失敗しないマンション管理会社変更の流れ|見積もり・総会も5ステップで完全ガイド

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

マンションの管理品質は、快適な暮らしと資産価値に直結する重要な要素です。しかし、「清掃が行き届いていない」「担当者の対応が遅い」「管理委託費が高い気がする」といった不満を抱えている管理組合も少なくありません。もし現状の管理会社に疑問を感じているなら、「管理会社の変更(リプレイス)」は有効な解決策の一つです。

管理会社の変更は手順が複雑で大変そうだと感じる方も多いでしょう。しかし、正しいマンション管理会社 変更 流れを理解し、計画的に進めれば、管理組合の力でより良い住環境を実現できます。この記事では、宅地建物取引士として、管理会社変更の検討開始から新しい会社への業務引継ぎまで、5つのステップに分けて具体的に解説します。総会決議のポイントや見積もり比較のコツなど、失敗しないための知識を網羅していますので、ぜひ最後までご覧ください。

なぜ今、マンション管理会社の変更を検討するのか?

管理会社の変更は大きな決断ですが、それによって得られるメリットも少なくありません。国土交通省の「令和4年度マンション総合調査」によると、過去5年間に管理会社を変更した管理組合は全体の6.7%にのぼります。まずは、変更を検討するきっかけとなる一般的な不満点と、変更によって期待できる効果を見ていきましょう。

管理会社へのよくある不満点トップ5

多くの管理組合が、以下のような不満をきっかけに管理会社の変更を検討し始めます。

  1. 管理委託費が高い:類似のマンションと比較して、サービス内容に見合わないコストを支払っていると感じる。
  2. 担当者の対応が悪い・遅い:連絡しても返信がなかったり、理事会への提案が的外れだったりする。
  3. 清掃・点検の質が低い:日常清掃や定期点検が仕様書通りに行われておらず、共用部が汚れている。
  4. 修繕提案の妥当性に疑問がある:不要不急の工事を提案されたり、見積もりが高額だったりする。
  5. 会計報告が不透明:収支報告書の内容が分かりにくく、費用の使途に疑問が残る。

これらの不満は、マンションの住環境や資産価値の低下に直結する可能性があります。

管理会社変更による3つのメリット

現状の課題を解決するために管理会社を変更することで、主に3つのメリットが期待できます。

  • メリット1:管理コストの適正化
    競争原理を働かせることで、既存のサービスレベルを維持したまま管理委託費を削減できる可能性があります。削減できた費用は、修繕積立金に充当するなど、マンションの将来のために有効活用できます。
  • メリット2:管理品質・サービスの向上
    新しい管理会社からの提案力や専門知識を活用することで、清掃品質の向上、迅速なトラブル対応、長期修繕計画の見直しなど、より質の高いサービスを受けられるようになります。
  • メリット3:管理組合運営の活性化
    管理会社の変更という大きなプロジェクトに組合員一丸となって取り組むことで、マンション管理への関心が高まり、コミュニティの活性化にもつながります。

【ステップ1】準備:理事会での合意形成と問題点の可視化

①現行の管理委託契約書の内容を確認する

まず最初に、現在締結している「管理委託契約書」を隅々まで確認します。特に重要なのが「解約」に関する条項です。

  • 解約予告期間:いつまでに通知すれば解約できるか(例:「解約希望日の3ヶ月前までに書面で申し入れる」など)。
  • 中途解約の可否:契約期間の途中で解約が可能か、その場合の条件は何か。

国土交通省が公表する「マンション標準管理委託契約書」(令和3年6月改正版)では、3ヶ月前の予告による解約が一般的ですが、独自の特約が定められている場合もあります。必ずご自身の契約書を確認してください。

②理事会で問題点を洗い出し、議事録に残す

次に、理事会で現行の管理会社に対する問題点や改善要望を具体的に洗い出します。

  • コストの問題(管理委託費、各種工事見積もりなど)
  • 担当者の対応(レスポンス速度、提案力、専門性など)
  • 現場業務の品質(清掃、管理員の勤務態度、点検業務など)
  • 会計業務の透明性(収支報告、未収金督促など)

議論した内容は、必ず理事会の「議事録」として正式に記録します。これは、管理組合として公式に問題を認識し、検討を開始した証拠となります。

③全区分所有者へのアンケートで意見を集約する

理事会だけの意見で進めるのではなく、全区分所有者(組合員)の意見を広く集めることが、後の総会での合意形成をスムーズにします。アンケートを実施し、現状の管理に対する満足度や不満点を客観的なデータとして集約しましょう。

