※本コラムの内容は、当社が独自に調査・収集した情報に基づいて作成しています。無断での転載・引用・複製はご遠慮ください。内容のご利用をご希望の場合は、必ず事前にご連絡をお願いいたします。
東京都内で最適なマンション管理会社を探している管理組合の皆様へ。管理会社の対応品質やコスト、専門性に疑問を感じていませんか?管理会社の選定や変更は、マンションの資産価値を大きく左右する重要な意思決定です。しかし、専門知識がないまま進めてしまうと、かえって状況が悪化するリスクも伴います。
この記事では、宅地建物取引士の資格を持つ不動産ライターが、東京で信頼できるマンション管理会社を選ぶための客観的な基準と、失敗しないための具体的な手順を徹底解説します。管理会社変更の法的な手続きから、賢い見積もりの取り方、公的データベースを使った信頼性の確認方法まで、理事会ですぐに役立つ情報をお届けします。この記事を読めば、あなたのマンションに最適なパートナーを見つけるための道筋が明確になるはずです。
【最重要】「分譲マンション管理」と「賃貸管理」は全くの別物です

あなたが探しているのは「管理組合の運営を支援する」会社
分譲マンションの管理組合が探すべきは、「分譲マンション管理」を専門とする会社です。その主な業務は、管理組合のパートナーとして、法律や会計、建物に関する専門知識を活かし、組合の運営を円滑に進めることです。
(主な業務内容)
|
あくまで主体は管理組合であり、管理会社はその意思決定を支援する黒子役に徹します。
賃貸管理(PM)やビルメンテナンス(BM)との業務範囲の違い
一方で、よく混同されがちな「賃貸管理」と「ビルメンテナンス」は、目的も対象も異なります。
管理形態 | 主な業務内容 | 誰のためのサービスか |
---|---|---|
分譲マンション管理(本記事の対象) | 管理組合の運営支援(会計、総会支援、修繕計画案作成など) | 区分所有者(管理組合) |
賃貸管理(PM) | 賃貸物件の経営代行(入居者募集、家賃回収、クレーム対応など) | 不動産オーナー |
ビルメンテナンス(BM) | 建物の物理的な維持管理(清掃、設備点検、警備など) | 建物所有者(分譲管理会社やPM会社から再委託されることが多い) |
「空室対策に強い」「家賃回収率が高い」といったアピールは賃貸管理会社のものであり、分譲マンション管理会社の評価基準にはなりません。この違いを明確に認識し、分譲マンション管理に特化した会社を探しましょう。
【2025年最新】主要マンション管理会社の管理戸数ランキング(参考情報)

管理会社選定の参考情報として、2025年の管理戸数ランキング上位社を紹介します。ただし、管理戸数の多さが必ずしもサービス品質を保証するものではありません。あくまで業界規模を把握するための参考指標として捉えてください。
順位 | 会社名 | 管理戸数 |
---|---|---|
1 | 日本ハウズイング | 508,812戸 |
2 | 東急コミュニティー | 473,527戸 |
3 | 大京アステージ | 424,628戸 |
4 | 長谷工コミュニティ | 412,768戸 |
5 | 三菱地所コミュニティ | 332,892戸 |
6 | 大和ライフネクスト | 285,173戸 |
7 | 合人社計画研究所 | 257,917戸 |
8 | 三井不動産レジデンシャルサービス | 218,010戸 |
9 | 野村不動産パートナーズ | 182,306戸 |
10 | あなぶきハウジングサービス | 173,036戸 |
注目トレンド:
業界全体として、単なる価格競争から品質重視への転換が進んでいます。例えば、東急コミュニティーは「適正な管理委託費維持」のための見直しを進め、前年比で管理戸数が減少しましたが、これは質の低い契約を見直した結果とも考えられます。一方で、長谷工コミュニティや合人社計画研究所など、管理戸数を大きく伸ばしている会社も存在します。
東京都での満足度評価:
オリコン顧客満足度®調査2025年版では、大和ライフネクストが東京都で総合1位を獲得しています。ただし、この評価はあくまで既存顧客の満足度であり、新規で選定する際の絶対的な基準ではない点に留意が必要です。
東京のマンション管理会社を選ぶ4つの重要基準

基準1:フロント担当者の専門性と対応品質
管理組合との窓口になる「フロント担当者」の質は、管理の質そのものと言っても過言ではありません。以下の点をチェックしましょう。
- 専門資格の有無:国家資格である「管理業務主任者」を保有しているか。
