東京のマンション一部管理委託|コスト削減を成功させる5ステップと会社選び

マンション管理を全部委託から一部管理委託へ移行するための実践的な5ステップを図解。契約確認から理事会決定、会社選定、総会決議、引継ぎまでの一連の流れを番号付きで示すことで、計画的な移行プロセスをサポートします。

※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。

東京都内でマンション管理組合の役員を務める皆様の中には、「現在の管理会社への委託費は高すぎるのではないか」「しかし、全ての業務を自分たちで行う自主管理は現実的ではない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。管理コストの最適化と、質の高い住環境の維持。この二つの両立を目指す選択肢として「一部管理委託」が注目されています。

この記事では、宅地建物取引士の知見を活かし、マンション管理の「一部管理委託」について、その定義からメリット・デメリット、そして東京で対応可能な管理会社を選ぶ際の具体的なポイントまでを、一次情報に基づき徹底解説します。全部委託からの移行を成功させるための実践的なステップもご紹介しますので、管理組合の運営改善に向けた第一歩としてぜひご活用ください。

目次

マンション管理の「一部管理委託」とは?全部委託・自主管理との違いを解説

マンションの管理方式は、管理会社へ委託する業務範囲によって「全部委託」「一部管理委託」「自主管理」の3つに大別されます。これらの違いを正しく理解することが、最適な管理方式を選択する上で不可欠です。

法的な定義は「基幹事務」の委託範囲で決まる

全部委託と一部管理委託を分ける法的な基準は、「基幹事務」と呼ばれる3つの業務を全て委託しているかどうかにあります。

基幹事務とは

  1. 管理組合の会計の収入及び支出の調定
  2. 出納
  3. マンションの維持又は修繕に関する企画又は実施の調整

(出典:マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第二条六号)

この3つの基幹事務をすべて管理会社に委託している場合が「全部委託」、基幹事務のうち一部のみ、または基幹事務以外の業務(清掃、設備点検など)のみを委託している場合が「一部管理委託」と定義されます。

国土交通省の「令和5年度マンション総合調査結果」(2023年実施)によると、国内マンションの管理状況は全部委託が74.3%、一部管理委託が17.1%、自主管理等が8.6%となっており、何らかの形で管理会社に委託する形態が9割以上を占めています。(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」)

【比較表】全部委託・一部委託・自主管理のメリット・デメリット

それぞれの管理方式の長所と短所を比較すると、一部管理委託が両者の中間的な性質を持つことがわかります。

比較軸全部委託一部管理委託自主管理
コスト(管理委託費)高い中程度なし
役員の業務負担少ない中程度非常に大きい
専門性・ノウハウ高い選択的に活用組合次第
運営の自由度低い高い非常に高い
責任の所在明確(管理会社)要調整明確(管理組合)

一部管理委託を検討する背景:全部委託の課題とは

多くのマンションで採用されている全部委託ですが、以下のような課題を抱えるケースも少なくありません。

  • コストの不透明性:パッケージ化されたサービスのため、個別の業務費用が分かりにくく、不要なサービスが含まれている可能性がある。
  • 管理品質のばらつき:担当者の能力や管理会社の方針によって、管理の質が左右されやすい。
  • 管理への無関心:「管理会社に任せておけばよい」という意識が広がり、組合員の管理意識が希薄化しやすい。
  • 手続きの煩雑性:管理会社を変更したくても、手続きが複雑で合意形成が難しく、現状維持に陥りがち。

これらの課題を解決する手段として、一部管理委託が選択肢となります。

一部管理委託の2大メリット|コスト削減と運営の主体性向上

管理組合が一部管理委託を選択する主な動機は、「コスト」と「主体性」に集約されます。

メリット1:必要な業務だけを委託し、管理委託費を最適化

最大のメリットは、管理委託費を削減できる可能性が高いことです。全部委託のパッケージサービスから、自分たちのマンションに不要な業務を切り離すことで、不要な業務への支出をなくし、管理委託費を最適化することが可能になります。

会計業務や建物点検など、専門性が必要な業務や役員だけでは対応が難しい業務のみを選択して委託できます。

メリット2:管理組合の主体性を保ち、ノウハウ蓄積と意識向上へ

管理会社に全てを任せる全部委託では、運営方針が管理会社のペースになりがちです。一方、一部管理委託では、管理組合が主体的に運営に関与し続けるため、組合の状況や意向に合わせた柔軟な意思決定がしやすくなります。

例えば、清掃業者や植栽業者などを管理組合が直接選定・契約することで、より質の高いサービスを適正な価格で導入できる可能性があります。こうした活動を通じて、組合内に管理ノウハウが蓄積され、組合員全体の管理意識を高く保つ効果も期待できます。