(アンケート設問例)
Q1. 現在の管理会社の業務全般について、5段階で評価してください。(満足・やや満足・普通・やや不満・不満)
Q2. 特に不満に感じている点があれば、いくつでもお選びください。(管理委託費の金額/フロント担当者の対応/清掃の質/管理員の業務態度/その他)
Q3. 管理会社の変更について、どうお考えですか。(賛成・反対・どちらでもない)

この結果は、管理会社変更の必要性を他の組合員に説明する際の、強力な客観的資料となります。

【ステップ2】選定:新しい管理会社候補を探し、見積もりを依頼する

理事会での検討とアンケート結果を踏まえ、管理会社変更の方針が固まったら、次のステップとして新しい管理会社の候補を探し、見積もりを依頼します。

①新しい管理会社候補の探し方

候補となる管理会社を探す方法はいくつかあります。

  • インターネットでの検索:マンションの所在地や規模で検索する。
  • 業界団体や自治体の情報:国土交通省の登録業者データベースなどを活用する。
  • 近隣マンションからの紹介:管理状態が良い近隣マンションの理事会にヒアリングしてみる。
  • マンション管理士への相談:専門家から客観的な視点で候補を紹介してもらう。

②見積もり依頼は2〜3社が最適解である理由

複数の会社を比較検討する「相見積もり」は必須ですが、やみくもに多くの会社に依頼するのは得策ではありません。

専門家の視点
管理会社の見積もり作成には、現地調査や清掃・設備点検等の協力会社との調整など、多大な時間と労力がかかります。5社以上の相見積もりになると、管理会社側は「受注できる確率が低い」と判断し、本気の提案が出てこない可能性があります。特に戸数が少ないマンションでは、敬遠される傾向さえあります。質の高い提案をじっくり比較するためにも、候補を2〜3社に絞って依頼するのが最も効率的かつ効果的な戦略です。

候補を絞ることで、各社と丁寧なコミュニケーションを取る時間が生まれ、より自社のマンションに合った提案を引き出しやすくなります。

③見積もり依頼時に準備すべき書類リスト

公正な比較を行うため、各社に同じ情報を提供することが重要です。見積もり依頼時には、以下の書類を準備しましょう。

  • 管理委託契約書(現行のもの)
  • 管理規約
  • 総会議案書・議事録(直近数年分)
  • 長期修繕計画書
  • 収支報告書・貸借対照表
  • 建物・設備の図面、点検報告書

これらの書類を事前に揃えておくことで、見積もりの精度が上がり、その後の手続きがスムーズに進みます。

【ステップ3】比較検討:見積書の罠を見抜き、最適な1社に絞り込む

複数の会社から提案書と見積書が提出されたら、次は比較検討のステップです。単純な金額の比較だけでなく、その内訳とサービス内容を精査することが重要です。

要注意!「一式見積もり」を鵜呑みにしてはいけない理由

見積書の中には、費目が「管理委託費一式 ○○円」のように、ざっくりとしか書かれていないものがあります。これは非常に危険です。

国土交通省の「マンション標準管理委託契約書」別表第1(管理事務の対象となる部分)および別表第2(管理事務の内容及び実施方法)では、委託業務費の内訳を明示することが前提とされています。内訳が不明な「一式見積もり」では、どの業務にいくらかかっているのかが分からず、将来的な仕様変更や値下げ交渉の際に、正当な比較・交渉ができなくなってしまいます。必ず詳細な内訳の提出を求めましょう。

見積書で必ず比較すべき重要費目

詳細な見積書が提出されたら、特に以下の費目を重点的に比較します。

費目チェックポイント
事務管理業務費基幹事務(会計、出納、維持修繕の企画・実施調整)とそれ以外の事務管理業務が明確に区分されているか。
管理員業務費勤務形態(常駐、巡回など)、勤務時間、業務内容(受付、点検、清掃範囲など)が明記されているか。
清掃業務費日常清掃と定期清掃の範囲、頻度、仕様が具体的に示されているか。
建物・設備管理業務費消防設備点検、エレベーター保守点検など、各種点検の項目と費用が個別に記載されているか。

