マンション清掃の相場は?管理組合が費用を見直す4ステップガイド

相見積もりを出しすぎることのデメリットを図解。5社以上に声をかけると管理会社の受注意欲が低下し、提案の質が下がるリスクがある一方、2-3社に絞ることで丁寧な現地調査と本気の提案を引き出しやすくなるバランスを表現しています。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

マンション管理組合の役員になると、必ず議題に上がるのが「コスト削減」です。中でも、毎月支出される管理委託費、特に「清掃費」は、その妥当性が問われやすい項目の一つです。しかし、そもそもマンション清掃の相場はいくらなのでしょうか?

「今の清掃費は高すぎないか?」その疑問を解消するため、この記事では宅地建物取引士の視点から、マンション清掃の相場に関する考え方、費用の内訳、そして管理組合が主体となって費用を見直すための具体的なステップを解説します。

結論から言うと、マンション清掃に「戸数あたり〇円」という単純な相場は存在しません。費用は建物の規模や形状、清掃の仕様によって大きく変動します。本記事を読めば、ご自身のマンションの清掃費が適正かを判断するための客観的な基準と、管理会社との交渉や業者選定に役立つ実践的な知識が身につきます。資産価値を守るための、賢いコスト管理の一歩を踏み出しましょう。

目次

マンション清掃の相場は「戸数単価」では決まらない

多くの方が「マンション清掃の相場」と聞いて、戸数あたりの単価をイメージするかもしれません。しかし、実際にはそのような単純な計算式で費用が決まることはありません。清掃費用は、建物の規模や構造、清掃の頻度や内容(仕様)によって個別に見積もられるのが一般的です。

【重要】共用部清掃と専有部ハウスクリーニングの違い

まず大前提として、本記事で扱う「マンション清掃」とは、エントランスや廊下、階段といった「共用部」の清掃を指します。これは、個人の住戸内(専有部)を清掃する「ハウスクリーニング」とは全く異なります。

Webサイトなどで見かける「2LDK全体清掃 〇〇円」といった料金は、あくまで専有部のハウスクリーニング料金です。管理組合が管理会社に委託する共用部の清掃費用とは、算出根拠も契約形態も全くの別物であると理解してください。この違いを認識することが、適正な相場感を養う第一歩です。

本記事で参照する相場データについて: 本記事の相場情報は、公表されている業界データ、国土交通省調査結果、および管理委託実務に基づいています。ただし、地域、建物形状、管理形態(管理会社委託 vs. 自主管理)により相場は大きく変動します。本記事の数値は参考値であり、ご自身のマンション固有の見積もり結果を最優先してご判断ください。

共用部清掃費の基本的な算出モデル

要素 内容
人件費 作業員の人数 × 作業時間 × 時間単価
機材・薬剤費 ポリッシャー等の専門機材、ワックス、洗剤などの費用
会社経費 交通費、事務所経費、利益など

※表形式が表示されない場合、テキストリストで代替: 人件費 – 作業員の人数 × 作業時間 × 時間単価 / 機材・薬剤費 – ポリッシャー等の専門機材、ワックス、洗剤などの費用 / 会社経費 – 交通費、事務所経費、利益など。

例えば、同じ50戸のマンションでも、廊下が内廊下か外廊下か、ゴミ置き場の清掃頻度はどうするか、植栽の水やりは含むのかといった「仕様」によって作業時間や必要な人員が変わるため、当然費用も変動します。単純な戸数単価で比較できないのはこのためです。日常清掃単価(㎡あたり)は16~35円、定期清掃単価(㎡あたり)は32~60円が2024年の業界目安ですが、2026年3月時点の人件費上昇を考慮し、個別見積もりで確認してください。

清掃費用の種類と法的根拠を知る

マンションの清掃は、その内容によって「日常清掃」「定期清掃」「特殊清掃」の3つに大別されます。これらは費用負担の根拠や実施の判断プロセスも異なるため、管理組合として正しく理解しておくことが重要です。清掃業務の委託やその内容変更は、マンション管理の重要な意思決定です。業者変更など重要な契約変更は、区分所有法に基づき、集会(総会)での普通決議(区分所有者および議決権の各過半数)が必要となるのが原則です(出典:建物の区分所有等に関する法律 第三十九条)。ただし、ご自身のマンションの管理規約で実施要件や決議方法が異なる場合、規約の定めが優先されます。

