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マンション管理組合の役員が知るべき「管理者管理方式」での管理会社選定ガイド:実績のある信頼できるパートナーを客観的に選ぶ5つのステップ
マンション管理組合の役員に就任したものの、専門知識がなく、どうやって信頼できる管理会社を選べばよいか悩んでいませんか。特に「管理者管理方式」を採用する場合、管理会社の実績を客観的に見極めることが、住民の大切な資産を守る上で極めて重要です。しかし、ネット上には情報が溢れ、どの基準で選べば良いのか判断が難しいのが実情です。
この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、管理者管理方式で実績のある管理会社を選ぶための具体的な5つのステップを徹底解説します。区分所有法やマンション管理適正化法といった法令に基づき、失敗しないための評価基準や、管理会社側の事情も踏まえた賢い相見積もりの方法を学びます。この記事を読めば、客観的な根拠を持って、あなたのマンションに最適なパートナー企業を選定する道筋が明確になるでしょう。
なぜ今、管理会社の「実績」を客観的に見極める必要があるのか?
マンション管理組合の役員のなり手不足や高齢化、そして建物の高経年化が進む現代において、管理会社の専門的な能力に頼る場面はますます増えています。このような状況で、単に知名度や営業担当者の人柄だけで管理会社を選んでしまうと、将来的に大きな問題に発展するリスクがあります。
- 資産価値の低下: 不適切な管理は建物の劣化を早め、マンションの資産価値を直接的に下げてしまいます。
- 住民間のトラブル: 清掃不備や滞納金の放置など、管理対応の不備が住民間の不満やトラブルの原因となります。
- 不透明な会計: 「一式」で計上された不明瞭な会計報告は、管理費の使途を曖昧にし、組合財産の毀損につながりかねません。
これらのリスクを避けるためには、管理会社の「実績」を感情論ではなく、客観的なデータや法令遵守の観点から厳しく評価する視点が不可欠です。信頼できるパートナーを選ぶことは、管理組合役員の最も重要な責務の一つと言えるでしょう。
管理者管理方式とは?区分所有法における位置づけと特徴
管理会社を選ぶ前に、まずは自分たちのマンションが採用する管理の形態を正確に理解しておく必要があります。ここでは「管理者管理方式」の法的な位置づけと特徴を解説します。
管理者管理方式の仕組みと根拠法
「管理者管理方式」とは、管理組合の総会で選任された「管理者」(個人または法人)が、管理規約に基づき、管理業務の全部または一部を外部の専門業者(管理会社)に委託してマンションを管理する方式を指します。これは第三者管理方式の一形態です。
注意点として、「管理者管理方式」という用語は区分所有法に直接定義されていません。あくまで、区分所有法第25条で定められた「管理者」が、その権限に基づいて管理事務を第三者に委託する運用形態を指す実務上の呼称です。
管理者の選任や権限は、区分所有法およびマンションの管理規約によって定められます。管理会社への業務委託の決定は、原則として区分所有法第39条で定められた管理組合総会の「普通決議(区分所有者および議決権の各過半数)」によって行われます。ただし、管理規約に別段の定めがある場合は、この限りではありません(出典:区分所有法第3条、第25条、第39条、第49条)。
※ 2025年3月に閣議決定された区分所有法改正案は、2026年4月の施行を予定しており、管理業者が管理者となる場合の利益相反対応(自己取引事前説明義務化)が盛り込まれています。今後の管理会社選定では、この新ルールへの対応準備状況も確認ポイントになります。
自主管理・理事会方式との違い
マンションの管理方式は、大きく以下の3つに分類されます。それぞれの特徴を理解し、自分たちのマンションがどの形態に当てはまるか確認しましょう。
