、ご自身のマンションにとって最適な清掃計画を立てられるようになります。
日常清掃と定期清掃の基本的な違い
まず、日常清掃と定期清掃のそれぞれの目的と内容を整理しましょう。これらは車の「毎日の洗車」と「数年に一度のコーティング」のように、目的も手法も全く異なります。
日常清掃とは? – 快適な日常を維持するための清掃
日常清掃は、マンションのエントランスや廊下、ゴミ置き場など、居住者が日常的に利用する共用部分の美観と衛生を保つための作業です。主な目的は、日々の汚れを溜めないようにすることです。
- 主な作業内容: 掃き掃除、拭き掃除、ゴミの回収、エントランスガラスの指紋除去など
- 実施頻度の目安: 週に1回〜複数回(マンションの規模やグレードによる)
- 実施者: 主に管理会社の巡回スタッフや清掃パート従業員
日々の快適な暮らしに直結するため、居住者の満足度に大きく影響する業務です。
定期清掃とは? – 建物の資産価値を保全する専門清掃
定期清掃は、日常清掃では対応が難しい、蓄積された頑固な汚れを専門的な機材や洗剤を用いて除去する作業です。目的は、建物の美観を回復させ、建材の劣化を防ぎ、長期的な資産価値を保全することにあります。大規模物件や高級物件の場合、月1回程度の実施も考えられますが、一般的な目安は年1~2回程度です。
- 主な作業内容: 共用廊下の床の高圧洗浄・ポリッシャー洗浄、ワックス塗布、窓ガラス清掃、照明器具の清掃など
- 実施頻度の目安: 年1~2回程度
- 実施者: 管理会社が委託する専門の清掃業者
これらは専門知識と技術を要するため、費用も日常清掃とは別に見積もられるのが一般的です。
【一覧比較】日常清掃と定期清掃の違いが一目でわかる比較表
両者の違いをより明確に理解するため、以下の表にまとめました。見積書を比較検討する際の基礎知識としてご活用ください。表が表示されない場合、以下のテキストリストで内容を確認してください。
- 比較項目: 目的 | 日常清掃: 日々の美観・衛生維持 | 定期清掃: 資産価値の維持・保全、美観回復
- 比較項目: 頻度の目安 | 日常清掃: 週1回~複数回 | 定期清掃: 年1~2回程度
- 比較項目: 主な作業内容 | 日常清掃: 掃き拭き、ゴミ回収、簡易な汚れ除去 | 定期清掃: 床面洗浄、ワックス塗布、高圧洗浄、外壁・窓ガラス清掃
- 比較項目: 使用する道具 | 日常清掃: ほうき、モップ、雑巾など | 定期清掃: ポリッシャー、高圧洗浄機、専用洗剤など専門機材
- 比較項目: 主な実施者 | 日常清掃: 管理会社のスタッフ、パート等 | 定期清掃: 専門知識を持つ清掃業者
- 比較項目: 法的根拠(指針) | 日常清掃・定期清掃共通: マンション管理標準指針(国土交通省)に定められた維持管理業務の一環
- 比較項目: 費用計上 | 日常清掃: 管理委託費に含まれることが多い | 定期清掃: 別途見積もり、または年間の予算計画に基づき計上
清掃業務の法的根拠と管理組合の役割
マンションの清掃は、単なるサービスではありません。区分所有法やマンション管理適正化法に基づく、管理組合の重要な義務の一つです。
マンション管理適正化法と標準管理指針の位置づけ
国土交通省が定める「マンション管理標準指針」(2022年版)では、快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために「日常的又は定期的に建物、設備、外構の清掃を行うことが基本として必要」と明記されています。これは、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第3条で定められる共用部分の維持管理業務の一環として、マンション管理適正化法に基づき、管理組合が適切なマンション管理を行うための指針となるものです(出典:国土交通省「マンション管理標準指針」)。
つまり、適切な清掃業務の計画・実施は、法令に準拠した管理組合の責務と言えます。なお、2025年11月のマンション管理適正化法改正により、長期修繕計画と修繕積立金の基準が厳格化され、清掃費用を含む維持管理の適正性がより重視される予定です。詳細は国土交通省の公式情報を確認してください。
費用決定に必要な総会の決議要件(区分所有法)
日常清掃や定期清掃の契約内容や予算を決定・変更する場合、管理組合の総会での決議が必要です。建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第39条に基づき、管理規約に別段の定めがない限り、原則として「普通決議」で決定されます。
【普通決議の要件】
区分所有者および議決権の各過半数の賛成によって可決される決議。(出典:区分所有法 第39条)
新しい清掃計画の導入や、業者変更に伴う費用の変動は、必ず総会に諮り、区分所有者の合意形成を図る必要があります。
ここが重要!管理委託契約書・見積書で見るべき5つのポイント
管理会社から提示された見積書を鵜呑みにせず、中身を精査することが重要です。以下の5つのポイントを必ず確認しましょう。
ポイント1:作業範囲・対象箇所は具体的に記載されているか?
