管理計画認定制度の申請方法を5ステップで解説|理事必見の完全ガイド

マンション管理計画認定制度の申請を成功させるための5つの重要ポイントをまとめた図解。「公的制度の理解」「総会決議と事前確認」「オンライン申請の原則」「規約等の事前見直し」「計画的な準備」がアイコンと共に示され、記事の核心を振り返ることができます。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

マンションの資産価値を維持・向上させる上で、適切な管理は不可欠です。近年、その管理レベルを公的に示す指標として「管理計画認定制度」が注目されています。しかし、いざ申請しようとしても「何から手をつければ良いのか」「どんな書類が必要なのか」と悩む管理組合の担当者も多いのではないでしょうか。

この記事では、宅地建物取引士の視点から、マンション管理組合の理事など実務担当者の方へ向けて、管理計画認定制度の申請方法を5つの具体的なステップで分かりやすく解説します。制度の基本から、混同しやすい類似制度との違い、認定を受けるための基準、費用、そしてプロが教えるつまずきやすいポイントまで網羅的に解説します。この記事を読めば、申請準備から認定取得までの全体像を掴み、スムーズに手続きを進めることができるでしょう。

管理計画認定制度とは?目的と認定取得による4つのメリット

管理計画認定制度は、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に基づき、地方公共団体(市区町村など)がマンションの管理計画を認定する公的な制度です。適切な管理計画を持つ管理組合を公的に認めることで、マンション管理の適正化を促すことを目的としています(出典:国土交通省)。認定の有効期間は5年間です(出典:横浜市)。

認定を取得することで、管理組合には主に以下の4つのメリットが期待できます。

  1. 市場での評価向上:管理状態が良好であることが公的に示され、売買時に購入希望者へのアピールポイントとなり、資産価値の維持・向上に繋がりやすくなります。
  2. 金利優遇措置:住宅金融支援機構が提供する金融措置(例:【フラット35】、マンション共用部分リフォーム融資など)において、金利の引き下げを受けられる場合があります(出典:国土交通省)。
  3. 固定資産税の減額:一定の要件を満たす長寿命化工事が行われた認定マンションは、固定資産税の減額措置を受けられる場合があります(出典:国土交通省)。
  4. 防災・減災効果:認定基準には、災害時の対応マニュアル整備などが含まれる場合があり、組合員の防災意識向上や、万が一の際の円滑な対応に繋がります。

【専門家コメント】
この制度は、これまで目に見えにくかった管理組合の日々の努力が、公的な「お墨付き」として可視化される絶好の機会です。認定取得を目標にすることで、管理組合内の意識統一や、長期的な修繕計画の見直しなど、管理体制を一層強化するきっかけにもなります。

【重要】類似制度との違いを1分で理解

管理計画認定制度を検討する際、多くの方が「マンション管理適正評価制度」と混同しがちです。両者は目的も評価主体も異なるため、違いを正しく理解しておくことが重要です。

管理計画認定制度
(本記事の対象)
マンション管理適正評価制度
評価対象
(何を評価するか)
マンションの**管理計画**
(長期修繕計画など、未来の計画)
マンションの**管理状態全般**
(運営、会計、建物など、現在の状態)
評価主体
(誰が評価・認定するか)
地方公共団体(市区町村など)民間の業界団体
根拠法律に基づく**公的な「認定」**民間基準に基づく**「評価・登録」**

簡単に言えば、「管理計画認定制度」は行政による未来の計画のチェック、「マンション管理適正評価制度」は民間による現在の管理状態のチェックと覚えておきましょう。なお、両方の制度を同時に申請することも可能です。

あなたのマンションは対象?認定を受けるための5つの基準【チェックリスト付】

認定を受けるためには、国の定める基準を満たす必要があります。ここでは主要な5つの項目をチェックリスト形式でご紹介します。ご自身のマンションが当てはまるか確認してみましょう(出典:マンション管理センター)。