- 担当物件数:一人あたりの担当物件数が過度に多くないか。担当数が多すぎると、個別の組合への対応が手薄になるリスクがあります。
- 経験と知識:類似規模・形態のマンション担当経験や、建築・設備に関する知識が豊富か。
契約前に担当者と面談し、コミュニケーション能力や問題解決への姿勢を確認することが重要です。
基準2:会計業務の透明性(月次報告書の質)
管理組合から預かる管理費や修繕積立金の会計報告は、管理会社の最も重要な業務の一つです。会計の透明性を確認するために、契約前に必ず「月次報告書」のサンプルを取り寄せましょう。
- 収支の明瞭さ:収入と支出の項目が細かく記載され、分かりやすいか。
- 未収金の状況:管理費等の滞納状況とその督促状況がきちんと報告されているか。
- 証憑の添付:大きな支出については、請求書や領収書のコピーが添付されているか。
単に数字が並んでいるだけでなく、理事会がマンションの財政状況を正確に把握できる質の高い報告書を作成できる会社を選びましょう。
基準3:長期的な視点に立った大規模修繕の提案力
マンションの資産価値を維持するためには、計画的な大規模修繕が不可欠です。優れた管理会社は、単に計画書を作成するだけでなく、長期的な視点に立った提案を行います。
- 現状分析の精度:建物の劣化状況を正確に診断し、優先順位をつけた修繕計画を提案できるか。
- コスト意識:複数の施工会社から見積もりを取得し、コストと品質のバランスが取れた提案ができるか。
- 将来予測:将来の物価上昇や技術革新なども考慮に入れた、柔軟な資金計画を提示できるか。
過去に手掛けた大規模修繕の事例や、長期修繕計画の見直し提案書などを見せてもらうと、その会社の実力が分かります。
基準4:法改正にも対応する管理規約の作成・見直しサポート力
マンションのルールブックである「管理規約」は、法改正や社会状況の変化に合わせて定期的に見直す必要があります。特に、近年議論されている区分所有法の改正など、専門的な知識が求められる場面が増えています。
管理会社には、国土交通省が示す「マンション標準管理規約」との比較や、改正案のたたき台作成といったサポートが期待されます。ただし、管理会社が行えるのはあくまで事実行為の支援です。個別の法律相談や法的な判断は弁護士法に抵触する可能性があるため、最終的には弁護士やマンション管理士といった専門家との連携が必要になる点を理解しておきましょう。
【完全ガイド】管理会社変更(リプレイス)の6ステップと注意点

現在の管理会社に不満があり、変更(リプレイス)を検討する場合、正しい手順を踏むことが重要です。ここでは、法的な根拠に基づいた具体的な6つのステップを解説します。
Step1:理事会での問題点共有と変更方針の合意形成
まずは理事会で、現在の管理会社の問題点を具体的にリストアップし、共有します。「フロントの対応が遅い」「管理委託費が高い気がする」といった漠然とした不満ではなく、いつ、何があったのかを記録として整理しましょう。その上で、管理会社を変更する方針について理事会としての合意を形成します。
Step2:新管理会社の候補選定と情報収集
次に、新しい管理会社の候補を2~3社に絞り込みます。インターネットでの情報収集や、近隣マンションでの評判などを参考にリストアップします。この段階で、会社の規模や実績、得意分野などを比較検討します。
Step3:見積もり依頼とプレゼンテーション(ヒアリング)の実施
候補の会社に、現在の管理委託契約書や建物の仕様書などの資料を提示し、見積もりを依頼します。同時に、理事会向けにプレゼンテーション(ヒアリング)の機会を設けてもらい、担当者の人柄や提案内容を直接確認します。
Step4:理事会での内定会社決定と総会議案の作成
各社の見積もりと提案内容を比較検討し、理事会として1社に内定します。その後、総会に提出するための議案を作成します。議案には、「現管理会社との契約解除」と「新管理会社との契約締結」の両方を含める必要があります。
Step5:総会での決議(原則「普通決議」)
管理会社の変更は、総会での決議が必要です。標準管理規約では、区分所有者及び議決権の各過半数による「普通決議」で可決されるのが原則です。
【法的根拠】
区分所有法第39条第1項およびマンション標準管理規約(単棟型)第47条第1項によれば、管理会社の変更は総会の決議事項とされています。そして、同規約第47条第2項により、その決議は「出席組合員の議決権の過半数」で行うと定められています(普通決議)。
【最重要注意点】