| 管理方式 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 管理者管理方式 | 選任された管理者が、管理会社へ業務を委託する。管理組合は管理者を通じて間接的に監督する。 | 専門性が高い。 役員の負担が軽減される。 | 管理会社への依存度が高くなる。 コストがかかる。 |
| 理事会方式(全部委託) | 理事会が主体となり、管理会社へ業務を委託する。理事会が直接管理会社を監督する。 | 組合の意向を反映しやすい。 | 役員の業務負担が大きい。 |
| 自主管理 | 管理会社に委託せず、管理組合(理事会役員)が全ての管理業務を直接行う。 | 管理コストを抑えられる。 | 役員の負担が非常に大きい。 管理の専門性が不足しがち。 |
特に新築分譲マンションでは、販売会社が暫定的に管理者となり、関連の管理会社に委託しているケースが多く見られます。しかし、これはあくまで暫定的なもの。最初の管理組合総会で、組合員自らの意思で正式な管理会社を選定・承認することが重要です。業務範囲は共有部に限定され、滞納対処も明確化されます。これは管理者の権限(区分所有法第26条)や理事会の監督権(同法第48条)に基づき、規約で定めることが可能です。
【完全ガイド】実績のある管理会社を選ぶ5つのステップ
ここからは、実績のある信頼できる管理会社を、客観的な基準で選ぶための具体的な5つのステップを解説します。
STEP1: 候補会社のリストアップ【公的情報源の活用】
まず、比較検討するための候補となる管理会社をリストアップします。知人からの紹介やインターネット検索も一つの方法ですが、信頼性の高い公的な情報源を活用するのが確実です。
国土交通省が運営する「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」を利用すれば、法令に基づき登録されたマンション管理業者を検索できます(マンション管理適正化法第44条)。これは選定の第一歩として必須の確認事項です。この段階で、3〜5社程度の候補をリストアップしましょう。
STEP2: 客観的な「実績」の評価基準を設ける
次に、リストアップした会社を評価するための客観的な基準を設定します。感情やイメージに流されず、以下の項目を必ず確認しましょう。
- 法令遵守状況:
- 国土交通省への登録: 前述のシステムで登録の有無と行政処分歴を確認。
- 管理業務主任者の配置: マンション管理適正化法第12条に基づき、専任の管理業務主任者が受託物件数に応じた法定数を満たしているか。社員数に対する有資格者の割合も確認すると、会社の専門性が見えてきます。管理業務主任者証に記載の登録番号を、マンション管理センターのウェブサイトで照会する手順で確認可能です(マンション管理適正化法)。
- 遂行能力・実績:
- 同規模・同地域の管理実績: あなたのマンションと似た条件の物件を管理した経験があるか。管理受託棟数や委託仕様書の統一度を指標に。
- 管理計画認定制度のサポート実績: 認定取得を支援した実績は、計画性や提案力の高さを示す指標になります。
- 過去3年間の苦情処理実績: 国土交通省ガイドラインに基づき、苦情件数を確認。
- 財務の健全性:
- 財務状況の確認: 会社の安定性を測るため、信用調査会社(帝国データバンクや東京商工リサーチなど)のレポートを取得したり、決算公告を確認したりすることが望ましいです。株式会社であれば会社のウェブサイトなどで決算書・貸借対照表を入手可能。経営が不安定な会社は避けるべきです。経営破綻時は契約解除条件を明記した条項を確認(マンション管理適正化法)。
STEP3: 賢い相見積もりの実践法【2〜3社が最適な理由】
候補を絞り込んだら、相見積もりを依頼합니다。ここで重要なのは、むやみに多くの会社に見積もりを依頼しないことです。
| (宅建士の視点) 管理会社にとって、見積もり作成は大きな労力を伴います。現地調査、清掃や設備点検などの外注先との調整、理事会との面談など、契約に至らなくても相当なコストが発生します。組合側の要望が強すぎると、管理会社から敬遠される恐れがあります。特に20〜40戸程度の小規模マンションでは、管理会社側も採算性をシビアに見るため、5社も6社も相見積もりを取ろうとすると、「本気度が低い」と判断され、有力な会社ほど辞退する傾向があります。本気で検討していることを示すためにも、相見積もりは厳選した2〜3社に絞るのが、良い提案を引き出すための現実的な戦略です。依頼する際は、管理規約、長期修繕計画、過去の総会議事録、直近の決算書などを事前に提供し、全社に同じ条件で見積もりを作成してもらうことが公正な比較の前提となります。 |