①日常清掃:日々の美観維持(管理費から拠出)

ご自身のマンションの管理規約で実施要件や決議方法が異なる場合、規約の定めが優先されます(区分所有法第39条)。

日常清掃は、マンションの美観や衛生環境を保つために、日常的に行われる清掃です。

  • 作業内容の例: エントランスの掃き拭き、共用廊下・階段の掃き掃除、ゴミ置き場の整理・水洗い、手すりや集合ポストの拭き上げなど。
  • 頻度の目安: 週2〜5回程度。
  • 費用負担: 建物の通常の管理に要する経費として、区分所有者が納める「管理費」から支出されるのが一般的です。

②定期清掃:専門機材による定期的清掃(管理費から拠出)

ご自身のマンションの管理規約で実施要件や決議方法が異なる場合、規約の定めが優先されます(区分所有法第39条)。

定期清掃は、日常清掃では落としきれない汚れを除去するため、専門的な機材や技術を用いて定期的に行われます。

  • 作業内容の例: 共用廊下やエントランスの床洗浄・ワックスがけ(ポリッシャー使用)、窓ガラス清掃、照明器具の清掃など。
  • 頻度の目安: 月に1回、3ヶ月に1回、半年に1回など。
  • 費用負担: 日常清掃と同様に、通常の管理業務の一環として「管理費」から支出されることがほとんどです。

③特殊清掃:突発的な汚れへの対応(別途決議・費用徴収の場合も)

ご自身のマンションの管理規約で実施要件や決議方法が異なる場合、規約の定めが優先されます(区分所有法第39条)。

特殊清掃は、台風後の落ち葉除去、排水管の高圧洗浄、鳥のフン害による汚損箇所の清掃・消毒など、通常想定されない突発的な事態に対応するための清掃です。

  • 作業内容の例: 嘔吐物の処理、落書きの除去、排水管の詰まり解消など。
  • 頻度の目安: 不定期(必要に応じて実施)。
  • 費用負担: 軽微なものであれば管理費で対応することもありますが、高額になる場合や計画的な実施が必要な場合は、総会の決議を経て「修繕積立金」から支出されたり、別途費用を徴収したりするケースもあります。清掃が管理委託契約に含まれる場合と独立発注する場合で、単価構造が大きく変わります。

国土交通省データで見る管理費と清掃費

公的なデータから、自分たちのマンションの管理費水準がどのあたりに位置するのかを客観的に把握してみましょう。これは清掃費の妥当性を考える上での重要な参考情報となります。

マンション規模別に見る管理費の平均額

国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、管理費の月額平均(1戸あたり)はマンションの規模によって異なります。

マンションの総戸数規模 管理費(月額/戸あたり・駐車場等使用料からの充当額を含む)
20戸以下 17,831円
21~30戸 15,920円
31~50戸 15,286円
51~75戸 15,313円
76~100戸 14,561円
101~150戸 14,796円
151戸以上 14,792円
(出典:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」より作成)

※表形式が表示されない場合、テキストリストで代替: 20戸以下 – 17,831円 / 21~30戸 – 15,920円 / 31~50戸 – 15,286円 / 51~75戸 – 15,313円 / 76~100戸 – 14,561円 / 101~150戸 – 14,796円 / 151戸以上 – 14,792円。

このデータから、小規模なマンションほど戸あたりの管理費が高くなる傾向が見て取れます。これは、エレベーターの保守点検費用など、戸数にかかわらず一定にかかる費用を少ない戸数で分担するためです。なお、本データは2018年時点のもので、2026年3月時点では物価上昇により変動している可能性があります。最新の調査結果をご確認ください。

管理委託費に占める「清掃費」の割合目安

管理費の中から管理会社に支払われる「管理委託費」のうち、清掃費が占める割合はどれくらいでしょうか。
公的な統計で明確な割合は示されていませんが、実務上の目安として、管理委託費全体の20~30%程度が清掃費(日常清掃・定期清掃)に充てられているケースが多いとされますが、公的統計では明確な割合は示されていません。ご自身の管理委託契約書で確認することが重要です。