上記の決議要件はあくまで標準管理規約に基づく原則です。マンションによっては、管理規約で「特別決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上)」など、より厳しい要件を定めている場合があります。必ずご自身のマンションの管理規約で決議要件を確認してください。
Step6:現管理会社への解約通知と業務の引き継ぎ
総会で承認されたら、現管理会社に契約の解約を通知します。国土交通省の「マンション標準管理委託契約書」では3ヶ月前までの書面通知が原則とされていますが、実際の契約書の規定が最優先されます。必ずご自身の契約書で解約予告期間を確認してください。
その後、会計データや各種書類、鍵などの引き継ぎを新旧管理会社間で進めてもらいます。
賢い見積もり依頼と交渉術|管理会社側の視点も理解する

管理委託費は管理組合にとって大きな支出です。適正な価格で質の高いサービスを受けるためには、賢い見積もりの取り方と交渉術が欠かせません。
なぜ見積もり依頼は2〜3社に絞るべきなのか?
「多くの会社から見積もりを取った方が安くなるのでは?」と考えるかもしれませんが、それは得策ではありません。特に20戸~40戸程度の中小規模マンションの場合、過度な相見積もり(5社も6社も依頼する)は、かえって敬遠される傾向にあります。
なぜなら、管理会社が見積もりを作成するには、現地調査、清掃・設備点検業者など外注先との調整、会計状況の精査など、多大な時間と労力がかかるからです。本気で管理組合と向き合ってくれる会社とじっくり比較検討するためにも、候補は2~3社に厳選するのが現実的です。
絶対に確認すべき!「一式」表記を避けた見積書の内訳項目
提示された見積書を比較する際は、総額だけでなく、その内訳を精査することが極めて重要です。「管理委託費一式」のような大雑把な表記の見積書は論外です。国土交通省の「マンション標準管理委託契約書」を参考に、少なくとも以下の項目に分かれているかを確認しましょう。
費目 | 主な内容 |
---|---|
事務管理業務費 | 管理組合の会計、総会・理事会支援などにかかる費用 |
管理員業務費 | 受付、点検、報告連絡などの管理員人件費 |
清掃業務費 | 日常清掃、定期清掃にかかる費用 |
設備管理業務費 | エレベーター、消防設備、給排水設備などの保守点検費用 |
各項目でどのような業務がどこまで含まれるのか、仕様を細かく確認することで、会社ごとのサービスの違いが明確になります。
管理組合が事前に準備しておくべき資料一覧
スムーズに見積もりを取得するために、管理組合側で以下の資料を事前に準備しておくと良いでしょう。
- 管理規約、使用細則
- 現在の管理委託契約書
- 総会の議案書・議事録(直近3期分程度)
- 理事会の議事録(直近1年分程度)
- 長期修繕計画書
- 建物・設備の竣工図書、点検報告書
これらの資料が揃っていると、管理会社はより正確な見積もりを算出できます。
信頼できる管理会社の情報を公的データベースで確認する方法

候補となる管理会社の信頼性を客観的に確認するために、国土交通省が提供する公的なデータベースを活用しましょう。
国土交通省の検索システムで「行政処分歴」を確認する手順
マンション管理業者は、法律に基づき国土交通省への登録が義務付けられています。以下のシステムを使えば、登録状況や過去に行政処分を受けたことがないかを確認できます。
- システムにアクセス:国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」(https://etsuran.mlit.go.jp/TAKKEN/)にアクセスします。
- 業者を選択:トップページで「マンション管理業者」を選択します。
- 情報を入力:候補の管理会社の「商号・名称」や「登録番号」を入力して検索します。
- 結果を確認:検索結果から「登録簿」や「行政処分情報」を確認できます。
特に「行政処分情報」に記録がある場合は、過去に業務停止命令などの重い処分を受けたことを意味します。選定にあたっては、その理由を慎重に確認する必要があります。
注意:「マンション管理適正評価制度」は“会社”のランキングではない
時々、「マンション管理適正評価制度で星が多いから良い会社だ」という誤解が見られます。しかし、これは大きな間違いです。
この制度は、あくまでマンション(管理組合)の管理状態を評価するものであり、管理会社自体を評価したり、ランキングしたりする制度ではありません。良い評価を得ているマンションを管理している会社が良い会社である可能性はありますが、直接の評価ではないことを理解しておきましょう。
東京のマンション管理会社に関するよくある質問(FAQ)