【管理計画認定 必須基準チェックリスト】

  • 1. 管理組合の運営
    • [ ] 管理者等(一般的には理事長を指します)が定められている。
    • [ ] 監事が置かれている。
    • [ ] 年に1回以上、定期的に総会(集会)が開催されている。
  • 2. 管理規約
    • [ ] 管理規約が整備されている。
    • [ ] 緊急時(災害・事故など)の専有部分への立ち入りについて定めがある。
    • [ ] 修繕等の履歴情報を管理することについて定めがある。
  • 3. 組合の経理
    • [ ] 管理費と修繕積立金が明確に区分して経理されている。
    • [ ] 修繕積立金会計から他の会計へ充当されていない。
    • [ ] 直近の事業年度末における修繕積立金の滞納額が、全体の1割以内である。
  • 4. 長期修繕計画
    • [ ] 長期修繕計画が国のガイドラインに沿って作成されている。
    • [ ] 長期修繕計画に基づいて修繕積立金の額が設定され、総会で決議されている。
  • 5. その他
    • [ ] 都道府県等のマンション管理適正化指針に適合している。
    • [ ] 市区町村が条例で定める独自の基準(例:耐震診断の実施など)を満たしている。

【重要】自治体ごとの「上乗せ基準」に注意
国の基準に加えて、申請先の市区町村が独自の基準(例:防災マニュアルの整備、耐震診断の実施義務など)を設けている場合があります。申請前には、必ずマンションが所在する市区町村のウェブサイトで「申請の手引」などを確認してください。

申請の全体像|準備から認定通知までのフロー

申請の準備を開始してから認定通知を受け取るまでの期間は、管理組合の準備状況や申請先の地方公共団体の審査状況によって異なります。計画的に進めることが成功の鍵となります。全体の流れは以下の通りです。

  1. 管理組合の総会決議:認定申請を行うことについて組合内で合意形成。
  2. 専門家への事前確認依頼:マンション管理士などに基準適合性を確認してもらう。
  3. 事前確認適合証の取得:専門家から適合のお墨付きをもらう。
  4. 地方公共団体への認定申請:オンラインシステムを通じて申請。
  5. 審査:地方公共団体による内容審査。
  6. 認定通知書の受領:審査通過後、認定通知が届く。

管理計画認定制度の申請方法を5ステップで徹底解説

ここからは、実際の申請手続きを5つのステップに分けて具体的に解説します。

ステップ1:【最も重要】管理組合内での合意形成と総会決議

認定申請は、管理組合の意思として行う必要があります。そのため、最初のステップは総会での決議です。

  • 決議事項
    • 管理計画の認定申請を行うこと
    • (必要に応じて)長期修繕計画の作成・変更
  • 決議要件
    認定申請を行うには、総会での決議が必要です。決議の要件はご自身のマンションの管理規約で定められており、その規約が優先されますので、必ず規約を確認してください。

この総会議事録は、申請時の必須書類となるため、決議内容を正確に記録しておくことが極めて重要です。

ステップ2:専門家への「事前確認」依頼と依頼先の選び方

認定申請は、地方公共団体に直接行うのではなく、事前に専門家の「事前確認」を受ける必要があります。この事前確認を経て発行される「事前確認適合証」がなければ申請できません。依頼先は主に以下のパターンがあります(出典:名取市、横浜市)。

  1. 管理会社に依頼する:最も一般的な方法です。日頃から付き合いのある管理会社(または所属のマンション管理士)に依頼します。
  2. マンション管理士に依頼する:管理会社とは別に、第三者のマンション管理士に確認を依頼したい場合に選択します。
  3. 日本マンション管理士会連合会に依頼する:マンション管理士の紹介を受けたい場合などに利用します。
  4. マンション管理センターに直接申請する:管理組合自身で書類を完璧に揃え、直接センターの確認を受けるパターンです。専門家のサポートがないため難易度は高いですが、費用を抑えられます。

多くの管理組合では、手間や確実性を考慮してパターン1または2を選択します。また、2023年4月からは、これらの専門家が発行した「事前確認適合証」をもとに、行政書士が代理で申請手続きを行うことも可能です(出典:マンション管理センター)。

