マンション清掃改善の4ステップガイド:汚い共用部を根本解決する方法

管理組合、管理会社、清掃業者が連携して品質レビューを行う仕組みを図解。定期的なチェックと情報共有が、長期的な清潔さの維持に繋がることを示しています。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

「マンションの清掃が汚い…」何度伝えても改善されない共用部の汚れは、日々の大きなストレスになります。管理会社にクレームを入れても一時的な対応で終わってしまい、根本的な解決に至らないケースは少なくありません。なぜ、あなたのマンションは一向にキレイにならないのでしょうか。その原因は、感情的な不満を伝えるだけでは、管理会社が具体的に動くための「根拠」が不足しているからかもしれません。

この記事では、宅地建物取引士の視点から、マンションの清掃問題を根本から改善するための具体的な4つのステップを解説します。単なるクレームではなく、客観的な証拠と契約内容に基づいた建設的な交渉方法を身につけることで、管理会社を動かし、長期的に清潔な住環境を維持する仕組みを構築しましょう。明日から実践できるチェックリストや、管理会社に提出する改善要望書の文例も紹介します。

目次

背景知識:清掃問題を解決するための管理の仕組み

改善アクションを起こす前に、マンション管理の基本的な仕組みと用語を正しく理解しておくことが、交渉を有利に進める第一歩となります。

「管理費」と「管理委託費」は何が違う?

多くの人が混同しがちなこの二つの費用。その違いを理解することは、清掃費用の使われ方を把握する上で不可欠です。

  • 管理費: マンションの区分所有者(あなた)が、共用部分の維持管理のために管理組合へ支払う費用です。
  • 管理委託費: 管理組合が、マンションの管理業務(事務、清掃、設備点検など)を管理会社へ委託するために支払う費用。「管理費」の中から支払われます。

つまり、清掃の品質は、管理組合が管理会社とどのような内容・金額で「管理委託契約」を結んでいるかに大きく左右されます。私たちが普段支払っている「管理費」が、どのように「管理委託費」として清掃業務に充当されているのか、その流れを意識することが重要です。なお、管理委託費の目安は物件の規模や立地により異なり、一般的に月額1戸あたり10,000円前後が参考値となりますが、詳細は専門家にご相談ください。

なぜ「一式見積もり」は危険なのか?

清掃業者からの見積もりで「清掃業務一式 〇〇円」という記載を見たことはないでしょうか。これは非常に危険なサインです。どの場所を、どの頻度で、どのような仕様で清掃するのかが不明確なため、後々のトラブルの原因となります。
国土交通省が示す「マンション標準管理委託契約書」(最終改正:令和7年確認)では、清掃業務の内容を具体的に定める「仕様書」を添付することが推奨されています。

(記載例)清掃仕様書
・対象:エントランスホール床
・作業内容:除塵、モップ拭き
・頻度:毎日1回
・仕様:床材に適した洗剤を使用し、拭きムラが残らないように仕上げる。

契約内容が曖昧だと、清掃の品質が低下しても「契約違反」を問うことが難しくなります。必ず詳細な仕様が明記されているか確認しましょう。

【4ステップ】マンションの「汚い」を根本から改善する手順

感情的に不満をぶつけるのではなく、冷静かつ論理的に、以下の4つのステップで進めていきましょう。

Step 1: 「汚い」を証拠に変える客観的評価チェックリスト

まずは「いつも汚い」という主観的な不満を、「いつ、どこが、どのように汚れているか」という客観的な事実に変える作業から始めます。以下のチェックリストを参考に、写真と日時を記録しましょう。これが管理会社と交渉する際の強力な武器となります。清掃の分類は業界標準に基づき、日常清掃、巡回清掃、定期清掃に分けています。清掃範囲外の箇所や契約伝達不足が品質低下の原因となる場合があるため、契約書との整合性を確認してください。なお、特別清掃(例: 引越直後や災害対応等)は契約外の場合があります。