例えば、日常清掃は月1.2万〜4万円、定期清掃は1回2万〜8万円が2024年の目安ですが、2026年3月時点では人件費上昇により上振れする可能性があります。

【実践】管理組合が清掃費を見直す4ステップ

現在の清掃費が高いと感じた場合、具体的にどのような行動をとればよいのでしょうか。以下の4つのステップに沿って進めるのが効果的です。

STEP1:現在の「管理委託契約書・仕様書」を確認する

まずは現状把握です。管理会社と締結している管理委託契約書と、その別紙である「仕様書」を取り寄せ、清掃に関する項目を精査します。

  • チェックポイント:
    • 日常清掃、定期清掃の作業内容、範囲、頻度は明記されているか?
    • 「清掃業務一式」のように、内容が不明確な記載になっていないか?
    • 作業時間や作業員の人数は規定されているか?

STEP2:清掃内容が実態と合っているか精査する

次に、仕様書に記載された内容が、マンションの規模や利用実態、住民の満足度と見合っているかを確認します。

  • 過剰な例: 住民の出入りが少ないにもかかわらず、毎日のようにエントランスのポリッシャーがけが仕様に含まれている。
  • 不足な例: ゴミ出しの日にはゴミ置き場がすぐ汚れるのに、清掃が週1回しか入らず衛生状態が悪い。

理事会だけでなく、住民アンケートなどを実施して意見を集めるのも有効です。

STEP3:2〜3社から相見積もりを取得する

現在の仕様書を基に、他の管理会社や清掃専門会社から見積もりを取得します。これが価格の妥当性を判断する最も直接的な方法です。この際、2〜3社に絞って依頼するのが現実的です。その理由は次章で詳しく解説します。

相見積もり時の留意点(2026年版): 近年、人件費・物価上昇により清掃単価は年度ごとに変動します。前年度の見積もり結果と比較する場合は、物価上昇率(特に地域の最低賃金上昇)を考慮してください。複数社の見積もり取得時は、『作業内容・頻度・範囲が全社で同一であること』を確認してください。

STEP4:補助金・助成金の活用を検討する

あまり知られていませんが、自治体によってはマンションの管理品質向上や環境改善に関する補助金・助成金制度を設けている場合があります。例えば、東京都の場合、管理計画認定制度に基づく支援や、防鳥ネット設置などの環境改善事業に対する補助金が存在します。詳細は、当該自治体の住宅課またはマンション支援センターにお問い合わせください。

【注意】補助金制度は流動的です
補助金や助成金は、年度や自治体によって制度が大きく変わります。例えば「2026年度東京都〇〇区の制度」といったように、対象期間と地域が限定されます。常に最新の情報を当該自治体の担当部署に確認することが不可欠です。2026年度の各自治体補助金制度の詳細は、本稿作成時点(2026年3月)では確定していない可能性があります。必ず該当自治体の住宅課または住宅マンション支援センターに2026年度の最新要領をご確認ください。

多くの管理会社は申請手続きの手間から提案に消極的ですが、中には積極的に申請代行を行う専門家も存在します。コスト削減を考えるなら、こうした選択肢も視野に入れるとよいでしょう。

マンション清掃に関するよくある質問(FAQ)

Q.結局、マンション清掃の費用相場はいくらですか?
A.「戸あたり〇円」といった画一的な相場はありません。費用は建物の規模、構造(内廊下/外廊下など)、清掃の仕様(作業内容・頻度)によって大きく異なるため、個別の見積もりで判断する必要があります。国土交通省の調査による管理費の平均額などを参考に、ご自身のマンションの水準を相対的に把握することから始めましょう。
Q.日常清掃と定期清掃の違いは何ですか?
A.日常清掃は、掃き掃除やゴミ出しなど、日々の美観を維持するための作業で、週に数回行われます。一方、定期清掃は、床の機械洗浄やワックスがけなど、専門的な機材を用いて月に1回や数ヶ月に1回といった頻度で行う大掛かりな清掃です。どちらも通常は管理費から支出されます。
Q.清掃費の見直しには総会の決議が必要ですか?
A.清掃の仕様を少し変更する程度であれば理事会決議で済む場合もありますが、清掃業者を変更したり、契約金額が大きく変わったりするような重要な契約変更は、管理組合の総会における普通決議(区分所有者および議決権の各過半数の賛成)が必要になるのが一般的です。ご自身のマンションの管理規約をご確認ください。

【プロの視点】清掃費の見積もりと管理会社選定のヒント

清掃費の見直しを成功させるには、ただ見積もりを取るだけでなく、管理会社側の事情も理解した上で、賢く交渉を進める「実務のヒント」が重要になります。

相見積もりはなぜ「2〜3社」が適切なのか?