注意すべき3つのデメリットと対策|役員の負担増と責任問題

メリットの裏側には、管理組合が負うべき責任と負担が大きくなるというデメリットが存在します。対策を講じなければ、管理品質の低下を招きかねません。

デメリット1:対応できる管理会社が東京でも限られる

マンション管理業界では全部委託が主流のため、一部管理委託のプランを積極的に提供している管理会社は、東京であっても多いとは言えません。特に、基幹事務の一部だけを請け負うような柔軟な対応ができる会社は限られます。会社探しに手間がかかる点は、最初に直面する課題となるでしょう。

デメリット2:業務の責任分界点が曖昧になりやすい

一部管理委託では、管理組合が直接契約する業者と、管理会社が担当する業務が混在します。このため、トラブルが発生した際に「誰が対応するのか」という責任の所在が曖昧になりがちです。

【専門家としての注釈】
責任分界点を明確にするためには、管理委託契約書に業務範囲を詳細に記載することが最も重要です。例えば、「共用廊下の電球交換は管理組合(の指定業者)が行う」「小規模な漏水発生時の一次対応(止水栓を閉める等)は管理会社が行い、その後の業者手配は管理組合が行う」など、具体的なケースを想定して役割分担を明記しておく必要があります。

デメリット3:管理組合役員の業務負担が増加する

委託しない業務は、当然ながら管理組合役員の仕事になります。特に、清掃や設備点検などの専門業者を直接選定し、契約・手配する業務は、相見積もりの取得から契約内容の精査、日常的な連絡調整、トラブル時の対応まで、全部委託に比べて役員の業務量と責任は確実に増加します。役員のなり手不足や業務負担の偏りが問題となっている管理組合では、導入が難しい場合もあります。

【東京】一部管理委託に対応できる管理会社の選び方 5つの重要ポイント

東京で一部管理委託を成功させるには、信頼できるパートナーとなる管理会社選びが鍵となります。以下の5つのポイントを必ず確認しましょう。

ポイント1:一部管理委託、特に小規模マンションでの実績があるか

「一部管理委託に対応可能」と謳っていても、実績がなければ実質的なノウハウは期待できません。特に、自分たちのマンションと類似した規模(例:20~40戸程度)での契約実績があるかは重要な判断材料です。過去の実績を具体的に提示してもらいましょう。

ポイント2:委託したい業務範囲に柔軟に対応できるか

管理組合が委託したい業務は様々です。「会計業務だけ」「理事会・総会の支援だけ」「緊急対応だけ」といった、細分化されたニーズにどこまで応えてくれるかを確認します。パッケージプランしか提案しない会社は避けた方が無難です。

ポイント3:見積書の内訳が詳細か(「一式」表記は要注意)

絶対に確認すべきは、見積書の内訳です。「管理業務費一式」のような曖昧な表記ではなく、どの業務にいくらかかるのかが明記されている会社を選びましょう。

詳細な内訳を出す会社は、業務内容とコスト構造をしっかり管理している証拠です。逆に「一式」表記が多い会社は、後々の費用交渉や業務範囲の確認でトラブルになりやすい傾向があります。

ポイント4:緊急時対応の体制と範囲が明確か

夜間や休日に漏水や設備故障が発生した場合、どこまで対応してくれるのかは非常に重要です。「24時間対応」とあっても、電話受付のみで実際の出動は翌営業日、というケースもあります。対応可能な時間帯、出動の有無、費用負担などを具体的に確認しましょう。

ポイント5:担当者の専門性とコミュニケーション能力

最終的には「人」が重要です。担当者がマンション管理に関する専門知識(区分所有法、会計、建築設備など)を持っているか、また、管理組合の要望を正確に理解し、円滑なコミュニケーションが取れる人物かを見極めましょう。

【実践】全部委託から一部管理委託へ移行する5ステップ

実際に全部委託から一部管理委託へ切り替える際の手順を、法的な根拠と注意点を交えて解説します。

ステップ1:現行の管理委託契約書と管理規約の確認

まず、現在の管理会社との管理委託契約書を確認し、契約期間や解約に関する条項(解約予告期間など)を把握します。同時に、自分たちのマンションの管理規約で、管理会社の変更や契約内容の変更がどのように定められているかを確認します。

【参考:国土交通省の標準文書】

規約や契約書の確認時に参考となる公的文書として、国土交通省が公表する『マンション標準管理規約』と『マンション標準管理委託契約書』があります。これらは全国の管理組合・管理会社が文書を作成する際の指針となるものであり、ご自身のマンションの文書の妥当性を判断する上で有用です。

ステップ2:理事会での方針決定と委託範囲の整理

理事会で一部管理委託への移行方針を固め、どの業務を委託し、どの業務を自主的に行うのかを具体的に整理します。この段階で、組合の現状(役員の稼働状況、専門知識の有無など)を客観的に分析することが重要です。

【具体例】一部管理委託の運営パターン

  • パターンA(会計特化型):専門性が高い会計・出納業務は管理会社に委託。清掃や建物・設備の維持修繕に関する業者の選定・手配は管理組合が直接行う。
  • パターンB(コンサル重視型):会計や清掃等は組合で対応しつつ、理事会・総会の運営支援や、大規模修繕計画の企画・調整といった専門的なコンサルティング業務のみを委託する。