ステップ3:必要書類一覧と準備のポイント

事前確認および本申請には、以下の書類が必要です(出典:東京都都市整備局など)。申請はオンラインが原則のため、これらをデータ(PDF等)で準備します。

書類カテゴリ具体的な書類名準備のポイント
決議関係認定申請に関する総会議事録の写しステップ1で解説した決議内容が正確に記載されているか確認。
規約関係管理規約の写し認定基準で求められる条項(緊急時立入り等)が含まれているか確認。
経理関係直近事業年度の事業報告書、決算書(貸借対照表、収支計算書)総会で承認済みのものを用意。滞納額が1割以内の証明も必要。
計画関係長期修繕計画書の写し国のガイドラインに適合し、総会で決議されたもの。
その他申請者の確認書類(理事長の本人確認書類など)申請先の自治体の手引で必要な書類を確認。
※上記は主な書類です。詳細は必ず申請先の地方公共団体の手引きをご確認ください。

特に、管理規約に認定基準を満たす条項がない場合や、長期修繕計画が古い場合は、まずそれらを変更・更新するための総会決議が必要となり、準備に時間がかかるため注意が必要です。

ステップ4:管理計画認定手続支援システムでのオンライン申請手順

書類の準備と専門家による事前確認が完了したら、いよいよ申請です。申請は、公益財団法人マンション管理センターが運営する「管理計画認定手続支援システム」を利用してオンラインで行うのが原則です(出典:マンション管理センター)。紙での申請は例外的な対応となる自治体がほとんどです。

  1. 専門家(事前確認者)がシステム上で事前確認を完了させ、「事前確認適合証」を発行します。
  2. 管理組合(または事前確認者)がシステムにログインし、申請先の地方公共団体を選択します。
  3. 必要事項を入力し、準備した書類データをアップロードします。
  4. システム上で申請手数料の支払い手続きを行います。
  5. 申請ボタンをクリックして完了です。

手続きの詳細は、システムのマニュアルや事前確認を依頼する専門家にご確認ください。

ステップ5:地方公共団体による審査と認定通知の受領

オンラインで申請が完了すると、データが地方公共団体に送付され、審査が開始されます。審査期間は自治体によって異なります。

審査の過程で、書類の不備や内容の確認事項があれば、自治体から連絡があります。指示に従い、速やかに追加書類の提出や説明を行いましょう。無事に審査が完了すると、「認定通知書」が交付され、手続きはすべて完了となります。

申請にかかる費用と期間の目安

申請には、いくつかの費用が発生します。事前に予算を確保しておきましょう。

  • 事前確認手数料:依頼する専門家によって異なります。
    • 管理会社:管理委託契約の内容による
    • マンション管理士:5万円〜10万円程度が目安
  • 管理計画認定手続支援サービス利用料:1申請あたり 10,000円(税込)(出典:マンション管理センター)
  • 地方公共団体への申請手数料自治体によって異なります。金額は申請先の地方公共団体によって異なるため、必ず公式サイト等で確認してください(例:横浜市 3,900円+郵送料、東京都 4,100円(オンライン申請の場合))。

