マンション管理費が高いなら見直しを!成功事例5選と削減を実現する5ステップ

マンション管理費の見直しにかかる期間の目安を示すタイムライン図。「準備開始」から「総会決議」まで、一般的に半年から1年程度を要することが示されており、読者が計画的なスケジュールを立てる上で参考になります。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

マンションの管理費が「高い」と感じていませんか?管理組合の役員としてコスト削減は重要な課題ですが、安易な見直しは管理品質の低下を招き、マンションの資産価値を損なうことにもなりかねません。

近年の法改正(マンション管理適正化法など)により、管理組合の運営の透明性や計画性が一層求められています。このような状況下で管理費を適正化することは、単なるコスト削減にとどまらず、組合の「経営力」を高め、時代の要請に応える重要な取り組みです。

この記事では、宅地建物取引士の視点から、マンション管理費の見直しを成功させるための具体的な手順と法的な注意点を解説します。品質を維持しながらコストを適正化し、住民の誰もが納得できる見直しを実現するための知識を身につけ、理事会での提案や管理会社との交渉にお役立てください。

目次

なぜマンション管理費は高くなる?主な内訳と構造的な原因

管理費の見直しを始める前に、まずはその内訳と、なぜ割高になりがちなのかという構造を理解することが重要です。

管理費の主な内訳と用語の整理

まず、混同されがちな用語を正確に理解しましょう。

  • 管理費:日常的な共用部分の維持管理(清掃、点検、光熱費など)のために、区分所有者が管理組合へ毎月支払う費用です。
  • 管理委託費:管理費の中から、管理組合が管理会社へ業務(事務、管理員、清掃、設備管理など)の対価として支払う費用を指します。管理委託費は管理費の一部です。
  • 修繕積立金:将来の大規模修繕工事のために積み立てるお金で、管理費とは目的も法的根拠も異なります。

管理費は、一般的に以下の項目で構成されています。

  • 管理委託費:管理会社に支払う費用。事務管理、管理員業務、清掃業務、建物・設備管理業務などが含まれます。
  • 設備保守点検費:エレベーター、機械式駐車場、消防設備、給排水設備などの定期的な保守・点検費用。
  • 共用部分の光熱費:共用廊下の照明、エレベーターの動力、共用水栓などの電気・水道料金。
  • 共用部分の保険料:火災保険や賠償責任保険など。
  • その他:植栽の維持管理費、町内会費、小規模な修繕費用など。

これらの費用構造は、国土交通省が公開する「マンション総合調査」でもデータが示されており、ご自身のマンションと比較する際の参考になります。

「気づかぬうちに割高に」なりやすい2つの理由

特に新築分譲時から管理会社が変わっていないマンションでは、管理費が市場価格より割高になっているケースが少なくありません。その主な理由は以下の2つです。

  1. 初期設定価格のまま据え置かれている
    新築時の管理委託費は、分譲会社系列の管理会社によって、競争原理が働きにくい状況で設定されることがあります。その後、物価や市況が変化しても契約内容が見直されないまま長期間経過し、市場価格との乖離が大きくなることがあります。
  2. 特定の業者による寡占状態
    エレベーターや機械式駐車場などの設備保守はメーカー系列の会社が、CATVは地域の事業者が独占的に契約していることが多くあります。競争相手がいない、または少ないため、価格交渉が難しい構造になっている場合があります。

管理費見直しによる削減アプローチの例

具体的な成功事例の金額は市況や物件の状況によって大きく変動するため、ここではどのようなアプローチで削減が実現されるのか、代表的な例を紹介します。
※これらのアプローチは過去の事例に基づくものですが、近年の人件費・光熱費の高騰や技術水準(リモート点検など)の変化により、削減効果や方法は大きく異なる可能性があります。あくまで考え方の参考としてご活用ください。

