【緊急】マンションの漏水トラブル|初期対応から費用・保険まで専門家が解説

二つの異なるマンションの模型が並んでおり、それぞれの管理体制の違いを比較・検討している様子を表す画像

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突然の漏水トラブルは、誰しもパニックに陥りがちです。天井からの水滴、壁のシミ、床下の異音など、そのサインは様々ですが、いずれも迅速かつ適切な初期対応が被害を最小限に食い止める鍵となります。しかし、焦りから「まず何をすべきか」「誰に連絡すれば良いのか」「費用は誰が負担するのか」といった疑問が次々と湧き上がり、どう動けば良いか分からなくなってしまう方も少なくありません。

この記事では、宅地建物取引士の資格を持つ不動産ライターが、漏水トラブルに特化し、緊急時に取るべき行動から、原因の特定、責任の所在、保険の活用法までを専門家の視点で網羅的に解説します。公的な資料や法令に基づき、いざという時に本当に役立つ情報をお届けします。この記事を読めば、冷静さを取り戻し、漏水という緊急事態に的確に対処できるようになるはずです。

【緊急】漏水発見!まずやるべき3つの初期行動

漏水を発見したら、パニックにならず、以下の3つのステップを順番に実行してください。行動の早さが、ご自身の財産だけでなく、階下の住民への被害を最小限に抑えます。

Step1:最優先は「止水栓」を閉めること

被害の拡大を防ぐため、何よりも先に水の供給を止めます。マンションやアパートの場合、玄関ドアの横にあるパイプシャフト(メーターボックス)内に、水道メーターと並んで止水栓(元栓)があるのが一般的です。ご家族が在宅の場合は、水が止まることを一声かけてから作業しましょう。

  • バルブ型: ハンドルを時計回りに回らなくなるまで閉めます。
  • マイナスドライバー型: 溝にマイナスドライバーなどを差し込み、時計回りに90度回します。

キッチンや洗面台の下など、特定の場所からの漏水の場合は、その場所だけの止水栓を閉めることで、他の水道は使い続けることができます。

【重要】感電にご注意ください(安全管理上の一般的な注意事項)
漏水箇所が照明器具やコンセントに近い場合、感電の危険があります。安全が確認できる範囲で、ブレーカーを落とすといった対応もご検討ください。

Step2:被害拡大を防ぐ応急処置

止水栓を閉めたら、次に物理的な応急処置を行います。

  • 水を受ける: 漏れている箇所の下にバケツや大きめのビニールシートを敷き、水を受け止めます。
  • 吸水する: 床に広がった水は、タオルや雑巾、吸水シートなどで速やかに拭き取ります。家財が濡れないよう、移動できるものは安全な場所に移しましょう。
  • 配管の応急補修: 手の届く配管からの漏水で、原因箇所が明らかな場合は、自己癒着テープや防水補修テープを巻きつけることで一時的に水漏れを抑えられることがあります。ただし、これはあくまで一時しのぎです。

処置後は、カビなどの二次被害を防ぐため、漏水箇所周辺を十分に乾燥させることも重要です。

Step3:管理会社・大家・専門業者へ連絡

応急処置と並行して、速やかに関係各所へ連絡します。どこに連絡するかは、お住まいの形態によって異なります。

  • 分譲マンション: 管理会社へ連絡します。24時間対応の緊急窓口がある場合が多いです。
  • 賃貸マンション・アパート: 大家さんまたは管理会社へ連絡します。
  • 戸建て(持ち家): ご自身で水道修理業者を手配します。

連絡する際は、「いつから」「どこで」「どのような状況か」、そして「階下への影響の可能性」を冷静に伝えましょう。これにより、対応の優先度を正しく判断してもらいやすくなります。

【原因究明】どこから漏れてる?場所別の原因と責任の所在

漏水の原因は多岐にわたり、その原因箇所によって修理の責任を負う人が異なります。特にマンションでは、この責任の切り分けが非常に重要になります。

天井・壁・床下|場所から推測される原因

漏水が発生している場所から、ある程度の原因を推測することができます。

発生場所考えられる主な原因
天井・上階の給排水管の破損・劣化
・上階の住人の過失(洗濯機のホース外れなど)
・共用部分である縦管の破損
・建物の外壁や屋上からの雨漏り
・壁内部にある給排水管の破損・劣化
・外壁のひび割れからの雨水侵入
・結露
床下・自室の給排水管の破損・劣化
・排水管の詰まりによる溢れ

責任は誰に?「専有部」と「共用部」の境界線

マンションの漏水トラブルで最も重要なのが、「専有部」と「共用部」の区別です。修理責任と費用負担が誰になるかを決める、法的な境界線です。

  • 専有部とは
    • 定義: 区分所有者が単独で所有権を持つ住戸内部のことです。
    • 具体例: 壁紙、床材、キッチン、トイレ、そして各住戸に引き込まれている給排水の「枝管」など。
    • 責任: 専有部が原因の漏水は、原則としてその部屋の所有者が修理責任と階下への賠償責任を負います。
  • 共用部とは
    • 定義: 専有部以外の、マンション全体の構造や設備に関わる部分です。
    • 具体例: 建物のコンクリート躯体、廊下、エレベーター、そして住戸を縦に貫く給排水の「縦管(主管)」など。
    • 責任: 共用部が原因の漏水は、原則としてマンションの管理組合が修理責任を負います。

