2025年春から夏にかけて、マンション管理分野は大きな転換期を迎えました。法改正や業界の透明化、管理評価の“見える化”など、管理組合・居住者双方に影響する重要な動きが相次いでいます。
マンション関連法の大改正と実務対応
3月4日、国土交通省・法務省は「区分所有法」「マンション管理適正化法」「マンション建替え円滑化法」などの改正案を閣議決定し、国会に提出しました。
背景には、築40年以上のマンション増加、所有者の高齢化・所在不明化、管理組合の担い手不足など、全国的なマンションストックの“3つの老い”が深刻化している現状があります。
5月14日には衆議院国土交通委員会で改正案が可決、5月23日に参議院本会議で成立。施行は2026年4月1日(一部除く)が予定されています。
主な改正ポイント
改正点 | 内容 |
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決議要件の緩和 | 建替えや一括売却の決議要件を「5分の4以上」から「4分の3以上」に緩和。合意形成のハードルが下がり、老朽化マンションの再生や用途変更が進めやすくなる。 |
所有者不明問題への対応 | 所在不明の区分所有者を集会決議の母数から除外できる制度を創設。不明所有者が多いマンションでも意思決定が可能に。 |
管理不全建物への対処 | 所有者不明や管理不全の専有部分・共用部分の管理制度を新設。自治体の関与や監督権限も強化。 |
管理規約・書類のデジタル化 | 管理規約の保管・閲覧のデジタル化を認め、管理の効率化を図る。 |
一括売却・用途変更 | 建物・敷地の一括売却や用途変更(ホテル・商業施設等への転用)が多数決で可能となり、マンションの「出口戦略」が多様化。 |
管理適正化支援法人制度 | 管理組合の運営支援などを行う民間法人を登録できる新制度を創設に期待。 |
管理業者管理方式の制度化 | 管理会社が管理者となる場合の契約・説明義務、利益相反行為の説明義務などを明確化。 |
6月~7月には、国交省による標準管理規約見直し検討会や説明会の開催、マンション管理センターによる改正Q&Aの発刊など、現場の実務対応や周知徹底も加速しています。
管理・修繕現場の透明化と評価制度の普及
■ 大規模修繕工事を巡る不祥事
- 談合疑惑で公正取引委員会が立入検査(3月4日)
長谷工リフォームなど20社超が対象となり、設計コンサルまで含めた大規模な調査が行われました。大規模修繕工事の公正な競争と透明性確保が社会的課題となっています。 - “なりすまし”事件の発覚(7月上旬報道)
首都圏マンションで工事会社社員が住民になりすまし修繕委員会に潜入、自社受注を誘導する事例が複数発覚。不正防止のため、管理組合規約の整備、住民間のコミュニケーション強化、外部専門家の活用が推奨されています。
■ 管理適正評価制度の普及と“見える化”推進
- SUUMOでの評価結果掲載開始(2025年夏~)
2025年夏から、住宅情報サイト「SUUMO」の物件ライブラリーで「マンション管理適正評価制度」の評価結果が掲載開始されました。
この制度は、管理体制・建築設備・管理組合収支・耐震性・生活関連の5分野を専門家が30項目でチェックし、6段階(無星~五つ星)で評価・公開するものです。
2025年3月末時点で登録件数は8,250件に達し、都市部を中心に着実に普及が進んでいます。
3. その他の最新トピック
- 昇降機の維持管理・地震対策説明会(2025年7月~2026年1月)
国土交通省は全国8都市で管理組合等を対象に昇降機維持管理・地震対策説明会を開催。災害時対応力の底上げを図っています。 - 大規模修繕工事費助成や省エネ改修補助(東京都など)
高断熱窓やエレベーター機能追加、太陽光発電設備設置などの省エネ・防災改修への助成が拡充され、管理組合の負担軽減とストックの質向上が進められています。 - 理事のなり手不足・カスタマーハラスメント対策
理事なり手不足や住民からの過度な要求(カスタマーハラスメント)対策として、組織運営支援や基本方針策定が進行中。業界団体によるガイドライン策定や外部専門家の活用促進も重要なテーマです。
まとめ
2025年春~夏は、法制度の大改正と管理現場の透明化・評価制度の普及が進み、マンション管理の「新時代」の幕開けとなりました。管理組合・管理会社は改正内容を正しく理解し、管理体制の見直し・強化が求められています。今後も国や自治体、業界団体による現場支援が拡充される見込みです