【アプローチ例1】設備保守契約の一括見直し

エレベーターや機械式駐車場などの保守契約を、従来のメーカー系列から、様々なメーカーの機種に対応できる独立系の業者に切り替えることで、コスト削減につながるケースがあります。品質や緊急時対応、サービス内容を十分に比較検討することが重要です。

【アプローチ例2】エネルギーコストの最適化

電力自由化に伴い、電力会社との契約を見直したり、新電力会社に切り替えたりするだけで、電気料金の削減が期待できます。さらに、共用部の照明をLED化することで消費電力を大幅に削減できます。LED化には自治体の補助金を活用できる場合もあります。

【アプローチ例3】管理委託費の仕様見直しと価格交渉

現在の管理会社との間で、清掃頻度や管理員の勤務時間といった業務仕様そのものを見直すことで、コストを適正化できる場合があります。また、他社の見積もりを参考に、現在の管理会社と協力的な姿勢で価格交渉を行うことも有効な手段です。

管理費見直しを成功させる5つのステップ

管理費の見直しは、思いつきで進めるのではなく、計画的に手順を踏むことが成功の鍵です。

Step1:現状把握|管理委託契約書と仕様書を精査する

まず、管理組合として保管している「管理委託契約書」と、その別紙である「管理仕様書」を隅々まで確認します。「誰が、何を、どのくらいの頻度で、いくらで実施しているのか」を正確に把握することが全ての出発点です。

最重要:契約書の解約条項・違約金特約を確認する

管理委託契約書を精査する際、以下の特約に必ず目を通すことが重要です:

  • 解約予告期間(例:3ヶ月前通知が必須)
  • 違約金・解除料(契約期間内の解約の場合)
  • 現契約の「自動更新条項」の有無と更新予定日

これらの条件が現契約に定められている場合は、それが法的に最優先されます。見直しプロセスを開始する前に、これらの条項の解釈についてマンション管理士などの専門家に相談することを強く推奨します。

Step2:方針決定|理事会で削減目標と品質維持ラインを合意する

現状を把握したら、理事会で「どの項目を削減対象とするか」「どの程度の削減を目指すか」、そして最も重要な「これ以上は譲れない管理品質のラインはどこか」を議論し、合意形成を図ります。「安かろう悪かろう」を避けるため、品質維持の基準を最初に決めることが不可欠です。

Step3:比較検討|2〜3社から相見積もりを取得する

削減対象とする業務について、現在の管理会社以外の業者からも見積もり(相見積もり)を取得します。この際、Step1で確認した現在の「管理仕様書」を提示し、同条件で見積もりを依頼することで、客観的な比較が可能になります。信頼できそうな2〜3社に絞って依頼するのが現実的です。

Step4:交渉|現管理会社と協力関係を築き協議する

他社の見積もりを材料に、現在の管理会社と交渉します。ここでのポイントは、高圧的な態度ではなく「組合の財産を守るため、コストの適正化にご協力いただきたい」という姿勢で臨むことです。長年のパートナーである管理会社との信頼関係を維持することは、長期的に見て組合の利益につながります。

Step5:総会決議|住民への丁寧な説明と正規の手続き

管理会社との交渉で削減案がまとまったら、最終的に管理組合の総会で決議を得る必要があります。管理費の変更や管理会社の変更は、区分所有者の生活に直結する重要な事項です。

管理会社の変更を伴う場合、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第39条第1項に基づき、原則として「区分所有者及び議決権の各過半数」による普通決議が必要です。

(集会の決議)
第三十九条 集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。
(出典:建物の区分所有等に関する法律)

〈重要〉ご自身のマンションの管理規約に「特別多数決議が必要」と定められている場合、その規約が法的に優先されます。必ず管理規約をご確認ください。

費目別!管理費の具体的な削減ポイントと注意点

ここでは、特に削減効果が期待できる費目と、見直しの際のポイントを解説します。

①管理委託費:業務仕様の見直しが鍵

管理委託費の削減は、単なる値引き交渉だけでなく、業務仕様そのものを見直すことで実現できる場合があります。例えば、「過剰な清掃頻度を適正化する」「管理員の受付時間を短縮する」といった方法です。ただし、これらの変更は住民の利便性に直結するため、アンケートを実施するなどして慎重に進める必要があります。