STEP4: 契約書と見積書の比較検討【「一式見積もり」は内訳明示を求める】
提出された見積書と契約書案を比較検討します。ここで最も注意すべきは「一式見積もり」です。
総額だけが記載された「一式」の見積もりは、何にいくらかかっているのかが不透明で、将来的なコスト管理や見直しの妨げになります。必ず以下の項目別に内訳が明記されているかを確認しましょう。
- 管理事務費(フロント担当者の人件費など)
- 管理員業務費
- 清掃業務費
- 建物・設備管理業務費(エレベーター、消防設備などの保守点検費)
委託費は共有部清掃、管理員配置等、項目ごとに明确化を求めます。また、契約書の内容は、国土交通省のウェブサイトで公開されている「標準管理委託契約書」(特に第三者管理方式用のひな形)を基準にチェックします。組合に一方的に不利な条項(例:不自然に長期の契約期間、曖昧な解約条件など)がないか、契約締結前に業務内容明示、費用内訳、報告義務、自動更新なし、経営破綻解除可能かを確認してください。特に、2026年4月施行予定の改正区分所有法では管理業者が管理者となる場合の利益相反行為に関する事前説明義務が強化されるため、その新ルールへの対応状況も確認しておくとよいでしょう。
STEP5: 総会での決議と契約締結
最終候補となる管理会社を1〜2社に絞り込み、理事会としての推奨案をまとめます。その上で管理組合の総会に議案として上程し、組合員の承認を得ます。
総会では、なぜその会社を選んだのか、選定プロセスと評価基準を明確に説明することが、合意形成のために不可欠です。複数の候補を比較した評価表などを提示すると、透明性が高まり、組合員の理解を得やすくなります。
なお、2025年10月にマンション標準管理規約が改正され、一部の決議要件が緩和されるなどの変更がありました。契約内容や今後の総会運営に影響する可能性があるため、最新の規約内容も確認しておきましょう。
承認が得られたら、契約内容を最終確認し、管理組合の代表者(管理者または理事長)が記名押印して、正式に契約を締結します。
契約後に後悔しないためのモニタリング体制の構築
管理会社選びは、契約して終わりではありません。むしろ、そこからが本当のスタートです。契約後に後悔しないために、管理会社の業務を適切にモニタリングする仕組みを構築しましょう。
定期報告と評価の仕組みづくり
区分所有法第43条では、管理者(管理会社)に管理事務に関する報告義務が定められています。これを根拠に、契約書には定期的な業務報告(月次・四半期など)を義務付ける条項を盛り込み、理事会でその内容を毎回チェックする体制を作ることが重要です。
- 会計報告: 収支状況、管理費等の滞納状況と督促対応
- 業務実施報告: 清掃状況、設備点検の結果、不具合の有無
- 住民からの要望・クレーム: 内容と対応状況、進捗
- 理事会からの指示事項: 実施状況と結果
これらの報告内容を理事会で評価し、問題があれば改善を要求します。良好なコミュニケーションを保ちつつも、是々非々の態度で業務を監督することが、管理の質を維持する鍵となります。モニタリングには四半期/半年報告、改善策提出、マンション管理士起用を検討(区分所有法第49条)。
問題発生時の対応と管理会社変更の検討プロセス
万が一、業務品質の低下や契約不履行などの問題が発生した場合は、まず書面で具体的な改善策と期限を明記して提出を求めます。それでも改善が見られない場合は、管理会社の変更も視野に入れなければなりません。
管理会社の変更は大きな労力を伴いますが、住民の資産を守るための最終手段です。その際は、再び本記事で解説したステップに立ち返り、慎重に次なるパートナーを選定するプロセスを進めることになります。
よくある質問(FAQ)
