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マンションの自主管理方式では、管理会社には委託をせず、住民自身が管理組合を運営する形を取ります。しかし、組合員が運営に無関心だったり役割分担があいまいだと、建物や資産価値が劣化してしまうリスクがあります。そこで、自主管理組合が安定して機能するための基本的なポイントを整理してみましょう。

組合員に管理運営への関心を持ってもらう
自主管理では、組合員一人ひとりが当事者意識を持つことが不可欠です。ただ住んでいるだけでは管理組合に関わる責任を果たせず、長期的には建物の価値にも影響します。したがって、理事や運営側は以下のような働きかけを行うとよいでしょう。
- 理事会活動や今後の総会議題となるような課題等を掲示板や回覧で事前通知
- 運営の透明性を高めるため、議事録や決算報告を分かりやすく共有
- 新築・改修案、維持管理上の課題など、組合員が関心を持てるテーマを取り上げる
こうした情報発信を通じて、組合員全体の関心を引き、運営参加を促す土壌をつくることが大切です。
役員の職務を明確化する
理事会の役員メンバーには、以下のような典型的な役割があります。
| 役職 | 主な役割 |
|---|---|
| 理事長 | 組合運営の総括と方向性の決定 |
| 副理事長 | 理事長の補佐、代理対応 |
| 会計 | 管理費の収支管理、帳簿作成 |
| 書記 | 議事録作成、理事会・総会の文書管理 |
ただ漠然と「役員をやっている」状態ではなく、それぞれが何をやるかを明示しておくことで、業務の抜け漏れを防ぎ、活動の効果も上がります。

問題を“役員だけ”で抱え込まない
組合運営を行っていると、どうしても問題は発生します。
例えば大きな修繕(一般的に大規模修繕と呼ばれます)をする際にその価格の妥当性、業者が信用出来るかといった課題が生じますが、役員のみの活動時間では解決しきれないことが多くあります。
そういった際は大規模修繕委員会を設置し、組合員の中に専門家(大規模修繕関係であれば建設会社勤務の方など)がいれば課題解決の速度が上昇します。
必要に応じて「部分的な委託」を検討する
自主管理を全面的に維持することが理想ですが、実際には時間・専門知識・人的資源に限界があります。そんなときは、すべてを委託するのではなく、一部だけを管理会社に依頼する方式(部分委託) も選択肢の一つです。
たとえば以下のような業務を委託対象にできます:
- 会計業務(収支管理・決算書作成)
- 資料作成・議事録まとめ
- 総会運営支援
この方式の利点は、全面委託よりもコストを抑えつつ、組合が負担する業務を軽くできる点です。管理費を上げずに管理会社を入れることが可能なケースもあります。
信頼できる相談先を確保する
自主管理組合であっても、運営方針や法令対応、修繕計画など、専門的な判断が求められる場面があります。こうした際に備えて、信頼できる相談先を確保しておくことが大切です。
トラブルや法的な問題が生じた場合には、自治体の住宅相談窓口や区分所有法に詳しい専門機関を活用するのも有効です。
一方で、役員の業務負担を減らしたい、会計や総会運営など実務的な支援がほしいといった場合には、管理組合向けコンサルティング実績を持つ会社や、マンション管理士・建築士を擁する専門会社に相談するとよいでしょう。
状況に応じて複数の相談先を使い分けることで、運営の安定化と負担軽減の両立が図れます。
まとめ
自主管理組合が持続可能に機能するには、以下が鍵となります。
- 組合員が主体的に関心を持つ仕組みづくり
- 役員の役割と責任を明確にする
- 問題を分担して対応できる体制を整える
- 必要に応じて一部委託を活用する
- 専門的な相談先とのつながりをつくる
これらを意識して運営を進めれば、組合の健全性・透明性が高まり、マンションの資産価値維持にもつながります。