この区別は、国土交通省が示す「マンション標準管理規約」でも明確に定められています。以下の表で配管の区分を確認しましょう。

配管区分定義所有権修理責任の所在
縦管(主管)複数の住戸を貫き、給水・排水を供給する基幹配管共用部管理組合
枝管縦管から分岐し、各住戸に給水・排水を引き込む配管専有部住戸所有者
出典:国土交通省「マンション標準管理規約」を基に作成

天井からの漏水であっても、原因が共用部である縦管の劣化である可能性も十分に考えられるため、「天井からの漏水=上階の責任」と短絡的に判断するのは禁物です。

原因不明の場合は「共用部の瑕疵」と推定されることがある(区分所有法第8条)

専門家が調査しても漏水の原因箇所が特定できない場合があります。このようなケースでは、法律が解決の一つの指針を示しています。

建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。

(出典:建物の区分所有等に関する法律 第八条)

この規定により、原因不明の漏水であっても、共用部の瑕疵があるものと法律上推定される傾向があります。ただし、実際の責任配分は個別の事実認定、管理規約、及び調査結果により異なります。責任の所在について不明な点がある場合は、必ず弁護士やマンション管理士等の専門家にご相談ください。

【業者選び】24時間対応の専門業者を選ぶ5つの重要ポイント

管理会社からの指定がない場合や、戸建てにお住まいの場合は、ご自身で修理業者を選ぶ必要があります。緊急時に慌てて悪質な業者に依頼しないよう、以下のポイントを必ず確認してください。

Point1:料金体系の透明性(「一式見積もり」は避ける)

信頼できる業者は、料金体系を明確に提示します。特に、見積書の内訳を確認することが重要です。

  • 確認すべき項目: 作業費、部品代、出張費、夜間・休日料金など。
  • 注意点: 「漏水修理一式 〇〇円」といった大雑把な見積もりを出す業者は避けましょう。何にいくらかかるのかが不透明で、後から高額な追加料金を請求されるリスクがあります。消費者庁も、水道修理に関する高額請求トラブルについて注意を呼びかけています。

Point2:原因調査から修繕までの一貫対応力

単に応急処置をするだけでなく、漏水の根本原因を特定し、適切な修繕工事まで一貫して対応できる業者を選びましょう。業者によっては、調査はできても大掛かりな工事はできない、というケースもあります。

Point3:到着時間の目安と実績

「24時間対応」「最短30分で到着」といった宣伝文句を鵜呑みにせず、電話口で「今からだと、おおよそ何分くらいで到着できますか?」と具体的な時間を確認しましょう。実績のある業者は、交通状況などを考慮した現実的な到着時間を提示してくれます。

Point4:保険申請サポートの有無

後述する火災保険を申請する際には、業者に「修理見積書」「工事報告書」「被害状況の写真」などを作成してもらう必要があります。保険申請のサポート経験が豊富な業者であれば、スムーズな書類準備が期待できます。

Point5:管理会社との連携経験

マンションの漏水修理では、管理会社や他の居住者との連携が不可欠です。専有部と共用部の判断や、工事日程の調整など、管理会社との連携経験が豊富な業者は、話がスムーズに進みやすいというメリットがあります。

相見積もりは2~3社が現実的
費用を比較するために複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」は有効です。しかし、緊急性が高い場合や、5社も6社も見積もりを依頼すると、業者側も手間がかかるため敬遠されがちです。迅速な対応を求めるなら、信頼できそうな2~3社に絞って比較検討するのが現実的です。

【費用と保険】修理費用は誰が払う?火災保険の賢い使い方

漏水トラブルで最も気になるのが費用負担です。幸い、多くの場合で火災保険が適用できる可能性があります。ただし、保険の種類や契約内容によって補償範囲が異なるため、正しく理解しておくことが重要です。

自宅の被害を補償する「水濡れ補償」

  • 定義・区別: ご自身が加入している火災保険に付帯する「水濡れ補償」は、自分の家の建物(濡れた壁紙や床の張り替え費用など)や家財(濡れて使えなくなった家具や家電など)の損害を補償対象とすることができる可能性があります。上階からの漏水や、給排水管の偶発的な事故によって自宅が被害を受けた場合に利用を検討できます。
  • 注意点: 補償範囲・限度額・免責事項は、保険商品および契約内容により大きく異なります。必ずご加入の保険会社の約款をご確認ください。