ステップ3:管理会社の選定と見積もり依頼(2〜3社が現実的)

ポイント4で挙げた基準を元に、候補となる管理会社をリストアップし、見積もりを依頼します。ここで注意したいのは、むやみに多くの会社に相見積もりを依頼しないことです。以下の2つの理由から、2〜3社に絞り込むのが現実的です。

  1. 管理会社側の多大な負担:詳細な見積もりを作成するには、現地調査、清掃・設備点検等の協力会社との調整、コンプライアンス確認、契約書案の作成など、多大な労力がかかります。
  2. 組合の「本気度」の判断材料に:5社以上への相見積もりは、管理会社側から「本気度が低い組合」と見なされ、敬遠される可能性があります。結果として、その後の提案や対応の質が低下する懸念があります。

丁寧な対応と信頼関係の構築のためにも、厳選した会社に依頼することが成功の鍵です。

ステップ4:総会での決議(原則、普通決議だが規約確認が必須)

管理委託契約の変更は、管理組合の総会での決議が必要です。区分所有法上、管理者の選任・解任は普通決議(区分所有者および議決権の各過半数)で決せるとされています(区分所有法第39条第1項)。

【最重要】
決議要件は、法律の定めよりご自身のマンションの管理規約が最優先されます。原則は普通決議ですが、規約に別段の定めがないか、必ず事前に確認してください。

【重要】2026年4月施行予定の改正区分所有法への対応

本記事は2025年10月時点の現行法を前提としています。2025年5月に区分所有法が大幅改正され、2026年4月1日の施行が予定されています。改正により、総会の決議要件や管理者の権限など、本記事の手続きに影響を与える可能性があります。

実際に管理会社の変更を進める際は、施行後の最新法令を確認の上、必ず弁護士やマンション管理士にご相談ください。

総会では、移行の理由、新しい管理会社の概要、委託内容、費用、役員の負担増などを丁寧に説明し、組合員の合意形成を図ります。

ステップ5:新旧管理会社との契約・引継ぎ業務

総会で承認されたら、新しい管理会社と正式に管理委託契約を締結します。同時に、現行の管理会社へ契約の解約を通知し、会計書類や点検記録、鍵などの引継ぎを進めます。引継ぎがスムーズに進むよう、理事会が間に入って調整することが重要です。

マンションの一部管理委託に関するよくある質問(FAQ)

Q. どのくらいのコスト削減が見込めますか?

A. 一概には言えませんが、マンションの規模や委託する業務範囲によって大きく異なります。一般的には、清掃や小規模な修繕などを管理組合で直接手配することにより、管理会社の中間マージンが削減され、年間で数十万円単位のコスト削減に繋がるケースもあります。ただし、削減額と役員の負担増を天秤にかけて判断する必要があります。

Q. 小規模マンションでも対応してもらえますか?

A. はい、対応可能な会社はあります。むしろ、一部管理委託は20戸~40戸程度の中小規模マンションで、コスト意識の高い管理組合が選択するケースが多いです。小規模マンションでの一部管理委託実績が豊富な会社を選ぶことが成功のポイントです。

Q. トラブルが起きた時の責任はどうなりますか?

A. 責任の所在は、管理委託契約書の内容によって決まります。委託業務の範囲内で起きたトラブルは管理会社の責任、それ以外の業務で起きたトラブルは管理組合の責任となります。だからこそ、契約時に業務範囲と責任分界点をできるだけ具体的に定めておくことが極めて重要です。

まとめ:一部管理委託は管理組合の主体性が成功のカギ

マンションの一部管理委託は、管理委託費を最適化しつつ、管理組合の意向を運営に反映させやすくする有効な選択肢です。特に、コスト意識が高い管理組合が多い東京において、検討する価値は十分にあるでしょう。

しかし、その成功は、管理組合役員の主体性と責任感に大きく依存します。コスト削減というメリットだけに目を奪われず、役員の負担増というデメリットを十分に理解し、組合内で協力体制を築けるかどうかが問われます。

この記事で解説したポイントを参考に、ご自身のマンションにとって最適な管理のあり方を、ぜひ一度じっくりと検討してみてください。


免責事項

本記事は、2025年10月28日時点の情報に基づき、マンション管理に関する一般的な情報提供を目的として作成されており、特定の物件における個別の法的助言を行うものではありません。管理委託契約の変更や管理規約の解釈等、具体的な判断に際しては、必ず弁護士やマンション管理士等の専門家にご相談ください。また、法令や各種制度は改正される可能性があるため、常に最新の情報をご確認ください。

参考資料

  • 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000058.html
  • e-Gov法令検索「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000149
  • e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069
  • 国土交通省「マンション標準管理規約」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
  • 国土交通省「マンション標準管理委託契約書」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000053.html

島 洋祐

保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。

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この記事を書いた人

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