総額だけでなく、これらの費目ごとに各社のサービス内容と金額を比較し、コストパフォーマンスを総合的に判断することが大切です。

プレゼンテーション(ヒアリング)で確認すべきポイント

書類選考で候補を1〜2社に絞り込んだら、理事会向けにプレゼンテーション(ヒアリング)を実施します。ここでは、書類だけでは分からない点を確認します。

  • 担当予定者(フロントマン)の人柄や経験:実際にマンションを担当する方の対応力や専門知識は極めて重要です。
  • 緊急時の対応体制:夜間や休日に水漏れなどのトラブルが発生した場合、どのような体制で対応してくれるか。
  • 管理組合への提案力:現状の課題に対し、どのような改善策を提案してくれるか。
  • 会社の理念や実績:その会社がどのような考え方でマンション管理に取り組んでいるか。

プレゼンテーションを通じて、長期的なパートナーとして信頼できる会社かどうかを見極めましょう。

【ステップ4】決議:総会での承認を得るための手続き

最終候補の管理会社が決まったら、管理組合の最高意思決定機関である「総会」で、全区分所有者の承認を得る必要があります。ここでの手続きは法的な要件が絡むため、慎重に進めなければなりません。

⚠️ 【重要】必ず自マンションの管理規約を確認してください

建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」)では普通決議(区分所有者及び議決権の各過半数)とされていますが、管理規約に「特別決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上)が必要」等の別段の定めがある場合、管理規約が優先されます(区分所有法第30条3項)。

①臨時総会または通常総会の議案として上程する

管理会社の変更は、毎年開催される「通常総会」または、この議題のためだけに開催する「臨時総会」で決議します(根拠:マンション標準管理規約(単棟型)第34条)。議案としては、以下の2つをセットで上程するのが一般的です。

  • 第1号議案:現行管理会社との管理委託契約の解約承認の件
  • 第2号議案:新管理会社との管理委託契約の締結承認の件

②【最重要】管理会社変更は原則「普通決議」で可能

管理会社の変更に必要な決議要件は、法律で定められています。

定義:普通決議とは
区分所有法第39条1項で定められており、原則として「区分所有者及び議決権の各過半数」の賛成で可決される決議のことです。

【法的注意喚起】規約の確認は必須!
前述の通り、法律では普通決議とされていますが、マンションの憲法である「管理規約」で別段の定めを設けている場合があります。その場合は、管理規約が優先されます。総会を開催する前に、必ずご自身のマンションの管理規約を確認してください。

また、総会での決議に先立ち、新しく契約する管理会社は、区分所有者全員に対して重要事項説明を行う義務があります(マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第73条)。

③総会で区分所有者を説득するための説明資料のポイント

総会でスムーズに承認を得るためには、分かりやすい説明資料の準備が不可欠です。

  • 変更検討の経緯:なぜ変更を検討し始めたのか(アンケート結果など客観的データを示す)。
  • 選定プロセス:何社を比較し、どのような基準で候補を選んだのか、その透明性を示す。
  • 新旧管理会社の比較:管理委託費やサービス内容がどのように変わるのかを具体的に比較表で示す。
  • 質疑応答の準備:想定される質問への回答をあらかじめ準備しておく。

これまでのプロセスを丁寧に説明し、理事会が組合員全体の利益を考えて行動したことを伝えることが、合意形成の鍵となります。

【ステップ5】実行:解約通知から業務引継ぎまで

総会で無事に承認されたら、いよいよ最終ステップです。法的な手続きと、新旧管理会社間のスムーズな業務の移行を進めます。

①現行管理会社への解約通知(3ヶ月前が原則)

総会決議後、速やかに現行の管理会社に対して、総会議事録の写しを添付した「解約通知書」を内容証明郵便などで送付します。

前述の通り、解約予告期間は管理委託契約書で定められていますが、国土交通省の「マンション標準管理委託契約書」第17条に基づき、一般的には解約日の3ヶ月前までに書面で通知する必要があります。例えば、4月1日から新会社に切り替えたい場合は、前年の12月末までに解約通知を行う必要があります。

②新管理会社との管理委託契約の締結

解約通知と並行して、総会で承認された新管理会社と正式に「管理委託契約」を締結します。契約書に署名・捺印する前に、見積書やプレゼンテーションで合意した内容(業務仕様、金額など)が正確に反映されているか、理事会で最終確認を必ず行いましょう。