頻度 場所 チェック項目 契約整合性確認(仕様書準拠)
日常清掃 エントランス・風除室 ガラス扉の指紋や拭きムラ、床のゴミ・砂埃、ポスト周辺の汚れ 仕様書の日常清掃項目と照合
廊下・階段 床のゴミ・髪の毛、手すりのホコリやべたつき 仕様書の日常清掃項目と照合
エレベーター 操作盤の指紋、鏡の汚れ、床のゴミ 仕様書の日常清掃項目と照合
ゴミ置場 ゴミの散乱、悪臭、扉や床の汚れ 仕様書の日常清掃項目と照合
巡回清掃(週次相当) 共用部全般 巾木や窓サッシの溝のホコリ、壁面の手垢、クモの巣 仕様書の巡回清掃項目と照合
照明器具 カサのホコリや虫の死骸 仕様書の巡回清掃項目と照合
定期清掃(月次相当) 共用部全般 排水溝の詰まりや汚れ、換気扇フィルターの汚れ 仕様書の定期清掃項目と照合
植栽 雑草の繁茂、枯葉の放置 仕様書の定期清掃項目と照合
マンション共用部 清掃品質チェックリスト(一例)

表が表示されない場合: 日常清掃 – エントランス: ガラス扉の指紋等 / 廊下: 床のゴミ等 / エレベーター: 操作盤の指紋等 / ゴミ置場: ゴミの散乱等。巡回清掃(週次相当) – 共用部全般: 巾木のホコリ等 / 照明器具: カサのホコリ等。定期清掃(月次相当) – 共用部全般: 排水溝の汚れ等 / 植栽: 雑草の繁茂等。各項目で契約仕様書との整合性を確認。

Step 2: 管理会社を動かす!効果的な改善要求の伝え方

証拠が揃ったら、管理会社へ改善を要求します。ここでも感情的にならず、ビジネスライクに進めるのがコツです。

  1. 事実ベースで報告: 電話やメールで、Step1で記録した「いつ、どこが、どのように汚れているか」を具体的に伝えます。「いつも汚い」ではなく、「〇月〇日〇時、エントランスのガラス扉に指紋が多数付着(写真添付)」のように報告します。清掃の担当形態(常駐管理員または派遣清掃員)による違いを考慮し、契約仕様書との整合性を指摘してください。
  2. 改善要望書を提出: 一度伝えても改善されない場合は、理事会を通じて「改善要望書」を提出するのが効果的です。要望書には、記録した事実(写真やリスト)を添付し、清掃仕様書に照らしてどの基準が満たされていないか、改善計画と回答期限(例:2週間以内)を明記するよう求めます。「マンション標準管理規約」や「標準管理委託契約書」に記載されている清掃仕様との整合性を確認する項目を追加し、管理規約が優先されることを念頭に置いてください。
  3. 継続的にモニタリング: 回答が得られたら、その改善策が実行されているか、品質が維持されているかを定期的にチェックし、理事会などで共有します。必要に応じて、清掃員との対話(管理会社経由)をオプションとして活用し、現場の伝達不足を解消してください。

Step 3: それでもダメなら根本解決へ。清掃業者・契約の見直し

一時的な改善で終わってしまう、管理会社の対応が依然として不十分な場合は、契約そのものに問題がある可能性があります。より踏み込んだ根本解決策を検討しましょう。

現在の清掃委託契約書を確認する

理事会を通じて、管理会社と締結している「管理委託契約書」および「清掃業務仕様書」を入手し、以下の点を確認します。

  • 契約で定められた清掃の頻度・範囲・仕様は、現状のマンションの規模や利用状況に対して適切か。
  • 仕様書の内容が具体的か(「一式」になっていないか)。

清掃業者の変更・相見積もりの注意点

現在の契約内容に問題がある場合や、管理会社の対応に限界が見える場合は、清掃業者を直接選定したり、管理会社ごと変更したりする選択肢があります。その際、複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」が重要ですが、注意点があります。

  • 相見積もりは2〜3社が現実的: 5社も6社も見積もりを依頼すると、業者側から「冷やかし」「手間ばかりかかる組合」と敬遠される恐れがあります。見積もり作成には現地調査や仕様の精査、清掃会社・設備点検・消防・警備などの外注先との打ち合わせ、理事会面談など多大な労力がかかるため、本気度の高い2〜3社に絞って依頼するのが、良質な提案を引き出すコツです。組合側の要望が強すぎると管理会社から敬遠される可能性があるため、適正な競争原理を働かせつつ、無理な値引き交渉は品質低下を招くリスクを避けましょう。
  • 「安さ」だけで選ばない: 金額の安さだけで選ぶと、品質低下や作業範囲の抜け漏れに繋がるリスクがあります。仕様の明確さ、品質管理体制(例: 清掃業務の品質評価制度の導入状況。ただし、これは清掃業務の品質を評価するもので、管理会社そのものを評価するものではありません)、担当者の対応力を総合的に評価しましょう。委託のメリットとして、建物劣化の前兆検知も含まれるため、これを考慮してください。