コスト削減に熱心なあまり「5社も6社も見積もりを取ろう」と考える役員の方もいますが、これは得策ではありません。現実的には2〜3社に絞るのが最も効果的です。

なぜなら、管理会社が1つのマンションの管理委託費(清掃費を含む)を正確に見積もるには、多大な労力がかかるからです。

  • 現地調査(複数回)
  • 清掃、エレベーター、消防点検など各専門業者との打ち合わせ・見積もり取得
  • 会計状況のチェック
  • 理事会との面談(複数回)

特に20〜40戸程度の中小規模マンションでは、あまりに多くの会社を競合させると、1社あたりの受注確率が下がるため、管理会社は「手間がかかる割に実入りが少ない」と判断し、見積もりの提出自体を見送るか、本気の提案をしてこない可能性があります。組合側の要望が強すぎると、管理会社から敬遠される恐れもあります。熱意のある提案を引き出すためにも、依頼先は厳選しましょう。管理組合側では、現地調査の候補日時を複数社同日に調整するなどの負担軽減策を取ることで、円滑に進められます。

見積もり精度を高める情報提供リスト

精度の高い見積もりをスムーズに得るために、管理組合側で以下の情報を準備しておくと、管理会社から喜ばれ、交渉も円滑に進みます。

  • 現在の管理委託契約書・仕様書(清掃の範囲、頻度がわかるもの)
  • 建物の図面(各階平面図など)
  • 長期修繕計画書
  • 直近の総会議案書・決算報告書
  • 現地調査の候補日時(複数社を同日に案内できるよう調整すると親切)

管理会社変更や「事業撤退」も視野に入れる場合の選択肢

清掃費の見直しが、現在の管理会社との契約そのものを見直すきっかけになることもあります。また近年では、後継者不足などを理由に管理事業から撤退する中小の管理会社も増えています。

もしあなたのマンションの管理会社が事業撤退を検討し始めたら、管理組合は新たな委託先を探すという緊急の課題に直面します。

【解決策】管理会社の撤退を支援する専門サービス
管理会社の突然の撤退は、管理組合にとって大きな混乱を招きます。こうした事態に対応するため、撤退を検討している管理会社を支援し、管理組合との引き継ぎを円滑に行う専門サービスも存在します。管理会社の撤退に備えるため、複数社の競合見積もり取得や専門家への相談が有効です。詳細は地域の弁護士会や管理組合支援センターにご相談ください。

これは、撤退する会社だけでなく、急な変更でサービス低下を懸念する管理組合にとっても、管理の安定性を保つための有効な選択肢となり得ます。

まとめ:適正なマンション清掃で資産価値を維持しよう

マンション清掃の相場について、単純な戸数単価では測れないこと、そして費用を見直すための具体的なステップを解説してきました。

  • 相場は存在しない: 清掃費は建物の仕様や清掃内容で決まる個別見積もりが基本。
  • 現状を把握する: まずは管理委託契約書と仕様書を確認し、内容を精査する。
  • 比較検討は賢く: 相見積もりは2〜3社に絞り、精度の高い提案を引き出す。
  • 行動を起こす: 費用の見直しは、コスト削減だけでなく、管理の質を高め、マンション全体の資産価値を維持・向上させる重要な管理組合活動です。

この記事を参考に、ぜひご自身のマンションの清掃費について、理事会で議論を始めてみてください。適正なコストで質の高いサービスを受けることが、快適で価値あるマンションライフに繋がります。

免責事項

本記事は、マンション管理に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の物件や個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。実際の契約や意思決定にあたっては、必ずご自身のマンションの管理規約や契約条項をご確認の上、必要に応じて専門家にご相談ください。法令や補助金制度等は改正される可能性があるため、最新の情報をご確認いただくようお願いいたします。本記事は特定の企業を推奨するものではありません。


参考資料

  • 国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」
    https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000058.html
  • e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」
    https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069
  • 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」
    https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000057.html

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士・管理業務主任者)不動産業界歴23年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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