階下など他人への賠償は「個人賠償責任保険」

  • 定義・区別: 「個人賠償責任保険」は、ご自身の過失によって他人(階下の居住者など)の財産に損害を与えてしまった場合の賠償費用を補償の対象とすることができる可能性がある保険です。火災保険や自動車保険の特約として加入していることが多いです。
  • 読者メリット: 洗濯機のホースが外れて階下に水漏れさせてしまった、といったケースで、階下の住人の家財や内装の修繕費用をカバーできる場合があります。

保険が適用されない主なケース(経年劣化・施工不良・故意・免責額以下の損害)

便利な火災保険ですが、万能ではありません。以下のようなケースでは保険が適用されない、または減額される可能性があるので注意が必要です。

  • 経年劣化: 給排水管のサビや腐食など、予測できる老朽化が原因の場合は対象外となることがほとんどです。
  • 故意・重過失: わざと水を流し続けたり、明らかに異常があると分かっていながら放置したりした場合。
  • 施工不良: 建物を建てた際の工事ミスが原因の場合。
  • 少額の損害: 保険契約に免責金額(自己負担額)が設定されている場合、損害額がその金額に満たないと保険金は支払われません。

特に注意すべき点として、給排水管のサビや腐食など、予測できる老朽化が原因の場合は補償対象外となることが一般的です。ご加入の保険会社に、契約時点での最新の約款をご確認いただくことを強く推奨いたします。

保険申請の具体的な3ステップと必要書類

保険を申請する際は、以下の流れで進めるのが一般的です。

  1. Step1:保険会社へ事故報告 まずは契約している保険会社の事故受付窓口へ電話します。契約者名、保険証券番号、事故の日時・場所・状況などを伝えます。
  2. Step2:必要書類の準備・提出 保険会社から送られてくる請求書類に記入し、以下の書類を添えて返送します。
    • 保険金請求書
    • 修理業者が作成した見積書
    • 被害状況がわかる写真
    • 修理完了報告書、領収書
  3. Step3:損害額の査定・保険金の支払い 提出された書類を基に、保険会社が損害状況の調査と査定を行います。場合によっては、保険会社の鑑定人が現地調査に来ることもあります。査定後、支払われる保険金額が決定し、指定口座に振り込まれます。

【状況別】マンション・戸建て・賃貸で異なる連絡先と報告フロー

お住まいの状況によって、最初に連絡すべき相手やその後の対応フローが異なります。ご自身のケースを確認してください。

居住形態第一連絡先主な対応フロー
分譲マンション管理会社①管理会社に連絡し、指示を仰ぐ。
②管理会社が業者を手配するか、自身で探すか確認。
③原因が共用部の場合、管理組合の保険で対応。専有部の場合は個人の保険で対応。
賃貸マンション・アパート大家 or 管理会社①大家さんか管理会社に連絡。勝手に業者を呼ばないこと。
②修理の手配は大家・管理会社が行うのが原則。
③自分の過失でなければ、修理費用を負担する必要はない。
戸建て(持ち家)水道修理業者①自身で信頼できる水道修理業者を探し、連絡。
②近隣の家に影響が出ている場合は、お詫びと状況説明を行う。
③修理費用は火災保険の「水濡れ補償」などを活用。

まとめ:漏水トラブルは初期対応が鍵。不安な時は専門家にご相談を

この記事では、漏水トラブルが発生した際の緊急対応から、原因の特定、責任の所在、保険の利用方法までを解説しました。

重要なポイントを改めて確認しましょう。

  • 初期対応: まずは「止水栓を閉める」。次に「応急処置」と「関係各所への連絡」を迅速に行う。
  • 責任範囲: マンションでは「専有部」は所有者、「共用部」は管理組合が責任を負うのが原則。原因不明の場合は共用部の瑕疵と推定されることがある。
  • 保険: 自宅の被害は「水濡れ補償」、他人への賠償は「個人賠償責任保険」でカバーできる可能性がある。ただし、経年劣化は対象外が多く、契約内容の確認が必須。
  • 業者選び: 料金の透明性が高く、原因調査から修繕まで一貫して対応でき、保険申請のサポートもしてくれる業者を選ぶ。

漏水トラブルは、法律や保険、建物の構造など専門的な知識が絡み合う複雑な問題です。初期対応を誤ると、被害が拡大し、費用負担や近隣との関係もこじれてしまう可能性があります。もし少しでも対応に不安を感じたら、躊躇なく漏水トラブルに特化した専門家へ相談することをお勧めします。

免責事項

本記事は、漏水トラブルに関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。実際の対応にあたっては、必ず弁護士、マンション管理士、ご加入の保険会社、管理組合等の専門家にご相談ください。また、法令や保険制度、マンションの管理規約は改正されることがありますので、最新の情報やご自身の契約内容を最優先にご確認ください。

参考資料

  • e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069
  • 国土交通省「マンション標準管理規約」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000057.html
  • 消費者庁「水回り修理「940円~」のはずが…数十万円の高額請求に注意!」(令和4年3月29日公表) https://www.caa.go.jp/notice/entry/026888/

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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