業者変更に必要な法的手続き

清掃業者の変更や契約更新は、管理組合の「重要な契約」にあたる場合があります。手続きはマンションの管理規約によって異なります。

  • 総会決議が必要な場合: 区分所有法第48条では、重要な決定は総会の決議で決めるのが原則です。業者変更が「普通決議」(区分所有者および議決権の各過半数)の対象となることが多いです。ただし、管理規約に別段の定めがある場合は、規約による。
  • 理事会決議で可能な場合: 国土交通省の「マンション標準管理規約」(最終改正:令和7年確認)第48条では、業者との契約締結は理事会の業務とされています。多くのマンションでは、これに基づき理事会決議で進めることが可能です。ただし、必ずご自身のマンションの管理規約を確認し、標準規約より現行規約が優先される場合があります。区分所有法第39条の普通決議の原則も参考にしてください。

補助金・助成金の活用について

清掃改善に伴う契約見直しで費用負担が生じる場合、各自治体で実施されている管理組合支援制度(補助金など)の活用を検討できます。例えば、マンション管理適正化法に基づく補助制度が適用される場合がありますが、制度の内容は年度や地域ごとに異なるため、必ずお住まいの自治体の公式サイトで最新情報を確認してください。補助金申請に関する手続きは管理組合の判断と責任において行われるため、管理会社が代行する場合はその業務範囲と費用について明確な合意が必要です。通常の管理会社は手間を嫌がる傾向がありますが、積極的に申請代行を提案する会社もあります。

Step 4: 【予防策】二度と「汚い」と言わせない仕組みづくり

問題が解決したら、再発防止の仕組みを作ることが肝心です。

  • 月次品質レビュー会議の導入: 管理組合、管理会社、清掃業者の三者で、定期的に清掃品質をチェックする場を設けます。
  • 長期的な衛生基準を管理規約に盛り込む: 「マンション標準管理委託契約書」(最終改正:令和7年確認)に準拠した詳細な清掃仕様書を契約に盛り込むことをルール化するなど、業者や担当者が変わっても品質が維持される仕組みを目指します。清掃委託契約を締結する際は、この契約書を参照し、その内容に準拠することが重要です。

FAQ:よくある質問

Q. 管理会社がどうしても動いてくれない場合はどうすればいいですか?

A. 理事会や個人からの要請に応じない場合、最終手段として総会で「管理会社の変更」を決議する方法があります。これは最も強力な手段ですが、多大な労力を伴うため、まずは本記事で紹介したステップを着実に踏むことが重要です。

Q. 清掃員の方に直接注意してもいいですか?

A. トラブルの原因となる可能性があるため、原則として避けるべきです。清掃員は管理会社や清掃会社の指示に基づいて作業しています。要望や指摘は、必ず管理会社を通じて伝えるようにしましょう。

Q. 住民のマナーの悪さが汚れの原因になっている気もします。

A. ポイ捨てやゴミ出しルールの不徹底など、住民のマナーが原因の場合は、清掃だけでは解決しません。理事会を中心に、掲示板や回覧板でマナー向上の啓発活動を行うことも、管理組合の重要な役割です。

まとめ:感情論から「仕組み」の改善へ

マンションの清掃が汚いという問題は、単に「もっとキレイにしてください」と伝えるだけでは解決しません。
今回ご紹介したように、

  1. 客観的なチェックリストで現状を「見える化」する
  2. 記録した証拠を基に、管理会社へ建設的に改善を要求する
  3. 契約内容や業者選定という根本原因に踏み込む
  4. 再発しないための仕組みを構築する

というステップを踏むことが、快適な住環境を取り戻すための最も確実な道筋です。感情的な不満を、論理的な改善アクションに変え、あなたのマンションを本来あるべき清潔で快適な空間にしていきましょう。具体的な清掃基準や契約内容に基づいた改善要求が、管理会社との健全な関係構築に繋がります。

免責事項

本記事は、マンション管理に関する一般的な情報提供を目的として作成されており、個別の案件に対する法的な助言ではありません。個別の契約内容の解釈や法的な判断については、必ず管理組合の顧問弁護士、マンション管理士等の専門家にご相談ください。また、法令や各種制度は改正される可能性があるため、本記事執筆時(2026年3月)の情報に基づき、常に最新の情報をご確認ください。


参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士・管理業務主任者)不動産業界歴23年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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