③失敗しないための新旧管理会社間の業務引継ぎチェックリスト

管理会社変更で最もトラブルが起きやすいのが、この「業務引継ぎ」です。理事会が主体となって、引継ぎが漏れなく行われるよう監督することが重要です。

業務引継ぎチェックリスト
□ 管理組合の預金通帳、印鑑、キャッシュカード
□ 会計帳簿、決算書類一式
□ 管理費等の収納・滞納状況に関する資料
□ 管理規約、使用細則等の原本
□ 過去の総会・理事会の議案書、議事録
□ 竣工図書、各種設備の設計図書
□ 消防計画、点検報告書、修繕履歴
□ 居住者名簿、緊急連絡先リスト
□ 共用部分の鍵、マスターキー、カードキー等の一式と管理台帳

特に会計データや鍵の引継ぎは、員数不足などのトラブルが発生しやすいため、新旧両社と理事会役員の三者立ち会いのもとで確認するのが理想的です。

マンション管理会社変更に関するよくある質問(Q&A)

Q1. 変更にかかる期間はどれくらい?

A1. 検討開始から新しい管理会社での業務開始まで、一般的には半年から1年程度かかります。理事会での問題点の洗い出しに1〜2ヶ月、新会社の選定・比較検討に2〜3ヶ月、総会準備と開催に1〜2ヶ月、そして解約予告期間が3ヶ月、というのが大まかな目安です。計画的に進めることが重要です。

Q2. 変更に費用はかかる?

A2. 管理組合が管理会社変更手続き自体で、直接費用を負担することは基本的にありません。ただし、管理組合の運営をサポートしてもらうために、マンション管理士などのコンサルタントに依頼する場合は、そのコンサルティング費用が別途発生します。

Q3. 引継ぎでトラブルが起きたらどうする?

A3. まずは理事会が主導し、新旧管理会社間で誠実な協議を促します。それでも解決しない場合は、管理委託契約書の内容に基づき対応を求めることになります。会計データの不備や重要書類の紛失など、深刻な問題が発生した場合は、弁護士やマンション管理士などの専門家に相談することも検討しましょう。

まとめ:計画的な準備がマンション管理会社変更成功の鍵

マンション管理会社の変更は、労力と時間がかかるプロジェクトですが、成功すれば管理コストの適正化やサービスの向上など、大きなメリットをもたらします。

成功への道筋は、以下の5つのステップを丁寧に進めることです。

  1. 準備:契約書を確認し、理事会と組合員全体で問題点を共有する。
  2. 選定:候補を2〜3社に絞り、公正な条件で見積もりを依頼する。
  3. 比較検討:「一式見積もり」に惑わされず、サービス内容とコストを精査する。
  4. 決議:法的な要件(普通決議)と規約を確認し、総会で丁寧な説明を行い承認を得る。
  5. 実行:法的な手続きを遵守し、理事会主導で確実な業務引継ぎを行う。

最も重要なのは、一部の役員だけで進めるのではなく、常に区分所有者全体の利益を考え、透明性の高いプロセスで合意形成を図っていくことです。この記事が、あなたのマンションのより良い未来に向けた第一歩となれば幸いです。


免責事項

本記事は、2025年10月20日時点の情報に基づき、マンション管理会社の変更に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の案件に対する法的助言を行うものではありません。実際の法的手続きや契約解釈については、区分所有法やご自身のマンションの管理規約、管理委託契約書の最新の内容が最優先されます。必要に応じて、弁護士やマンション管理士などの専門家にご相談ください。

参考資料

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

建物管理に関するお悩みはお気軽にご相談下さい!
大手建物管理会社では対応が難しい自主管理物件や小規模マンションにも、当社は的確なサポートを提供します。
規模に関わらず、管理組合様のニーズに寄り添い、資産価値の維持・向上に貢献する最適な管理プランをご提案。
長期的な安定と快適な居住環境づくりを全力でサポートいたします。

マンション管理のこと、 どんな小さな疑問でも
大丈夫です!

どんな些細なことでも構いません。管理費の最適化や修繕計画、住民トラブルの対応まで、
少しでも気になることはMIJまでお気軽にご相談ください!

相談は無料です!マンション管理のことは
何でもご相談ください!

03-5333-0703 電話で相談する

営業時間:10:00~18:00
平日、土日も営業(年末年始・お盆を除く)