Q. 管理計画認定制度や管理適正評価制度は会社の評価に使えますか?
A. 間接的な参考にはなりますが、直接会社の優劣を示すものではないため注意が必要です。
- 管理計画認定制度: 自治体が管理組合の運営状況を認定する制度です(マンション管理適正化法第5条の2)。この認定取得をサポートした実績が多い会社は、計画性や提案力が高いと推測できます。
- マンション管理適正評価制度: 国土交通大臣指定法人(例:(一社)マンション管理士会連合会など)が、マンションそのものの管理状態を5段階で評価する制度です。
どちらの制度も評価対象は管理会社自体ではありません。あくまで「その会社が担当するマンションで、良い管理状態を実現できているか」という間接的な評価指標として参考にしましょう。両制度の連動は直接明記されていませんが、管理会社の支援能力を測定する参考となります。
Q. 管理会社の財務状況はどうやって確認すればいいですか?
A. いくつかの方法があります。一番確実なのは、帝国データバンクや東京商工リサーチといった信用調査会社から企業レポートを取得することです。費用はかかりますが、マンションという高額な資産の管理を任せる相手の与信を調査する上では有効な手段です。また、株式会社であれば決算公告を開示している場合があるため、会社のウェブサイトなどを確認してみるのも一つの手です。
Q. 小規模マンション(20〜40戸)でも積極的に提案してくれますか?
A. 大手管理会社の中には、採算性の観点から小規模マンションの受託に消極的なケースもあります。しかし、地域に根差した中堅の管理会社や、小規模物件を専門に扱う会社も存在します。むしろ、画一的なサービスになりがちな大手よりも、小回りの利く中堅企業の方が、個別の事情に合わせた柔軟な提案をしてくれる可能性があります。STEP1のリストアップの段階で、企業の規模にこだわらず、幅広く候補を探してみることをお勧めします。
まとめ:信頼できるパートナー選びがマンションの資産価値を守る
管理者管理方式において実績のある管理会社を選ぶことは、単なる業務委託先の決定ではありません。それは、マンションの資産価値を維持・向上させ、住民が快適に暮らせる環境を共に創り上げていく「パートナー」を選ぶ行為です。
この記事で解説した5つのステップを参考に、客観的な基準で管理会社を評価してください。
- 公的情報源で候補をリストアップする
- 法令遵守・実績・財務など客観的な基準で評価する
- 相見積もりは2〜3社に絞り、本気度を伝える
- 「一式見積もり」を避け、標準契約書を基準に精査する
- 総会でプロセスを説明し、合意形成を図る
そして、契約後も油断せず、適切なモニタリングを続けること。この一連のプロセスを誠実に実行することが、管理組合役員に課された重要な責務であり、ひいては全区分所有者の利益を守ることにつながるのです。
免責事項
本記事は、マンション管理会社の選定に関する一般的な情報提供を目的として作成されており、個別の事案に対する法的アドバイスを行うものではありません。実際の契約や交渉にあたっては、弁護士やマンション管理士などの専門家にご相談ください。また、法令や制度は改正される可能性があるため、常に最新の情報をご確認いただくとともに、個別の管理委託契約書の内容が最優先されることをご理解ください。
参考資料
- 区分所有法(e-Gov法令検索) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069
- マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)(e-Gov法令検索) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC1000000149
- 国土交通省「マンション標準管理規約」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
- 国土交通省「マンション標準管理委託契約書」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000053.html
- 国土交通省「マンション管理の新制度(管理計画認定制度等)」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000070.html
- 国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」 https://etsuran.mlit.go.jp/TAKKEN/
島 洋祐
保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