合計で、約6万円〜12万円程度が費用の目安となります。これに加えて、長期修繕計画の見直しなどをコンサルタントに依頼する場合は、別途その費用が発生します。

【実務者向け】申請でつまずきやすい5つのポイントとプロの対策

ここでは、実際の申請サポート現場でよく見られる、つまずきやすいポイントとその対策を解説します。

  1. 総会議事録の記載が不十分
    • NG例:「長期修繕計画を承認した。」
    • OK例:「別紙『長期修繕計画書(2025年4月1日版)』の内容、およびこれに基づく修繕積立金の額を、2026年4月より1戸あたり月額平均15,000円とすることについて、賛成多数で承認可決した。」
    • 対策:どの計画書を、いくらの積立金額で決議したのか、誰が読んでも具体的にわかるように議事録を作成しましょう。
  2. 管理規約に必須条項が欠けている
    • NG例:古い標準管理規約のままで、災害時の専有部立入り規定がない。
    • 対策:申請準備の初期段階で、現行の規約と最新の標準管理規約や認定基準を照らし合わせ、不足条項があれば、規約改正の総会を先に開催するスケジュールを組みましょう。
  3. 修繕積立金の滞納額が基準を超えている
    • 対策:滞納額が全体の1割を超えている場合、申請はできません。まずは滞納者への督促や、場合によっては法的措置など、滞納解消に向けた具体的なアクションを優先する必要があります。
  4. 長期修繕計画の内容が古い
    • 対策:10年以上前に作成された計画は、現在の物価や工事費を反映していない可能性が高いです。認定申請を機に、専門家を交えて計画の見直しを行うことを強く推奨します。
  5. 相見積もりの取りすぎで管理会社に敬遠される
    • 対策:管理委託費の見直し等で透明性を高める相見積もりは重要ですが、過度な要求は注意が必要です。特に小〜中規模のマンションで5社も6社も見積もりを依頼すると、各社の多大な労力(現地調査、仕様書作成、協力会社との折衝等)から敬遠されることがあります。現実的には2〜3社に絞って誠実に対応することが、良いパートナーシップを築く上で効果的です。

認定を受けた後の手続き(更新・変更)で注意すべきこと

認定は一度受けたら終わりではありません。継続的な管理が求められます。

  • 更新:認定の有効期間は5年間です。期間満了後も認定を継続したい場合は、有効期間が満了する前に更新申請を行う必要があります。
  • 変更:認定期間中に長期修繕計画や管理規約など、認定を受けた管理計画の内容に変更があった場合は、変更の申請が必要です。

認定を維持するためにも、日頃から適切な組合運営と計画の見直しを怠らないようにしましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 認定を受けると、マンションの資産価値は必ず上がりますか?

A1. 認定取得が資産価値の上昇を保証するものではありません。しかし、管理状態が良好であることの客観的な証明となり、売買市場においてプラスの評価を受ける一因となることは大いに期待できます。

Q2. 管理会社が事前確認に非協力的です。どうすればよいですか?

A2. まずは管理会社に認定制度のメリットを伝え、協力を要請することが第一です。それでも難しい場合は、ステップ2で紹介した「マンション管理士に依頼する」など、第三者の専門家に相談する選択肢もあります。

Q3. 自分たちのマンションだけで申請準備をするのは不安です。

A3. マンション管理士などの専門家は、申請準備のサポートから事前確認まで一貫して支援してくれます。費用はかかりますが、手続きの確実性や管理組合の負担軽減を考えると、専門家の活用は非常に有効な手段です。お住まいの地域のマンション管理士会などに相談してみましょう。

まとめ:管理計画認定制度の申請は計画的な準備が成功のカギ

本記事では、マンション管理計画認定制度の申請方法について、制度の概要から具体的な5つのステップ、費用、そして実務上の注意点まで詳しく解説しました。

  • 管理計画認定制度は、適切な管理を行う組合を公的に認める制度
  • 申請には、総会決議、専門家による事前確認が必須
  • 手続きはオンラインシステムが原則
  • 認定基準を満たすため、規約や長期修繕計画の見直しが必要な場合がある
  • 成功の鍵は、自治体の基準を確認し、計画的に準備を進めること

管理計画認定制度への取り組みは、単に認定を得るだけでなく、ご自身のマンションの管理体制を改めて見つめ直し、将来にわたって資産価値を維持・向上させていくための重要なプロセスです。この記事が、管理組合の皆様の一助となれば幸いです。

【免責事項】
本記事は、2025年10月30日時点の情報に基づき、マンション管理計画認定制度に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の案件に対する法的な助言を行うものではありません。掲載内容には万全を期しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。申請手続きを行う際は、必ず国土交通省や申請先の地方公共団体が公表する最新の情報、およびご自身のマンションの管理規約等をご確認の上、必要に応じてマンション管理士等の専門家にご相談ください。

参考資料

  • 国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」, https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
  • 公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」, https://www.mankan.or.jp/nintei/
  • 横浜市 建築局「マンション管理計画認定制度について」, https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/toshiseibi/suishin/ms-portal/nintei.html
  • 東京都都市整備局「マンションポータルサイト」, https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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