「共用部清掃」といった曖昧な表現ではなく、「エントランスホール」「〇階~〇階の共用廊下」「エレベーター内」など、清掃する場所が具体的に明記されているかを確認します。
(記載例)
日常清掃 範囲
・エントランスホール、メールコーナー:毎日
・共用廊下(全フロア):週2回(火・金)
・ゴミ置場(整理・水洗い):週3回(月・水・金)
このようなリスト形式で詳細が記載されている場合、契約内容の透明性が確保されます。表形式が表示されない場合、上記のテキストで代替してください。
ポイント2:「一式」表記になっていないか?
特に定期清掃の見積もりで「定期清掃費 一式」といった表記には注意が必要です。これでは、どのような作業にいくらかかっているのか全く分かりません。「床面ポリッシャー洗浄」「窓ガラス清掃(〇階まで)」など、作業内容ごとの単価と数量がわかる詳細な内訳を求めましょう。
ポイント3:実施頻度と年間スケジュールは明確か?
日常清掃の実施曜日や、定期清掃の年間実施計画(例:6月に床面洗浄、12月に窓ガラス清掃など)が明示されているかを確認します。スケジュールが曖昧だと、本当に契約通りに作業が行われているかを確認できません。
ポイント4:実施するのは誰か?(管理会社人員 or 専門業者)
日常清掃は管理会社のスタッフか、定期清掃はどの専門業者が行うのかも確認ポイントです。特に定期清掃は専門性が高いため、実績のある業者に委託しているかどうかが品質を左右します。
ポイント5:緊急時や仕様変更時の対応方法は定められているか?
台風後の緊急清掃や、居住者からの要望による清掃仕様の変更など、イレギュラーな事態への対応方法や費用負担について、契約書に記載があるかを確認しておくと安心です。
賢い相見積もりの進め方と注意点
管理委託費の見直しや業者変更を検討する際、相見積もりは有効な手段です。しかし、やみくもに多くの会社へ依頼するのは得策ではありません。
なぜ相見積もりは2〜3社が現実的なのか?
管理組合の役員様の中には「多くの会社から見積もりを取った方が安くなる」と考える方もいらっしゃいます。しかし、特に20戸~40戸程度の規模のマンションでは、5社も6社も相見積もりを依頼すると、組合側の比較検討の労力が過大になり、非効率的になる可能性があります。
その理由は、管理会社の見積もり作成には現地調査や外注調整、理事会との面談など一定の労力を要するため、多数の依頼が組合の負担を増大させるからです。
結論として、相見積もりは本気で検討できる2〜3社に絞って依頼するのが最も現実的です。これにより、各社が真剣に提案を作成してくれる可能性が高まり、組合側の比較検討の労力も軽減できます。
Q&A:日常清掃・定期清掃でよくある質問
ここでは、管理組合の役員様から寄せられることの多い質問にお答えします。
Q. 清掃の質が低い場合、どうすればいいですか?
A. まずは管理会社に連絡し、契約内容(仕様書)と現状が異なっている点を具体的に指摘しましょう。写真などで記録を残しておくと客観的な証拠になります。改善が見られない場合は、フロント担当者ではなく、その上長や支店長に相談します。それでも解決しない場合は、総会で清掃業者の変更や管理会社の変更を議題とすることも検討すべきです。
Q. 清掃費用を削減するポイントはありますか?
A. 清掃仕様の見直しが有効です。例えば、「日常清掃の頻度を週3回から2回に減らす」「定期清掃のワックスがけを2年に1回にする」など、マンションの利用状況や汚れ具合に応じて仕様を最適化することでコストを削減できる場合があります。ただし、過度なコストカットは建物の劣化を早め、結果的に資産価値を損なうリスクがあるため、長期的な視点で慎重に判断することが重要です。
【コスト削減】補助金活用という選択肢と注意点
清掃を含むマンションの維持管理において、自治体の補助金制度を活用できる場合があります。ただし、補助金制度は年度や自治体によって内容が大きく変わります。申請には複雑な書類作成や専門的な知識が求められることが多く、予算も限られています。利用を検討する際は、必ず最新の情報を自治体の公式ウェブサイトで確認するか、専門家に相談してください。
まとめ:適切な清掃業務でマンションの資産価値を守る
日常清掃と定期清掃は、どちらが優れているというものではなく、それぞれの役割を理解し、バランスよく計画・実施することがマンション管理の要です。
- 日常清掃: 日々の快適性を保つための「維持」の清掃。
- 定期清掃: 建物の寿命を延ばすための「保全」の清掃。
管理組合の役員として、この違いを正しく理解し、見積書の内容を精査することで、コストを最適化し、マンションの資産価値を長期的に守ることができます。本記事でご紹介したチェックポイントや相見積もりの注意点を参考に、より良いマンション管理を実現してください。
免責事項
本記事は、マンション管理における清掃業務に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の物件や個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。実際の契約や意思決定にあたっては、必ずご自身のマンションの管理規約や重要事項説明書をご確認の上、管理組合内で十分に協議してください。法令や補助金制度は改正される可能性があるため、最新の情報は各省庁や自治体の公式情報をご参照ください。
参考資料
- 国土交通省「マンション管理標準指針」「マンション標準管理規約」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000055.html
- e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000069
- e-Gov法令検索「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000069
島 洋祐
保有資格:(宅地建物取引士・管理業務主任者)不動産業界歴23年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