Q. 大手と独立系の管理会社、どちらが良いですか?
A. 一概にどちらが良いとは言えません。それぞれにメリット・デメリットがあります。
- 大手(デベロッパー系など):ブランド力による安心感、豊富な実績、充実した研修体制が魅力です。一方で、画一的なサービスになりがちで、費用が割高な傾向があります。
- 独立系:独自のノウハウを持ち、小回りが利く柔軟な対応が期待できます。費用も比較的安価なことが多いですが、会社の規模や担当者の質にばらつきがある可能性があります。
自分たちのマンションが何を重視するのか(安心感か、柔軟性か)を基準に選びましょう。
Q. 管理委託費が安すぎる会社に注意点はありますか?
A. はい、注意が必要です。極端に安い管理委託費には、理由があると考えられます。
例えば、「管理員の勤務時間が短い」「清掃の回数が少ない」「フロント担当者の担当件数が多くて対応が遅い」など、サービスの質が低い可能性があります。また、必要な点検業務を省いていたり、後から追加費用を請求されたりするケースもあります。安さだけで選ばず、サービス内容と費用のバランスをしっかり見極めることが重要です。
Q. 契約前にフロント担当者と面談できますか?
A. できますし、むしろ必ず面談すべきです。
実際に自分たちのマンションを担当することになるフロント担当者と事前に会い、人柄や経験、相性を確認することは非常に重要です。プレゼンテーションの場に同席してもらうよう、管理会社に依頼しましょう。誠実な会社であれば、この要望に応じてくれるはずです。
まとめ
東京で最適なマンション管理会社を選ぶことは、管理組合にとって非常に重要なミッションです。最後に、この記事の要点をまとめます。
- 前提知識:探すべきは「分譲マンション管理」会社。「賃貸管理」との違いを理解する。
- 選定基準:「フロント担当者の質」「会計の透明性」「大規模修繕の提案力」「管理規約サポート力」の4つの軸で評価する。
- 変更手順:管理会社の変更は、理事会の合意形成から総会決議、引き継ぎまで、法に基づいたステップを踏むことが不可欠。特に総会決議の要件は、必ず自身の管理規約で確認する。
- 見積もり:依頼は2~3社に絞り、管理会社側の労力も理解する。「一式」ではなく内訳を精査し、サービス内容とコストのバランスを見極める。
- 客観的評価:国交省のデータベースで行政処分歴を確認するなど、公的情報を活用して信頼性をチェックする。
管理会社の選定は、単なる業者選びではありません。マンションの資産価値を守り、快適なコミュニティを育んでいくための大切なパートナー選びです。この記事が、あなたの管理組合にとって最良の選択をするための一助となれば幸いです。
免責事項
本記事は、マンション管理に関する一般的な情報提供を目的としており、2025年10月17日時点の情報に基づいています。特定の物件や状況に対する法的な助言を行うものではありません。管理会社の選定・変更、契約の締結等に関する最終的な意思決定は、ご自身の責任において行ってください。実際の法的手続きや契約内容については、必ず最新の法令やご自身のマンションの管理規約、契約書をご確認の上、必要に応じて弁護士やマンション管理士等の専門家にご相談ください。
参考資料
- 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(2023年改正) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html (2025年10月17日閲覧)
- 国土交通省「マンション標準管理委託契約書」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000053.html (2025年10月17日閲覧)
- 国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」 https://etsuran.mlit.go.jp/TAKKEN/ (2025年10月17日閲覧)
- e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069 (2025年10月17日閲覧)
島 洋祐
保有資格:(宅地建物取引士)不動産業界歴22年、2014年より不動産会社を経営。2023年渋谷区分譲マンション理事長。売買・管理・工事の一通りの流れを経験し、自社でも1棟マンション、アパートをリノベーションし売却、保有・運用を行う。