②設備保守費:独立系業者への切り替えを検討

エレベーターや機械式駐車場などの保守は、メーカー系列の会社と、様々なメーカーの機種を保守できる「独立系」の会社があります。それぞれのメリット・デメリットを比較し、組合の方針に合った業者を選ぶことが重要です。

メーカー系保守会社 独立系保守会社
メリット ・純正部品の迅速な調達力
・メーカーとしての技術的安心感
・最新情報へのアクセス
・コストが安い傾向にある
・複数メーカーの機種に一括対応可能
・契約内容の柔軟性が高い場合がある
デメリット ・コストが割高になる傾向
・契約の自由度が低い場合がある
・部品調達に時間がかかる可能性(近年は改善傾向)
・会社の規模や技術力にばらつきがある

③電気料金:電力会社の切り替えとLED化の合わせ技

共用部の電気料金は、電力自由化により、契約する電力会社を切り替えるだけで削減できる可能性があります。複数の電力会社から見積もりを取り、シミュレーションを行うことをお勧めします。さらに、共用廊下やエントランスの照明をLEDに交換することで、消費電力を大幅に削減できます。初期費用はかかりますが、長期的に見れば大きなメリットがあります。

④保険料・その他:一括契約の見直し

マンションで加入している火災保険や賠償責任保険も、見直しの対象です。複数の保険代理店から見積もりを取り、補償内容と保険料が現在のマンションの状況に適しているかを確認しましょう。不要な特約を外したり、免責金額を調整したりすることで、保険料を削減できる場合があります。

【重要】見直しで失敗しないための3つの注意点

コスト削減を急ぐあまり、重要な視点が抜け落ちてしまうことがあります。ここでは、見直しで失敗しないための3つの重要な注意点を解説します。

注意点1:過度な相見積もりは信頼を損なう

コスト比較のために相見積もりは有効ですが、むやみに多くの会社(例えば5社以上)から見積もりを取ることは推奨できません。管理会社にとって、正確な見積もりを作成するには、現地調査や外注先との調整など、多大な時間と労力がかかります。あまりに多くの会社に依頼すると「契約する本気度が低い組合」と見なされ、真摯な提案を受けられなくなる恐れがあります。

注意点2:コスト削減と管理品質のバランスを保つ

削減額の大きさだけで判断するのは危険です。例えば、清掃の回数を減らしすぎれば、マンションの美観が損なわれます。管理員の常駐時間をなくせば、防犯面での不安や緊急時の対応の遅れにつながるかもしれません。コスト削減によって「何が失われるのか」を常に意識し、住民の合意を得ながら、管理品質との最適なバランス点を見つけることが重要です。

注意点3:「管理費」と「修繕積立金」を混同しない

管理費と修繕積立金は、目的も法的根拠も全く異なるお金です。管理費の見直しによって会計に余剰金(剰余金)が生じた場合、それを修繕積立金会計に繰り入れることは可能ですが、そのためには必ず総会での正規の決議が必要です。自動的に繰り入れられるわけではないため、適切な会計処理と手続きを徹底してください。

2025年の最新動向:法改正と管理費見直しの関係

2025年5月に成立した改正マンション管理適正化法および改正区分所有法(2026年4月までに施行予定)により、マンション管理の透明性・効率化が一層求められるようになりました。この改正では、管理組合の運営を円滑にするための所在不明所有者に関する決議要件の緩和や、管理不全マンションへの対策強化などが盛り込まれています。また、自治体が管理計画を評価する管理計画認定制度も、新築マンションでの計画作成が分譲事業者に求められるなど、その重要性が増しています。これらの制度変更に対応する過程で、管理組合が「管理費の根拠」を問い直し、コストの妥当性を検証する動きが活発化しています。本記事で解説したステップは、こうした新しい規制環境への対応にも有効です。

FAQ|マンション管理費の見直しに関するよくある質問

Q. 見直しにはどのくらいの期間がかかりますか?

A. マンションの規模や見直しの内容によって異なりますが、一般的には準備開始から総会決議まで、半年から1年程度を見込むのが現実的です。現状分析、理事会での方針決定、相見積もりの取得・比較、管理会社との交渉、そして総会準備と、各ステップで相応の時間が必要になります。

Q. 理事会や住民から反対されたらどうすれば良いですか?

A. まずは、なぜ反対しているのか、その理由を丁寧にヒアリングすることが重要です。多くの場合、「管理の質が下がるのではないか」「今の管理会社に不満はない」といった不安が原因です。これらの不安に対し、客観的なデータを示し、「品質を維持できる根拠」や「コストを適正化する必要性」を粘り強く説明し、理解を求めていく姿勢が大切です。

Q.「管理計画認定制度」や「管理適正評価制度」とは何ですか?

A. これらはマンションの管理状態を評価する制度ですが、目的と実施主体が異なります。

項目 管理計画認定制度 マンション管理適正評価制度
実施主体 自治体(市区町村) (一社)マンション管理業協会など
評価対象 マンションの管理計画(管理組合) マンション全体の管理状態

注意点:いずれの制度も「管理会社」を評価するものではなく、「マンション(管理組合)」の管理状態を評価する制度です。2025年の法改正により、特に管理計画認定制度の重要性が増しており、新築時に分譲事業者が計画を作成する仕組みも導入されます(2026年4月までに施行予定)。これらの制度で良い評価を得るために管理収支の健全化が求められ、その過程で管理費の見直しが進むことがあります。

まとめ|管理費見直しは「組合の経営力」を高める第一歩

マンション管理費の見直しは、単にお金を節約するだけの活動ではありません。管理委託契約書を読み解き、自分たちのマンションに必要なサービスは何かを議論し、外部の業者と交渉する一連のプロセスは、管理組合の運営能力、すなわち「組合の経営力」そのものを高めることに直結します。

今回ご紹介したステップや注意点を参考に、ぜひあなたのマンションでも管理費の適正化に向けた一歩を踏み出してみてください。その取り組みは、マンションの資産価値を維持・向上させ、将来にわたって住みやすい環境を守るための重要な投資となるはずです。


免責事項

本記事は、マンション管理費の見直しに関する一般的な情報提供を目的としており、特定の物件における法的助言やコンサルティングを行うものではありません。管理費の見直しを具体的に検討される際は、必ずご自身のマンションの管理規約や契約内容をご確認の上、必要に応じてマンション管理士などの専門家にご相談ください。法令や制度は改正される可能性があるため、最新の情報をご確認ください。

参考資料

  • 建物の区分所有等に関する法律(e-Gov法令検索)
  • マンション管理の適正化の推進に関する法律(e-Gov法令検索)
  • 国土交通省「マンション標準管理規約」
  • 国土交通省「マンション標準管理委託契約書」
  • 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

建物管理に関するお悩みはお気軽にご相談下さい!
大手建物管理会社では対応が難しい自主管理物件や小規模マンションにも、当社は的確なサポートを提供します。
規模に関わらず、管理組合様のニーズに寄り添い、資産価値の維持・向上に貢献する最適な管理プランをご提案。
長期的な安定と快適な居住環境づくりを全力でサポートいたします。

マンション管理のこと、 どんな小さな疑問でも
大丈夫です!

どんな些細なことでも構いません。管理費の最適化や修繕計画、住民トラブルの対応まで、
少しでも気になることはMIJまでお気軽にご相談ください!

相談は無料です!マンション管理のことは
何でもご相談ください!

03-5333-0703 電話で相談する

営業時間:10:00~18:00
平日、土日も営業(年末年始・お盆を除く)